特集 2026年6月16日

「食べ比べない」を楽しんでみる

同じメニューでも、お店によって味が全然違う。私はラーメンが好きなのだが、一口にラーメンと言っても果てがないほどのバリエーションがあり、色々食べてその違いを知ることが大きな楽しみになっている。

それはもちろんそうなのだが、たまに自分が“食べ比べ過ぎている”と感じる時がある。目の前にあるものをじっくり味わうことなく、他の店と比較して「あっちの方が美味しかった」と思ってしまったりして、その差異にばかり目がいってしまうような。

「食べ比べ」をしないで何かを味わってみたい、そう思って街に出かけた。

大阪在住のフリーライター。酒場めぐりと平日昼間の散歩が趣味。1,000円以内で楽しめることはだいたい大好きです。テクノラップバンド「チミドロ」のリーダーとしても活動しています。(動画インタビュー)

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街が私に比べさせようとする

先日、アジア圏の様々な国の食材が集まるショップに立ち寄った。そういう店でインスタントラーメンを買うのが好きなのである。

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こういう棚、わくわくする

手頃な価格であんまり辛くなさそうなものを(辛いものが年々苦手になってきて……)と、一つ選んだ。

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「金湯肥牛麺」というカップ麺を

それを買って帰って、翌日に食べたらとても美味しかった。親しみやすい味でありながら日本のカップ麺にはない八角のような香りがして、いい。

食べながら「またこれを買おう」と思ったのだが、そう思う一方で、「あんなに色々あったんだから他のもきっと美味しいのでは?」という気持ちもある。美味しいものをまた食べたいという気持ちと、他のも色々比べたいという気持ち。

私はライターをしていることもあり、食べ比べてレビューをしたら面白いのでは!とつい考えてしまいがちなのだが(というかそういう記事をたびたび参考にしてきたのだが)、あえてその食べ比べを禁じてみたらどうなるだろうかと思った。

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そして大阪・天満の街にやってきた。天神橋筋商店街という長い長いアーケードの商店街がある街だ。

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いつ歩いても楽しい商店街だ

歩き出して早速マクドナルドの「ご当地マック」の広告が目に入る。郷土の定番の味を盛り込んだハンバーガーが3種類、期間限定で販売されているようだ。

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テレビのCMも見たことがある

このような場合、たとえば「博多明太バターてりやき」を食べて美味しかったら、残りの2種類も食べてみたくなるはずである。というかマクドナルド側は、それぞれ食べ比べてみてね!と思っていそうである。いや、その前に「まずはどれを食べようかな」と考える時点ですでに脳内での比較が始まっているのである。

回転寿司店の前を通った。

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たまに食べたくなる「元禄寿司」

回転寿司を食べている時も、ものすごく食べ比べている。もちろん、中にはマグロだけずっと食べる人だっているかもしれないが、その人も「この店のマグロの寿司がやっぱり一番だな」と比較した結果、ここを選んだのかもしれない。

家電を売る店の店頭には色々な種類の扇風機が置かれていた。どれかを選ぶ場合、機能性や価格を比較検討することになる。

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扇風機を買って暑い夏に備えておきたい

街を歩いている時、私たちはずっと比べているのかもしれない。店選びもそうだし、その店の中でどの商品を選ぶかというのも比較の結果だし……街とは、私たちに比較を迫る場なのである。

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スマホのプランも比較しないと

「比べない」は可能なのか

どれかとどれかを比較せずに過ごすにはどうしたらいいんだろうか。わからなくなってきた私は、お団子や餅などを売る店の前を通り過ぎ、すぐに引き返し、みたらし団子を買うことにした。できるだけ比較せず、もう、あんまり色々見ないでスピーディーに団子を買う。猛然と。

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できるだけ何も考えずに何か買うことにした

商店街の端のベンチに座り、それを食べてみることにした。ちなみに私は普段、甘いものをあまり食べないこともあり、前にみたらし団子を食べてからきっと数年は経過している。「あの店の団子が好き!」という知見も持っていない。

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こんなにツヤツヤと輝いているものなんだっけ?

まずは一串、食べてみる。めちゃくちゃ美味しい。甘いものかと思っていたが、タレが結構しょっぱくて、それが好きだった。「前に食べた団子はもっと甘かった気がする……」と自動的に比較を始める思考を強制的に打ち切るように、もう一串食べる。やはりうまい。

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同じ美味しさを何度も味わう

私は今、かなり純粋にこの団子を味わえているのではないか。食べ比べず、同じ団子を3串、どんどん食べて、それだけ。この「食べ比べない」という行為には、奥ゆかしい面白みがあるように思った。

団子3串でいきなりお腹が膨れてしまった私だが、食べ比べないことをもう少し楽しんでみたいと思い、「焼き鳥屋」に行ってみることにした。

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ちょうど仕事を終えて時間の合う友人がいたので合流してもらい、二人で食べに行くことにした。友人に主旨を話すと「ふーん。でも焼き鳥ってすごく食べ比べる場だもんね。せせりを食べて次は皮を食べて、とか」と言う。

なるほど!本当にそうだ。焼き鳥屋に入ったら色々食べ比べてみたくなる。それが楽しい場でもある。さっきの回転寿司と近い。食べ比べが楽しい場だからこそ、そこで食べ比べないということを貫く意味があるように思えた。

「口八町」という焼き鳥のチェーン店があったので入ってみる。

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大阪の街でよく見かけるチェーン

なんと、月~木曜は120分980円という飲み放題プランがあるようだ。すごいな。

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60分でも安い気がするのに120分だ

平日の早い時間ということもあり、店内はそれほど混んでいなかった。静かなお店で、私は食べ比べないことを貫いてみようとしている。

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串焼きメニューには当然色々と美味しそうなものがある

飲み放題コースをオーダーし、私は「なんこつ」を注文することにした。友人は「せせり」を注文した。

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のん気に飲んでいるように見えるが今日は強い意思を持っている

しばらくして私のなんこつと友人のせせりが同じ皿に乗って運ばれてきた。この店は串もののワンオーダーが2本ずつになっている。

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右の2本が私のなんこつ

ちなみにお通しの枝豆とキャベツは、食べ比べにあたらないので食べていいことにした。

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ちょうどいいお通しでした

なんこつを一本、食べてみる。コリコリして塩加減も絶妙で、すごく美味しい。もう全然、今日はこればっかりずっと食べるのでいい。そもそも私は焼き鳥のなんこつが好きなのである。

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焼き加減もちょうどいい!美味しいな

友人が「本当にそれでいいの?せせり美味しいよ」と言う。「勧めてくれるその気持ちは本当にありがたいけど今日はなんこつだけでいきたい」と私が言うと「よくわからないけど、大変だね」と呆れられた。

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今日は焼き鳥を食べ比べない私

⏩ なんこつばかりを淡々と

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