2026新春・置き去り 2026年1月7日

トラウマを払拭したいが時間がない~2026 冬の置き去り その7 九十九里


タイムリミットを気にかけたまま行く九十九里浜

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井上マサキ

12時00分。べつやくさんと九十九里浜に置き去りにされる。
12時45分。昼食を食べ終わる。

14時00分にバスが迎えに来るまで、あと1時間15分。

時間がない。

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タイムリミットは14:00

千葉県のどこかに置き去りにされる。そう聞いて東京駅からバスに揺られること4時間。

何人もの仲間たちと別れ、結局僕らはクジで選ばれることなく、最終地点までたどり着いた。千葉県の太平洋側であり、チーバくんの頸椎のあたり。九十九里である。

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最終目的地は道の駅ならぬ「海の駅 九十九里」でした

12時に到着し、迎えのバスは14時。もうソワソワする。

というのも、僕、タイムリミットを設定されると焦ってしまうタイプなのだ。

そもそもこの日、東京駅の集合場所に一番乗りしたのも自分だった。

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ソワソワして集合時間10分前に着いたら誰もいなかった。これでも「20分前だとさすがに引かれるから……」と乗る電車を遅らせている。

待合せには早く着いてしまうし、納期は前倒して入稿してしまうし、空港には国内線でも2時間前に着いている。そんな感じなので、旅行の計画を立てるのはド下手である。焦りすぎて、謎の30分待ちとか発生する。

で、九十九里浜だ。これからお昼ご飯を食べるだろう。せっかくだから海にも行きたいだろう。お土産も買うだろう。10分前にはバスの待ち合わせ場所に着いておきたいだろう。2時間で間に合うのだろうか……?

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ペアを組むべつやくさんは真逆のタイプ。「余裕余裕」
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顔ハメを撮る心のゆとりも(橋田さん撮影)

頼もしい。頼もしいが、空港でよく足止めされがちなどのエピソードを聞くと震えてしまう。ここが海外じゃなくてよかった。

さすがに自分たちでチャーターしたバスなので、飛行機みたいに置いていかれることはない。しかし僕たちが遅れると、置き去りにされた全員を回収するスケジュールが狂う。なるべく時間は守りたい。

「海の駅 九十九里」は一階がお土産屋、二階が食堂になっている。さっそく二階に続く階段を登ろうとすると、横に「いわし資料館」という空間があった。

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「いわし資料館」。入場無料

同じく九十九里浜で降りた林さん橋田さんたちと「見ます?」ということになるが、いや、お昼時だから食堂が混んでるかもしれないし、イワシに夢中になっている間に時間がなくなったらと思い、「ご飯食べてからにしませんか?」と提案する。

そして食後、いわし資料館に行くのかなと思ったら、みんな無数に並ぶお土産を見始めていた。林さんはジャガーさんのステッカーを手にしている。「先にイワシと海を見てからにしませんか」と呼び戻す。

そんなこんなでやっといわし資料館に入館。このとき12時47分。

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「←順路」の表示が小さすぎる。
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いわし資料館でイワシ漁を知る

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資料館には船の模型や漁具が展示されている。

九十九里の沖には黒潮が通り、水温や塩分の濃さ、そしてプランクトンの豊富さから、イワシが住むのに適した環境だという。かつては国内第一のイワシの漁場として栄えたそうだ。

……というのは、先ほど九十九里町のホームページで知った情報である。なんで今ごろ見ているのか。当時は集中できていないから覚えていないのである。

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一方、べつやくさんの写真にはイワシの食文化までしっかり抑えられていた。さすが。

資料館の中央には、イワシ漁の解説コーナーがあった。

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ボタンを押すと4分間の解説が始まるらしい。4分……まぁいいでしょう。
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上部のモニタで解説が始まる。
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二隻の捕獲船のあいだに網をわたし、挟み込むようにイワシを追い込むのだそうだ。

イワシ漁では捕獲船のほかに運搬船がおり、捕獲されたイワシは運搬船に乗せ替えられて港へ運ばれていく。

その後イワシはトラックに積まれて出荷される……という場面で、べつやくさんは「ドナドナだね」とつぶやいていた。イワシを乗せて、荷馬車は揺れる。

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説明が終わったらスクリーンセーバーに戻った。
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海へと

いわし資料館を後にして外に出る。12時57分。じゃぁ海に行きましょう。

すぐそこに漁港があるけど、せっかく行くなら写真映えする砂浜がいいだろう。Googleマップを見ると、歩いて10分強のところに「片貝海水浴場」という場所がある。

往復約25分、滞在時間10分、戻ってきてお土産屋で10分。計45分。多少オーバーしてもこれなら間に合いそうだ。

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と思っていた矢先に、林さんが屋台でピーナッツシュークリームを買う。

冬の日曜日の昼下がり、海岸沿いの道は広く、ひっそりとしている。すれ違う人はいないし、通った車は2台くらいほどだった。

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海は左側。道は真っ直ぐ。霧雨が体を湿らせる。

海風に運ばれて、なんだか独特の臭気がする。魚の加工場からする臭いだ。

僕の地元は宮城県石巻市で、街中でこの臭いがすると「このあと雨が降る」と言われていた。海風が吹くと、港にある加工場の臭いが街中まで漂うのだ。実際この天気予報はよく当たり、臭いがしたときは自転車を飛ばして家に帰ったりした。

そういえばこの海岸沿いの光景も、なんだか地元に似ている。高い建物がなく開けていて。道幅が広いのはトラックが行き来するから。誰も通らないのは、今日が日曜日で港も市場も休みだから。

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それにしても寒い!
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しばらく歩くと、左側に緑が増えてきた。風で飛んでくる砂を防ぐ防砂林か。ということは砂浜が近い。

「デイリーの取材ってこういうところ延々と歩くよね」と林さんとべつやくさんが笑いあっている。「走馬灯で流れてもどこの道だかわからない」と。

走馬灯ってもっと名場面を流すのではないか。でもデイリー関係者の走馬灯はきっと路上のシーンが多いだろう。名場面の解釈は人によって違う。普通の路上に見えて県境だったり暗渠だったりするのだ。

なんてことを言っているあいだに、堤防が見えてきた。そばの駐車場に、ウェットスーツを着たサーファーの方々がいる。

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左へカーブを曲がると
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光る海が見えてくる
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寒い九十九里浜

13時09分。初めて見る九十九里浜。「九十九里」というだけあって、海岸線が見渡す限り広がっている。

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砂漠かと思うくらいどこまでも砂浜
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そして日本海かと思うくらい波が立っている。だからサーファーの方々がいたのか。

東京駅を出発してから、ずいぶん遠くまで来てしまった。

なんだかアメリカ横断ウルトラクイズでニューヨークまでたどり着いたような達成感があるが、ただ単にクジで選ばれなかっただけである。

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海をバックに写真を撮りましょう、ということでさらに波打ち際へ。

林さんが「望遠で撮るから」と、遠くでiPhone17 PROを構える。我々は「寒いっすね!」「寒いよね!」とワイワイ言いながら、「その辺で」と言われた位置で立つ。

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都会で頑張る息子に送るビデオレターみたいだ。「たかし~!元気でやってるか~!」
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正面から冷たい風が吹きつける
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風にあおられるべつやくさん
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「3年前に東京から移住して小さなカフェを始めました」

風は冷たいし霧雨は顔に当たるしで寒い寒い。でも我々の表情が安定しないのか、アングルに納得できないのか、林さんはなかなか撮り終わらない。

べつやくさんが震えながら「こういう写真は時間かけるんだよね。さっきの顔ハメとかは適当に撮るのに」とボヤいていた。

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林さんが1枚だけサッと撮っていた顔ハメの写真。2人とも目をつぶっている。
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海から海の駅に戻る

13時20分。海を後にして、さっきと違う道を通って海の駅まで戻ることにする。

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海岸線と並行する幹線道路を通るルートへ。海の近くには、民宿やいわし料理のお店がある路地が。
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その路地から海を振り返ったところ。

「海に続く道っていいよね」と、べつやくさんが言う。道が途中でスパッと切れていて、その向こうに海がある。わかる。そこにある見えない海を感じるのと、海が見えるまで近づくワクワクがあるのと。

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幹線道路沿いを海の駅まで戻る。ここはサイクリングロードでもあるらしい。
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歩道のポールが緑、かつデカい。

冬の九十九里は静かだった。コンビニやチェーン店の類いは見当たらず、地図を見ると民宿やサーフショップが周囲にたくさんある。夏はもっと賑やかなのかもしれないな。

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遠くにグランピング施設もありました。
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イワシ漁をモチーフにした街灯がかわいい。
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「なに所(しょ)だろう?」と全員が首をかしげた看板。今調べたら、台貫所(だいかんしょ)といって、トラックなどの車両の重量を量る場所らしい。

見えるものにワチャワチャつっこんでいると、目的地まであっという間である。楽しい。楽しいので往路よりも時間をかけて帰った。

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13時40分。再び海の駅まで戻ってきた。

海の駅まで戻ると、1階のお土産屋が大混雑していた。駐車場に観光バスが駐まっている。どうやらバスツアーの「お土産買うポイント」になっているらしい。

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レジにたくさんの人が並んでいる!大変だ。
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お土産屋の鮮魚コーナーにはイワシやハマグリがそのまま売られており……
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なぜかバイクのパーツも充実している。

よく見渡すと、ピーナッツと魚介類とバイクパーツの店じゃないかここは。どういうことなんだ。

こうして、なにを買ったものかとアワアワしているうちに時間が来てしまい……。

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13時59分。バスに戻る。
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定刻通りにみんなを回収に向かいます!

気にしすぎ

結局この日、買ったお土産は3つ。「うちにまだあれがあったから……」とか考えていたら時間がなくなり、乾いたものばっかりになった。

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銚子電鉄のぬれ煎餅、ドライ塩キャラメルピーナッツ、そしてピーナツ小次郎

帰りのバスの中、べつやくさんが買ったお土産を見せてもらったら、ビニール袋から6、7個ざくざくとお土産が出てくる。「よくわかんないけど美味しそうだから」と買ったものもある。好きなものを好きなだけ買う。これが大人の余裕か。

こうして振り返るとやっぱりいろいろ気にしすぎだ。楽しめているのか旅を。もっと段取りや後先を考えない旅をしよう。空港で足止めされない範囲で。

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砂浜に電柱二本と電線(?)だけがあったけど、これなんだろう。
おまけ)べつやくが自由に買った土産

べつやくが自由に買った土産です。左上から、九十九里産はまぐりのクラムチャウダー、九十九里の焼いわし、いわしのスナック、千葉県産はねだし味付ピーナッツ、ぶっかけ浜めし、ドライこがし醤油ピーナッツ。 

あと、いわしごま漬も買いました。
大人の余裕というよりただの食いしん坊なんだと思います。 

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