タイムリミットを気にかけたまま行く九十九里浜

12時00分。べつやくさんと九十九里浜に置き去りにされる。
12時45分。昼食を食べ終わる。
14時00分にバスが迎えに来るまで、あと1時間15分。
時間がない。
タイムリミットは14:00
千葉県のどこかに置き去りにされる。そう聞いて東京駅からバスに揺られること4時間。
何人もの仲間たちと別れ、結局僕らはクジで選ばれることなく、最終地点までたどり着いた。千葉県の太平洋側であり、チーバくんの頸椎のあたり。九十九里である。
12時に到着し、迎えのバスは14時。もうソワソワする。
というのも、僕、タイムリミットを設定されると焦ってしまうタイプなのだ。
そもそもこの日、東京駅の集合場所に一番乗りしたのも自分だった。
待合せには早く着いてしまうし、納期は前倒して入稿してしまうし、空港には国内線でも2時間前に着いている。そんな感じなので、旅行の計画を立てるのはド下手である。焦りすぎて、謎の30分待ちとか発生する。
で、九十九里浜だ。これからお昼ご飯を食べるだろう。せっかくだから海にも行きたいだろう。お土産も買うだろう。10分前にはバスの待ち合わせ場所に着いておきたいだろう。2時間で間に合うのだろうか……?
頼もしい。頼もしいが、空港でよく足止めされがちなどのエピソードを聞くと震えてしまう。ここが海外じゃなくてよかった。
さすがに自分たちでチャーターしたバスなので、飛行機みたいに置いていかれることはない。しかし僕たちが遅れると、置き去りにされた全員を回収するスケジュールが狂う。なるべく時間は守りたい。
「海の駅 九十九里」は一階がお土産屋、二階が食堂になっている。さっそく二階に続く階段を登ろうとすると、横に「いわし資料館」という空間があった。
同じく九十九里浜で降りた林さん橋田さんたちと「見ます?」ということになるが、いや、お昼時だから食堂が混んでるかもしれないし、イワシに夢中になっている間に時間がなくなったらと思い、「ご飯食べてからにしませんか?」と提案する。
そして食後、いわし資料館に行くのかなと思ったら、みんな無数に並ぶお土産を見始めていた。林さんはジャガーさんのステッカーを手にしている。「先にイワシと海を見てからにしませんか」と呼び戻す。
そんなこんなでやっといわし資料館に入館。このとき12時47分。
いわし資料館でイワシ漁を知る
九十九里の沖には黒潮が通り、水温や塩分の濃さ、そしてプランクトンの豊富さから、イワシが住むのに適した環境だという。かつては国内第一のイワシの漁場として栄えたそうだ。
……というのは、先ほど九十九里町のホームページで知った情報である。なんで今ごろ見ているのか。当時は集中できていないから覚えていないのである。
資料館の中央には、イワシ漁の解説コーナーがあった。
イワシ漁では捕獲船のほかに運搬船がおり、捕獲されたイワシは運搬船に乗せ替えられて港へ運ばれていく。
その後イワシはトラックに積まれて出荷される……という場面で、べつやくさんは「ドナドナだね」とつぶやいていた。イワシを乗せて、荷馬車は揺れる。
海へと
いわし資料館を後にして外に出る。12時57分。じゃぁ海に行きましょう。
すぐそこに漁港があるけど、せっかく行くなら写真映えする砂浜がいいだろう。Googleマップを見ると、歩いて10分強のところに「片貝海水浴場」という場所がある。
往復約25分、滞在時間10分、戻ってきてお土産屋で10分。計45分。多少オーバーしてもこれなら間に合いそうだ。
冬の日曜日の昼下がり、海岸沿いの道は広く、ひっそりとしている。すれ違う人はいないし、通った車は2台くらいほどだった。
海風に運ばれて、なんだか独特の臭気がする。魚の加工場からする臭いだ。
僕の地元は宮城県石巻市で、街中でこの臭いがすると「このあと雨が降る」と言われていた。海風が吹くと、港にある加工場の臭いが街中まで漂うのだ。実際この天気予報はよく当たり、臭いがしたときは自転車を飛ばして家に帰ったりした。
そういえばこの海岸沿いの光景も、なんだか地元に似ている。高い建物がなく開けていて。道幅が広いのはトラックが行き来するから。誰も通らないのは、今日が日曜日で港も市場も休みだから。
「デイリーの取材ってこういうところ延々と歩くよね」と林さんとべつやくさんが笑いあっている。「走馬灯で流れてもどこの道だかわからない」と。
走馬灯ってもっと名場面を流すのではないか。でもデイリー関係者の走馬灯はきっと路上のシーンが多いだろう。名場面の解釈は人によって違う。普通の路上に見えて県境だったり暗渠だったりするのだ。
なんてことを言っているあいだに、堤防が見えてきた。そばの駐車場に、ウェットスーツを着たサーファーの方々がいる。
寒い九十九里浜
13時09分。初めて見る九十九里浜。「九十九里」というだけあって、海岸線が見渡す限り広がっている。
東京駅を出発してから、ずいぶん遠くまで来てしまった。
なんだかアメリカ横断ウルトラクイズでニューヨークまでたどり着いたような達成感があるが、ただ単にクジで選ばれなかっただけである。
林さんが「望遠で撮るから」と、遠くでiPhone17 PROを構える。我々は「寒いっすね!」「寒いよね!」とワイワイ言いながら、「その辺で」と言われた位置で立つ。
風は冷たいし霧雨は顔に当たるしで寒い寒い。でも我々の表情が安定しないのか、アングルに納得できないのか、林さんはなかなか撮り終わらない。
べつやくさんが震えながら「こういう写真は時間かけるんだよね。さっきの顔ハメとかは適当に撮るのに」とボヤいていた。
海から海の駅に戻る
13時20分。海を後にして、さっきと違う道を通って海の駅まで戻ることにする。
「海に続く道っていいよね」と、べつやくさんが言う。道が途中でスパッと切れていて、その向こうに海がある。わかる。そこにある見えない海を感じるのと、海が見えるまで近づくワクワクがあるのと。
冬の九十九里は静かだった。コンビニやチェーン店の類いは見当たらず、地図を見ると民宿やサーフショップが周囲にたくさんある。夏はもっと賑やかなのかもしれないな。
見えるものにワチャワチャつっこんでいると、目的地まであっという間である。楽しい。楽しいので往路よりも時間をかけて帰った。
海の駅まで戻ると、1階のお土産屋が大混雑していた。駐車場に観光バスが駐まっている。どうやらバスツアーの「お土産買うポイント」になっているらしい。
よく見渡すと、ピーナッツと魚介類とバイクパーツの店じゃないかここは。どういうことなんだ。
こうして、なにを買ったものかとアワアワしているうちに時間が来てしまい……。
気にしすぎ
結局この日、買ったお土産は3つ。「うちにまだあれがあったから……」とか考えていたら時間がなくなり、乾いたものばっかりになった。
帰りのバスの中、べつやくさんが買ったお土産を見せてもらったら、ビニール袋から6、7個ざくざくとお土産が出てくる。「よくわかんないけど美味しそうだから」と買ったものもある。好きなものを好きなだけ買う。これが大人の余裕か。
こうして振り返るとやっぱりいろいろ気にしすぎだ。楽しめているのか旅を。もっと段取りや後先を考えない旅をしよう。空港で足止めされない範囲で。

べつやくが自由に買った土産です。左上から、九十九里産はまぐりのクラムチャウダー、九十九里の焼いわし、いわしのスナック、千葉県産はねだし味付ピーナッツ、ぶっかけ浜めし、ドライこがし醤油ピーナッツ。

あと、いわしごま漬も買いました。
大人の余裕というよりただの食いしん坊なんだと思います。
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