お茶の季節、到来
夏場は水で薄めたジュースばかり飲んでいた。
最近は気温が下がり温かい飲み物もおいしくなってきて、各種お茶をメインで飲んでいる。
とくに最近のお気に入りは烏龍茶だ。
で、あるとき、思った。この葉っぱ、もしかして食べられるのではないだろうか。
こういうちょっとした思い付きも、あとで記事になるかもしれないので、いちいち写真をとっておくのがデイリーポータルZ魂である。
なんかぐにゃぐにゃした歯ごたえで、思った以上に味がしない。噛み続けて味のなくなったガムみたいである。
やっぱ茶葉は食べ物じゃなかったんだ、そう思ってこの日は終わった。
静岡では食べるという噂
後日、別件で緑茶について調べていたら、ネットに衝撃的な記述を見つけた。
静岡の人は淹れ終わった茶葉を佃煮にして食べるというのだ。
アハハ、そうやって地方の特色に尾びれつけた嘘の噂ってよくあるよね!
十中八九は嘘だろうと思いつつ、念のため……と思って静岡出身・在住のライター、鈴木さくらさんにきいてみた。
まじか。その時の記事を探すと…
まさかだった。
さらによくよく調べてみると、ほんとにほんとに静岡の人は茶葉を食べるようで(この期に及んでまだ半信半疑だった)、ネットの各所にレシピがアップされていた。
これは食べてみたい。
緑茶だけがお茶ではない
静岡の人が食べているのはもちろん緑茶であるが、勢いあまって4種類も用意してしまった。
緑茶、烏龍茶、紅茶、ルイボスティーだ。
佃煮は一度お茶を入れた出がらしの茶葉で作るらしい。
茶葉が細かく刻まれている緑茶は、色も含めて、この中では一番食べ物っぽい。
刻まずに丸のまま乾燥している烏龍茶。食べ物というより「植物」という感じがする。
緑茶同様に細かく刻まれているが、色味的に、食べ物というより香辛料みたいだ。
あらためて少しずつ食べてみると、どれも強く不味いわけではないが、味がうすぼんやりしていて主張がない。かといって食感がいいわけでもないので、好んで食べるようなものではないと感じる。
ご存じの方も多いと思うが、この3つのお茶は同じ植物である。チャノキの葉を発酵させないのが緑茶、半発酵させるのが烏龍茶、完全に発酵させたのが紅茶だ。
いっぽう、次のお茶はそもそもの材料が違う。
まず粒が細かい。口に入れて噛んでみると、なんていうか、濡れた木くずを噛んでいるような感じである。こちらも味の主張はないが、茶葉以上に食感が悪すぎるのではっきり「不味い」と言っていいと思う。
いずれも単体ではあまり冴えない食品だった。本当に料理したら化けるだろうか?
佃煮づくりでキッチンが小江戸に
ネットで調べたところ、佃煮のレシピはざっくりこんな感じ。
レシピによってはここに出汁やごま油も投入。今回は粉末だしを少し入れてみた。
先日、お茶屋さんの前を通ったら店頭でほうじ茶を炒っており、あたり一面いい香りに包まれていた。
佃煮を作りはじめるとまずはあれと同じ香りがキッチンを満たし、次に醤油の焼けるいい匂いが鍋から漂う。
部屋が小江戸になった。
わ、さっきまでお茶の残りかすだったものが、急に食べ物の見た目になった。
同じように残りのお茶も調理した。
出がらしが、全部しっかり「お料理」って感じのビジュアルになった。
佃煮のパワーはすごい。割いたティッシュでも佃煮にしたらおいしそうになりそうだ。
実食・悦楽の苦味
実食である。まず緑茶の佃煮から。
早速食べてみる。
生の時はもうすでに失われたように感じていたお茶の苦みが、佃煮になることによってぐっと立ち上がってきた。どういう原理なんだ。
ぐにゃぐにゃだった歯ごたえもジャキジャキとしたものに変わって、噛み心地が良い。
これは絶対ご飯に合う。
けっこうしっかり濃いめの味付けをしたが、お茶の主張がそれに全く負けていない。しっかりした苦みがあって、大人の味って感じだ。お茶漬けにもよさそう。
次は烏龍茶。
うわー、一気に中華風になった。花椒が効いてる。ご飯に合うというよりも酒のつまみだこれは。ビールか紹興酒。
茶葉が大きいのは食感がイマイチかと思ったけど、むしろ歯ごたえがあってよい。そしてやっぱり苦みが効いている。中華料理屋のお通しにぴったりという感じがするが、逆にひととおり飲み終わったとにちびちびつまむのもよさそう。
ちなみに「ウーシャンフェンをかけてみた」ってさも自分がアレンジしたかのように書いたが、実はネットに載っていたレシピである。テヘヘ。
では紅茶はどうだろうか。
緑茶より硬いので、口に入れた瞬間はちりめんじゃこの佃煮っぽい。でも噛んでいると佃煮の味が落ちて紅茶がめきめき頭角を現してきて、だんだん洋風になり、紅茶ケーキが頭をよぎる。
佃煮味、洋風の後味、途中に通過するその中間のカオス。いずれも決して悪い味ではないが、こんな目まぐるしく味の変わるものをどういうシーンで食べていいのか全く分からない。うま味に続く新たな味覚の発見、「戸惑い味」である。
そして最後に、問題のルイボスティー。木くずは果たして食べ物になれただろうか。
口に入れた瞬間は意外にいい。粒状で表面積が多いため、佃煮の味付けがよく染みている。しかし素材が硬いので、噛んでも噛んでも脳から「飲み込んでOK」のサインが出ない!こういうものなんですよーって言われたら信じて食べるかもしれないが、それでもあくまで「騙されて食べてる」という感じである。
総評としては、緑茶と烏龍茶は超アリ。リピします。紅茶はおもしろ体験枠なので興味があったら一回やってみてもいい。ルイボスは…やんなくていいかな…。
佃煮意外もいけるはず
鈴木さくらさんによると、緑茶は佃煮以外にも天ぷらにしたり、ご飯と一緒に炊いて菜飯っぽくして食べることもあるらしい。
烏龍茶と紅茶にも他の活用法があるだろうか、調べて作ってみた。
えびのウーロン茶葉炒めというのがクックパッドに載っていたので作ってみる。
苦い茶葉と塩味のシンプルな組み合わせは、構成としてはゴーヤチップスと同じだ。不味いわけがない。
クックパッドのページにはラーメンに入れよと書いてあった。
そもそもラーメンに飲み物のウーロン茶が合うわけで、葉っぱのかたちでも間違いない組み合わせだった。豚骨味にさわやかな苦みが追加される。
ラーメンの付け合わせには辛みを追加する辛子高菜という先輩がいるが、後輩が「独自路線で俺は苦みで攻めるっス」といって器用にやっている。
もういっこ、紅茶も料理してみた。紅茶の成分は肉の臭みを消すのに役立つという。
豚肉の紅茶煮。
レシピにはティーバッグでやれと書いてあるが、出がらしを使ってみる。またブロック肉ではなくカレー用の細かい肉でサッと作った。
これ作ってから気づいたけど、茶葉食べないんですね。「茶葉を食べる」という今回のテーマからはそれてしまったが、出がらしのリサイクルつながりということでひとつ……。
うまい。普通に煮豚として超うまい。しかし紅茶の味がするわけではなく、また紅茶不使用と比較もしていないので、臭みが消えているかはよくわからなかった。まあおいしいからいいか。
カフェインに注意
いろいろ試して、お茶には食べ物としてのポテンシャルは十分にあると感じた。しかし盲点があって……。
お茶をたくさん飲んでお茶っぱをたくさん食べたら、なんとおなかが痛くなってしまった。僕はカフェインで胃が痛くなる体質なのだ。
さらに考えられる副作用としては、晩御飯にモリモリ食べると眠れなくなったりもするかもしれない。
十分ご注意のうえ、お楽しみいただきたい。
※ルイボスティーは調べた限りでは毒性は確認できませんでしたが、一般的には食べ物ではないのでマネする場合は自己責任でお願いします。そもそも特に美味しいわけではないのでお勧めしませんが…