ぼーっと川を見ていると小さな船が通り過ぎて行く
うちの近所には「大川」という川が流れていて、私はその川べりでぼーっとしている時間がたまらなく好きだ。特に今年の4月、5月頃、不要不急の外出を控えるべしという時期には、スーパーへの買い出しのついでに川まで足を延ばし、水面を見つめながらひと息ついてから帰るのが日課になっていた。
いつ行ってもほとんど人のいないスポットがあって、そこにいると束の間でも日々の息苦しさから解放される。人間たちの世界がどうなろうといつも通り流れている川、なんだか見ているだけで落ち着くんだよな。
そうやって川を眺めていると、時おり小さな船が目の前を通り過ぎていく。画像では分かりにくいが、船の側面に「かもめ」と書いてあるのが見えた。
立ち尽くす私の目の前を船が通り過ぎていった
その名前になんとなく憶えがあり、よく思い返してみると、私がたまに手伝いをしている大阪のミニコミ専門書店「シカク」の代表・たけしげみゆきさんから過去にその名を聞いていたのだった。「かもめっていう面白い船があるんですよ!」という感じで。
すぐに検索してみると「御舟かもめ」がその船の正式名称で、緊急事態宣言とその後の休業要請を受けて5月末まで運航を休止していたのが、様子を見つつ6月から船を出し始めていることがわかった。
また、過去にデイリーポータルZの「高さ12mの巨大アーチを船でくぐる!」という記事で、大山顕さんがこの「御舟かもめ」に乗船している模様を書いていた。2010年の記事で、「ドボククルーズ」という面白いツアーを企画している最高の船として触れられており、大山さんは「この船欲しい!」と繰り返し書くほどこの船が気に入った様子である。
運航は再開されたようだし、しかも過去にデイリーポータルZの記事に登場している。お願いすれば取材を受けてもらえるかもしれない。そんな風に考え、連絡を取ってみたところ、「デイリーポータルZはよく読んでいます!」とのことでスムーズに話が進んだ。ありがたい。
朝ごはんを食べに船に乗ってきます
取材当日は、長くしつこい梅雨の合間で、早朝から降っていた雨がなんとかギリギリのところで止んでいるような状況だったのだが、徐々に天気が回復するという予報を受け、予定通り乗船させてもらうことにした。
約束の時間の少し前に乗船場所の「八軒家浜船着場」へ到着すると、まさにこれから乗ろうとする船が船着き場に向かって進んでくるところであった。
いつも川から見ていたあの船がやってきた!
「御舟かもめ」は、中野弘巳さん、吉崎かおりさんのご夫婦で運営しているクルーズ船で、2009年から営業を開始している。
定員は10人で、オープンデッキが5畳、建屋部分が3畳という小さな船である。冒頭に書いた通り、熊本県天草地方で真珠の養殖船として活躍していた船が売りに出されたのを二人で買い受け、作り直したものなのだそうだ。
パンフレットに掲載されている船の見取り図
「御舟かもめ」の利用方法は大きく分けて二つ。一つは船を貸し切ってクルーズする方法で、もう一つは決まった曜日・時間に運航される「乗り合いクルーズ」を利用する方法である。
貸し切りで利用する場合は、乗船時間によって50分20,000円、80分26,000円、という風に利用料金が異なる。定員の上限が10人とのことなので、例えば「50分20,000円を10人で割り勘すれば一人2,000円」という風に、参加人数によってはかなり割安な価格で乗ることができる。運航ルートについて細かくリクエストすることもできるし、もちろんお任せにしてもいい。どの船着き場から乗船してどこで降りるかも(利用できる船着き場であれば)指定可能とのこと。
もう一方の、乗り合いのクルーズを利用する際は、決まった日時に指定の船着き場から乗船することになる。「中之島」というエリアをゆったりめぐる昼のコース、道頓堀の夜景を水上から眺める夜のコースなどが用意されている。
今回の取材では、朝の乗り合いクルーズを利用させてもらった。「農園から直送された朝ごはんつき」というコースで、船の上で優雅に朝ごはんを食べられるというものである。本来は土日のみ運航されているのだが、平日の空いた時間に取材させていただいた。
小旗について歩けば船はすぐそこ
前置きが長くなった。時刻は10時20分。乗船前に簡単な説明を受けて救命胴衣を装着し、いよいよ朝のクルーズが始まる!
なんとも可愛らしいサイズの船である
船長がほれ込んだという農園の朝ごはん
通常時の「御舟かもめ」は船員が一名乗船し、運転とガイドを一人で務めるのだが、今回は吉崎かおりさんが運転役を、ガイド役を中野弘巳さんが担当してくださった。中野さんには周辺のガイドだけでなく、船のことやご本人のことなど色々と聞かせてもらった。
船の運転を担当してくれる吉崎かおりさん
おしゃべり担当の中野弘巳さん
――(船が動き出して)わー!水面が近いですね。落っこちそうなほどです
中野さん「安心してください。11年やっていて落水者は一人もいません!あ、向こうから来るのがお砂糖を運ぶ船ですよ」
前が引き船で、後ろの船にブランシュガーを積んでいるという
中野さん「この上流にお砂糖工場があって、そこに砂糖を下ろして帰ってくるところですね。種子島の方などから運ばれてきた砂糖を天保山であの船に積み替えて運んでいるんです。横を通る時に甘い匂いがすることもありますよ」
と、こんな風に中野さんが常に周囲のあれこれについて解説してくれる。私はといえば、こんな風に、早くもくつろぎムード。
クッションに身を預けてダラーッ
中野さんが「こちらが朝ごはんです」と、トレイを運んできてくれた。
かもめシールの貼られたお茶も添えられた朝ごはんセット
こちらの朝ごはんセット、大阪の枚方市にある「杉・五兵衛」という農園兼レストランから取り寄せられたもの。もともと中野さんご夫婦がこの「杉・五兵衛」のファンで、よく通っていたそうなのだが、交渉の末、中野さんの熱意が通じて特製の朝ごはんをセットを用意してもらえるようになったのだとか。
こんな風に話を聞いているうちにも船はどんどん進んでいく
中野さん「うちの朝ごはん用に用意してもらっているもので、だいたい2週間おきに中身が変わるんです。今日はスモモととうもろこしと、農園の鶏の卵を使った燻製玉子、米油であげたお芋のチップスと、パンのようなのは米粉のおやきで、中にタケノコが入っています。おやきの中身は季節ごとに違って、ゴーヤだったり、きんぴらごぼうだったり。このスモモひとつとっても品種が色々あって、時期ごとに味わいが違うんです」
――季節ごとの美味しいものが食べられるわけですね。おやき、美味しいですね。中にギッシリタケノコがつまってる。トウモロコシも美味しいなぁ。シャキシャキだ。
中野さん「茹でただけでこんなに美味しいんですよね。あ、あそこはボート免許の教習所です。僕も妻もここで免許をとったんです」
この日も水上バイクの教習を受けている人がいた
休業中でもメンテナンスのために船を動かしていた
中野さん「桜ノ宮橋が近づいてきましたよ。1930年に完成した橋です。“銀橋”とも呼ばれます。だいぶおじいちゃんの橋なので、くぐる時にしずくが垂れるんで気をつけてくださいね」
前方に見えている銀色の橋が「桜ノ宮橋」だ
――あ、私はいつもあの辺りに立ってぼーっと川を眺めていて、それでたまに「かもめ」の船が通っていくのを見ていたんですよ!
私はこの辺りに立っての船を見ていた
中野さん「そうなんですか!ご近所なんですね」
――そうなんです。かもめの船が誰も乗せずに走っていくのがよく見えていたんですが、あれは……
中野さん「船のメンテナンスのためにも時々は動かさないといけないんですよ。そのままにしておくと、藻が張りついたりするんで。営業自体は4月の緊急事態宣言が出てから5月末までお休みしていました。桜がきれいな時期でもったいなかったんですけどね」
ちなみにこの辺りはJR環状線の桜ノ宮駅に近く、その名の通り、川沿いに桜並木が長く続く、桜の名所なのである。
――やっぱり桜の季節はいつもなら予約がいっぱいなんですか?
中野さん「そうですね。桜の季節からゴールデンウイークまでだけで一年の半分ぐらいのお客さんが来るぐらいです。そこが今年はお休みになってしまったんで……。また今年の桜はいつもよりも長持ちしたんですよねー!だから余計悔しかったです」
――6月から営業を再開されたとのことですけど、再開後の様子はどうですか?
中野さん「でもまだ、例年の半分ぐらいですかね。常連さんが支えて下さっているので助かっています。うちではギフト用の乗船チケットを販売しているんですけど、それをたくさん買ってくれたりとか。色々やってるんですけどなかなか……。まあちょっと色々と考え方を変えてやっていかないとしょうがないなと思っています」
環状線の電車が走っていく様子を川の上から眺める
中野さん「たとえばこの乗り合いの朝ごはんクルーズも、以前は定員8名でやってたんですけど、それを6月以降は定員6名に減らして、余裕を持って乗ってもらえるようにしました。乗船時間も今までは50分だったのを80分に延長して、船もゆっくり走らせるようにしました。詰め込んだコースであちこちめぐるより、もっとのんびりしてもらいたいなと。従来ですと私がもっとしゃべり続けていたんですけど(笑)」
――こうやって川の上でのんびりご飯を食べている時間が、今はすごく気持ち良く感じる気がします
中野さん「朝ご飯クルーズはこれまで平日もやっていたんですけど、今は土日だけにしていて、でも貸し切りで利用していただければ追加で朝ごはんをつけることもできます。どちらかというと今は乗り合いより、貸し切りでご利用いただく方がお客様も安心かなと思っています」
――貸し切りクルーズの定員も変わりましたか?
中野さん「貸し切りについては、健康管理などもお互いにできるかと思いますので、変わらず10名までにしています。ただ、6名様ぐらいが一番ゆったりしておすすめですよとお伝えしてはいるんですけど」
右手に淀川の川砂を集めて処理している施設が見えてきた
中野さん「淀川の川砂は質がいいそうで、建築資材に使われているんです。ここまで船で砂を集めてきて、ここで綺麗に整えてダンプに積んで運んでいきます」
ご夫婦が「御舟かもめ」を始めたきっかけについて聞く
――中野さんが「御舟かもめ」を始めたのはどういったきっかけだったんですか?やっぱり川がお好きで?
中野さん「もともと、妻が『大大阪クルーズ』という小さなクルーズ船を運転していたんです。もう18年ぐらい前かな。大阪としても『水都大阪』ってさかんに言い出した頃で、彼女がいた会社もNPOの活動に参加していたんです。彼女もその一員として、自分で船を買って川を案内していました。僕は川沿いに住むのが好きで、川沿いの住まいばっかり探して住んでいたんですけど、たまたま僕が住んでいたマンションに彼女が引っ越してきたんですね。船を運転して面白いことやっている人らしいというので知り合って、結婚して」
――ええー!すごい、川つながりの出会いなんですね
中野さん「そうなんです。デートするのも彼女の操縦する船で、とか」
――それで今もこうして二人で同じ船でお仕事されていると。すごいですね。ドラマみたい。
中野さん「ドラマ化お願いします(笑)でも本当に全部川つながりなんです」
――中野さんはもともと船関係のお仕事をしていたんですか?
中野さん「いえ、テレビ局で番組制作をしていました。ベースは大阪なんですけど、転勤で和歌山にいた頃もあったりして」
桜ノ宮あたりまで出た船は天満橋方向へ引き返しつつ、いくつもの橋をくぐって行く
――そこから船長さんへと転身したということですか。
中野さん「そうです。大学で町作りとか都市計画の勉強をしていて、大阪を面白くする活動みたいなものにはもともと興味があったんですけど、仕事としては思い切った転身でしたね。彼女と結婚して子どもができたんですが、船を動かしたり管理するのはとても大変なことなので、やめようかってことになったんですね。でも僕はそれがもったいないと思って。それまでは副業という感じだったんですが、いっそのこともうちょっと大きな船で、本業として二人でやっていこうと」
――やめようかという話が出たところから、むしろ本業になっていったと。この船は真珠の養殖の船だったとのことだったんですが、売りに出されていたんですか?
中野さん「そうです。売りに出ていたのを買いました。今考えるとそんなに安くもなかったんですけど」
――そういう市場があるものなんですね
中野さん「船って結構長持ちするんです。FRPという素材のものだと半永久的に使えるという話もあるぐらいで、なので中古市場もあるんですけど、難しいんですよ。タダみたいな値段だけど古いものもあれば、やけに高いものもあって、詳しくわかってないとヤケドするみたいなところがありますね」
――素人には難しい市場なんですかね
中野さん「最初は僕らもどうやって探せばいいかわからなくて、琵琶湖を一周して漁師さんに聞いてまわったりしたんですけど。『船、ありませんか?』みたいに言ってもちょっと怪しまれてしまって(笑)うまくいかなくて」
――でもこの船はすごくいいですね。いい大きさで。
中野さん「川の上でのんびり昼寝できるような船がよくて。向かい合って足を投げ出せる船を探したんですよ。この船なら8人まで横になれますから」
水上での寝転びは格別である
――そうやって船を手に入れて、大阪のこの辺りをクルーズしようというのは最初から決めていたんですか?
中野さん「そうですね。やっぱり大阪の川は、色々な視点から見て楽しいですし、時間帯によって見える風景にバリエーションもありますし。彼女が動かす船に初めて乗せてもらって大阪の川に出た時にすごく衝撃を受けたんです。水が近くて、気持ちよくて、川からだとこんな風に大阪が見えるんだなって。それで目覚めてしまったのがあったので。では、ここから寝屋川へ入っていきます!」
船はこれまで走っていた大川から寝屋川へと入る
――おお、こっちに入って行くんですね。
中野さん「この辺りは静かで、ここから見る大阪城がいいんですよ。個人的にもお気に入りのスポットです」
大阪城の石垣が見えてくる
向こうには大阪城の天守閣だ
ここら辺で少し雨が強まってきたが、事前に購入してきた缶ビールを水上で飲ませてもらうことに。ちなみに「御舟かもめ」は酒類も含め原則的に持ち込み可能である。
小雨がミストに感じる酒の旨さ
二人が出会った川沿いのマンションへ
中野さん「ちなみに僕らが出会ったのが向こうのマンションなんです」
今日初めて聞いたのに「あれがそうか!」みたいに思うから面白い
――おお!ドラマの舞台の(笑)あそこなんですね!感慨深い
中野さん「もう少し近くまで行ってみましょうか。僕らは結婚式も川沿いでやったんですけど、その時も参加してくれるみんなを船で会場まで案内して、途中ここにきて『二人の出会いの場です』って見せたりしました(笑)」
吉崎さん「私が4階に住んでいて、彼が3階で」
中野さん「そう。その時から上下関係が決まっていたんですよ(笑)怖い話です」
――物件選びがその後に人生につながっていくんですね。
自分なりのツアーをカスタマイズする楽しみ
中野さん「少し雨が強くなってきたので橋の下で雨宿りしましょうか。あ、アオサギがいますね」
大川と寝屋川が合流する場所なので魚が捕りやすい場所みたいだ
――こうして静かに雨宿りするのもまたいいですね。
中野さん「天気のいい日は橋の下で止まったりはしないので、これもこういう時ならではですね。橋マニアの方には橋の裏側の眺めが喜ばれます」
橋の下での雨宿り酒もまた旨い
――京阪の電車も見えますね。さっきも環状線が見えたし、電車マニアも喜ぶかもしれない
橋の向こうに京阪電車が現れる
中野さん「たしかに、川から電車を見るツアーもいいですね。もともと、『ドボク・サミット』という本に影響を受けて『ドボククルーズ』というツアーを始めて、そこから大山顕さんに取材に来てもらったりしたぐらいなので、色々なマニアの方の視点で川を楽しんでもらえたらとは常々思っています」
――「ここをめぐって欲しい」とか、「川からこの建物を見てみたい」とか、そういうリクエストは柔軟に聞いていただけるんですか?
中野さん「はい!うちの船で行けるところであれば行きます。こんなコースでめぐって欲しいというご要望についてはどんどんお気軽に相談していただきたいですね。もちろん、ただのんびりお食事を楽しみたいとか、そういうこともできます。日本酒やワインを持ち込んで飲み比べをするお客さんとかも多いですよ」
――めちゃくちゃ楽しそう!そっちの方向もいいなあ。
中野さん「お酒に合うおつまみを用意したり、お弁当を作って持ち寄ったり、この船にはコンセントもありますので、簡単な調理器具ぐらいでしたら使っていただけます。以前、炊飯器を持ってきて炊き込みご飯を炊いた人もいたんですよ!出航する時にスイッチを入れておいて、締めに食べるっていう(笑)」
――ははは。アイデア次第で楽しそうですね。水上飲み会、今度メンバーを募ってやってみたいです。
川から見上げる「大大阪」時代の面影
中野さん「これから天神橋の下を通過します。86年前に作られた橋ですね。橋の名前の表示もかっこいいんです。100年前から80年前ぐらいの大阪は『大大阪』って呼ばれていて、東京よりも人が多くて景気もよくて、その頃に作られたものは抜群にかっこいいですね」
天満橋、難波橋と並んで「浪華三大橋」と称される天神橋
――靄がかった大阪の景色もいいですね。さっきいた桜ノ宮のあたりからすると劇的に風景が変わりますね。
中野さん「かなり景色が違いますよね。このあたりの橋も、橋の上を渡っていると見られない部分のデザインまで凝っていて、そこが見どころかなと思ってます」
作業船の向こうに見えるのは中之島公会堂
川に浮かぶ牡蠣小屋。50年前はこの辺りにたくさんあったとか
中野さん「正面が淀屋橋です。かなりギリギリなんですが、今は潮が引いているのでくぐります!」
85年前に作られた淀屋橋の下へ、いざ滑り込む
手を伸ばせば触れられる距離に橋の裏側がある
中野さん「時間帯によっては無理な時もあるんですが、船長の気まぐれメニューということで!橋の裏をよく見ると、棒で押したりしてなんとかくぐったような跡が残ってるんです。くぐれなければ潮が引くまで7、8時間は戻れなくなってしまうから、みんな必死なんですよ」
淀屋橋を抜けると……
高層ビル群を見上げる景色だ
中野さん「この辺りの景色も好きなんです。古いものと新しいものがごっちゃになっていて。では、もう一度、淀屋橋を通って引き返しますねー!」
――この辺りを走る他のクルーズ船ともやり取りがあったりするんですか?
中野さん「ありますよ!桟橋をシェアしたりするんで仲良しです。さっきみたいに潮位が下がってないと越えられない橋がたくさんあったりするので、船の行き来って割と決まった時間に集中するんですね。混み合うこともあります。川というのは、のんびりしているようで、運航する側にとっては絶えず状況判断が必要で、そういう意味でも普段からコミュニケーションを取り合っています」
――他のクルーズ船もコロナ禍でご苦労されていますか?
中野さん「どこも大変だと思います。うちの場合はお客さん全体のうち、地元の方が8割近くて、国内の他の地域から来る方が2割ほど。海外から来る方は1割にも満たないぐらいだったんですね。でも他の船では海外の方の割合が多かったところもありますし、かなり影響を受けていると思います。こればっかりはもう、流れにある程度身を任せるしかないですね。様子を見ながらやっていくしかないかなと思います。では、そろそろ着岸しますね!」
出航した場所に戻ってきた
雨がまた少し強さを増す中、元の場所に戻ったところで80分間の朝ごはんクルーズが終わりを迎えた。なんだかもっとずっと長い時間が流れたような気がする。
今日は少し天気に恵まれなかったが、船長の中野さんは緑の多いこの季節が一番好きなのだとか。川沿いの風景は季節ごろに変わっていくため、「御舟かもめ」の常連さんたちは、お花見だといっては船に乗り、お月見だといえばまた乗って、と一年の様々な季節に乗りに来るんだそう。
ぜひ私も次回は事前にコースを考えた上で、オリジナルな貸し切りクルーズの旅に出てみたいと思う。
優雅な朝のひとときをありがとうございました!
川の上から見る大阪は、町の中を歩いて感じるのとは違った雰囲気をまとって目の前に現れる。雑踏の中から見る大阪も好きだけど、少し離れて水上から見てみると、町の成り立ちや構造がすんなりと理解できる気がする。
いつもと違って見える大阪を眺めながら、「御舟かもめ」を切り盛りするご夫婦の出会いに迫ったり、今後に向けた展望を聞かせてもらうことができた。自分の心の中にも風が通るような、いい時間だった。
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近所の川沿いで「御舟かもめ」の船を見かけたら、これからは大きく手を振ってみようと思う。
「御舟かもめ」
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