磯部さんによる、北海道の離島、厚岸小島(あっけしこじま)の話
磯部さんは出版社の編集者だ。道路、橋、ダム、鉄道、バイクなどに詳しい。
で、それはそれとして今日は北海道の離島である、厚岸小島(あっけしこじま)の話をしてくれるという。
厚岸小島とはこの辺りらしい。釧路と根室の間。
磯部:ちなみに、厚岸小島って聞いたことありますか?
会場1:厚岸は牡蠣で超有名なところですよね。
会場2:北海道の釧路と根室の間の。
磯部:さすが。そうです。小島なので、ちっちゃい島です。何の島かというと、昆布漁の島なんです。
会場:厚岸は牡蠣だけじゃなくて昆布もなんですね。
磯部:牡蠣は養殖ですけど、昆布とかアサリは天然物なんです。

地名として、この上は「床潭」と書いて「とこたん」と読むんですけど、そこが港の集落です。「小島」とあるのが厚岸小島です。
一番近いところで1キロぐらいしかないんですけど、港が床潭にあるので、ここから出入りします。この辺が昆布の漁場なんですよ。
会場:漁場の近くに住んじゃったのか。
磯部:地理院地図で拡大するとこんな感じで、左下のスケールを見てください。
会場:全長500メートルぐらい? 想像より小さい。
磯部:でも家が書いてあるんです。ここに丘があって、その下は完全に平場です。
磯部:で、ここ全部が昆布の干し場です。家があるのは、みんな住んでたからです。10軒ぐらいの家が住んでいて、あとは昆布の乾燥小屋とかですね。
今はここの青いところの1軒だけ、60代のご夫婦が夏だけ住んでいます。本土側にもちろん家を持っていて、冬はきついのでそっちで。
いま昆布漁師は、その1家族以外は対岸の床潭(とこたん)に住み、そこから出漁するのだそうだ。
磯部:今日は、この厚岸小島のお話と、昆布漁のお話をしたいと思います。
昆布漁は6月に解禁になって、そのときに2回だけ「棹前昆布(さおまえこぶ)」と言って間引きをするんですね。間引きを2回して、その後7月から本格的に始まる。自分が行ったのは7月中旬でした。
今年は天候が悪くて、棹前昆布も1回やっただけで、漁としては良くない時期でした。
漁をやっていいよという日は、漁協から朝5時ごろに「今日はやりますよ」というのが出て、朝7時に一斉にスタートです。
会場:一斉になんですね。

磯部:漁場がこの辺(矢印のあたり)なので、とにかくみんな一斉に、モーターボートで行くわけです。
で、なんでこの人が小島に住んでるかというと、朝7時に一斉にスタートだと、床潭から行くより小島から行った方が早いんですよ。
当然、船に昆布をいっぱい積んだら1回戻って下ろして、もう1回行くから、ここに住んでたらすぐ行ける。そういう意味もあって暮らしてたんですね。今も水も電気も来てます。
会場:来てるんだ。
磯部:はい、(島まで)1キロしかないから。
昔は10軒もあったから。で、一斉にスタートするので、船はエンジンを2機積みます。
会場:速いんだ。怖い。
昆布を干している
磯部:全部砂利が敷いてあって、右側の建物が昆布の乾燥小屋と干し場ですね。
去年バイクで行ったんですけど、3日間ぐらいこの辺をうろうろしてました。小島って、定期便なんかもちろんないわけです。だから、なんとか渡らせていただけないかと漁師さんなどとの交渉を去年してたんですけど、なかなか返事がなくて。
ただ、今回誘ってくれた友人が別の機会にたまたまここの漁師の人と話をしたら、「じゃあ来年、漁の前に連れてってやるよ」ということになって、今年行けました。
会場:なるほど。
〔磯部さんに後日もらったコメント〕
渡航手段はない。今回は、あるご縁があって上陸させていただいた
磯部:行けるかどうかは行ってみないと分からないので、4日間か5日間、現地に滞在できるようなスケジュールを組んでいました。
磯部:これが、棹前昆布で試験的に取ったものなんですけど、間引きのとき、6月の昆布はまだ柔らかいんですよ。
昆布の作業小屋の中にも入れてもらいました。親戚の方が働いていて、女性が2人、乾燥した昆布を1本1本はかりにかけて、等級を決めています。カラフルな紐がいっぱいあって、全部意味があります。
事情があって会場で見せてもらった写真を掲載できないのだが、昆布を結ぶための紐の色と組み合わせに意味があって、種類とか加工用とかが分かるようになっているのだという。
磯部:そのための表が貼ってありました。昆布って、流れ着いてきたものを拾い集めるのもあるじゃないですか。そういうのもちゃんと等級があります。
昆布の表に「猫足」と書かれていた。
会場:「猫足」ってなんだ。
磯部:いくら説明を聞いても、海の中に生えてる昆布を見てるわけじゃないから、なかなか分からないんですよね。
会場:調べました。北海道の道東でしか取れない希少な天然昆布で、根元の形が猫の足跡みたいだから猫足なんだそうです。
磯部:小屋の中に入ると、当たり前ですけど昆布のすごくいい匂いがします。乾燥したやつを切って、おしゃぶり昆布みたいにして食べると、塩味がついてるからおいしいです。
で、船はエンジンがみんな2機あるんですけど、たとえば115馬力と90馬力のように、なぜか出力が違うものを積んでいます。
会場:面白い。じゃあ2倍の速さってわけじゃないのか。
磯部:コントロールできるようにしてるわけです。このエンジンは1個大体150万から300万ぐらいなので、船1隻で1000万ぐらいなんですけど、漁師さんは売上も大きいので、わりとすぐに元が取れるそうです。
会場:すごい!
磯部:このところ昆布はちょっと不作みたいなんですけどね。今年も漁に出られる日が少ないから取れない。
会場:あ、そうなんだ。
磯部:ずっと海も荒れてるから、多分品質にも影響してくるんでしょうね。
磯部:これが実際の浜で、こういう風に取ってきたものを干します。
会場:直に置くの?
磯部:そう。奥の海の白く波が立っている部分が、もう漁場なんですね。昆布を干すのは丸1日、8時間ぐらい干して、それでおしまいです。

電柱があって、繋がってるのが乾燥小屋ですね。煙突があるでしょ。
会場:すごい。電柱に電線もちゃんとあるんだ。
磯部:この辺はもう人が住んでなくて、使ってない感じですね。
会場:乾燥機は、天日干しがしにくいときに使われるものですか。
磯部:そうです。天気次第で、天日干しでできればいいんですけど、全部は干し切れないので。
磯部さんによると、かつては小中学校があり、教員住宅もあった。小中学校は公民館的な使われ方をしている、とのこと。
磯部:で、これが、対岸の本土側の展望台から見たものです。左が小島で、右側が大黒島。
会場:大黒島に港はあるんですか。
磯部:いや、ないですね。無人島です。
会場1:海鳥の繁殖地ですもんね。
会場2:こうやって見ると、満潮時にちょっと高波が来たら危ないですよね。
磯部:家はちょっと高いところにちゃんとあります。
もちろん津波が来たらひとたまりもないでしょうけど、普段の満潮・干潮では全然大丈夫です。
会場:確かにちょっと高いところに家がある。
厚岸のアサリ漁
磯部:つぎはアサリ漁の話です。これも同じ場所なので。
磯部:ここに「牡蠣島」って書いてあるんですけど、多分昔は牡蠣がいっぱいついてたんでしょうね。
ここを今、みんなが権利を持って区画にしていて、そこでアサリを取ってます。
区画を買うと、そこに自分たちで土を入れて、例えば水深3メートルぐらいのところに土を2メートルぐらい入れると、アサリがどんどん上がってきて、取りやすいところに上がってくるんです。
会場:そうやって取るものなんだ。
磯部:要するに潮干狩りをプロとしてやってるんです。
会場:面白い。権利がそうやって買えるんだ。
磯部:7月15日までが漁期かな。
アサリ漁のようす
磯部:こういう感じで、3人、5人ぐらいでずっとやってるんですよね。
訪ねたのは禁漁期に入る直前で、使っている道具は大きな鋤簾(じょれん)ではないかとのこと。
磯部:当然ものすごい肉体労働になるので、3時間アサリを掘るとクタクタになってるそうです。
会場:楽じゃないんだな
磯部:で、これがドローンの空撮です。
会場:面白い。昔の埋め立て中の江東区みたいな感じ。
磯部:こういう風に土を入れると、干潮時に出てくる。
会場:なるほど、干潟を作るタイプの感覚なんですね。アサリを取るために干拓して。面白いですね。
磯部:連れていってくださった方に、2時間ぐらい色々話を聞いてたんですけど、めちゃくちゃ面白かったです。漁業の話とか、なかなか聞く機会ないので。という感じで終わりです。
会場:ありがとうございます。素晴らしい。


