沖縄を求めて大阪市大正区へ
そばを一杯食べるためだけに沖縄まで飛んでいけるような豪快な人生に憧れるが、あいにくまだそこに至っていない。代わりに目指したのが、大阪の大正区。
木津川の河口部、運河と運河に囲まれた島状地形で、川を渡らねば到達できない、大阪市の中でも一風変わった行政区、それが大正区だ。
戦前から湾岸の工業地帯として栄えていたため、働き口を求めて沖縄出身の移住者が多く集まった。そうしてできた沖縄出身者コミュニティを頼って、戦後になると、出稼ぎ労働や集団就職の移住者がさらに大正区に集中。現在も住人の4分の1ほどが沖縄にルーツを持つ人たちであるという。
この4分の1という数字は古くから使いまわされている公称値で、実は正確なことは誰にもわからない、という話もあるのだが、ともかく関西有数の沖縄文化の影響を色濃く受けた地域であることは間違いないのだ。
渡し船に乗る
木津川には渡し舟がいくつも運行されていて、大正区と対岸の西成区をつないでいる。電車で行くより遠回りになるのだが、せっかくなので船に乗る。無理矢理にも旅情が高まろうというものだ。
船も桟橋も、水色に塗られているのが印象的だった。実際の水はどちらかというと緑色寄りで、陸と水を隔てる防潮堤のコンクリートは灰色だ。船着き場の周りだけが鮮やかで、人の集まる場所という感じがする。
桟橋のそばにクラゲみたいなものが浮いていた(上の写真のちょうど真ん中にある白いもの)。川といっても大阪湾に注ぐ河口のすぐそばだから、ほとんど海みたいなもんである。クラゲがいてもおかしくあるまい。しかし、とは言いつつビニールのゴミが浮いているだけにも見える。どっちだろう?
さっきより近くで見ても、結局正体ははっきりとせず。
わかるぞ、これは何年もたってから不意に「あれはどっちだったんだろう?」って思い出すやつだ。記憶のしこりが生まれる瞬間を、今まさに体験している。
短いけれど船旅は船旅だ。川風が川の匂いを運んでくる。水が近いと、それだけで楽しい気分になる......!
ただ川を渡るというだけのことを、豊かな体験にしてくれた渡し舟に感謝だ。人が少なくて不安になるが、通学の時間帯などはそこそこ賑わっているらしい。あと5回くらい往復したい気持ちをなんとか抑えて、先へ進もう。
当然だが、沖縄とは違うのだ。初めて大阪の冬を体験した沖縄人は、どう感じただろう?ありふれた注意書きも沖縄旅行のフィルターを通すと見え方が変わってくる。

