特集 2023年2月15日

絶品お弁当&元アダルトコーナーに水墨画〜ローカルコンビニ「ナイトショップいしづち伊丹店」

かつて関西を中心にチェーン展開していた「ナイトショップいしづち」をご存じでしょうか?

当時としてはめずらしく深夜二時まで営業していたお店で、手作りのお弁当、男性にうれしい品揃えで人気だったようです。

しかし、大手コンビニチェーンの台頭で店舗が減り、ついには本部が消滅してしまいます。その後、各店舗は「いしづち」の名前のまま営業をつづけ、それぞれのオリジナリティを発揮していきました。

現在、いしづちは3店舗しかなく絶滅寸前・・・。そのうちの1つ兵庫県の伊丹店は、おいしいお弁当と店長作の迫力ある水墨画が同時に楽しめる空間になっていました。

大阪生まれの大学院生。工作や漢字が好きです。ほら貝も吹けます。先日、教授から「あなたは何を目指しているのか分からん」と言われました。

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> 個人サイト 唐沢ジャンボリー

こんな近くにあったなんて

私は現在20代です。ローカルコンビニはおろか、中規模のコンビニチェーンがどんどん消滅していく幼少時代を過ごしました。そのせいか珍しいコンビニを見つけるだけで心躍り、ふらっと中に入ってしまいます。

ある日、同じゼミの後輩が

「ナイトショップいしづち」というコンビニに原付で行ったと教えてくれました。

 式森くんいわく、かなり特徴的な店内だそう。しかも大学からそんなに遠くはありません。知らなかった・・・。彼が行ったのは「ナイトショップいしづち伊丹店」。私も行かなくては!

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夜まで開いてる男性の味方「ナイトショップいしづち」

訪れる前に、ネットや本『八画文化会館vol.2』などでいしづちのことを調べてみました。

伊丹店の看板。

 「ナイトショップいしづち」は愛媛発のお店で、1980年代から西日本を中心に展開していたそうです。

当時、今のような「コンビニ」はありません。いしづちは夜2:00まで開いていて、食品や雑貨、さらには本・雑誌も買える「ナイトショップ」として人気を博しました。

いしづちの売りは何といっても「手づくりお弁当」。ボリューミーな「バクダンおにぎり」や、その他のお弁当はすべて店内調理。SNSを見ると、今でも懐かしむファンがたくさんいます。

そして、もう一つの売りは「男性向けの商品ラインナップ」です。ライターやタバコのほか、アダルトな本やビデオが非常に充実しており、各店舗にしっかりとした専用コーナーがあったとのこと。

おいしい手づくりお弁当&男性向け商品という斬新すぎる二本柱。

 まだコンビニが普及していないときにこれをやるとは・・・。いしづちはシェアを伸ばし、全盛期は九州から北陸まで各地に店舗があったようです。

しかし、大手コンビニチェーンの台頭でその数は減少、ついには本部が消滅。「本部なくなったら終わりやん」と思いましたが、その後、各店舗は「いしづち」の名前そのままに経営を続けたそうです。それぞれでオリジナリティをばりばりに出した店構えになっていきました。

ローカルコンビニへと変貌したいしづちですが、ここ10年で店舗が激減、ネット情報だと現在は3店舗(愛媛県西条店・徳森店、兵庫県伊丹店)しか残っていないようです。

3店舗・・・!?これは早く行かなくてはなりません。さっそく大学からチャリで向かいます。
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大阪空港のすぐそば ナイトショップいしづち伊丹店

いしづち伊丹店は大阪空港の西側、伊丹スカイパークのほど近くにありました。

曇天をバックに轟音で飛んでくる旅客機

伊丹空港を離陸していく飛行機を眺めながら、自転車で猪名川沿いを飛ばして10分くらい経ち・・・

ナイトショップいしづち伊丹店に到着しました!

 信号のある道筋にあるとはいえ、住宅街の中です。教えてもらわんかったら見つけられへんかったやろな・・・。

看板がなかなかに味わい深い

フクロウのイラストと、端正な毛筆の「いしづち」。コンビニの看板が筆で書いた字というのはときめきます。各店舗で看板のデザインが様々で、ビデオショップみたいな店舗、町の個人商店みたいな店舗もあったようですが、伊丹店はコンビニっぽいカラーリングです。

「手づくり弁当の店」とある。

やはりお弁当は名物のよう。楽しみです。あと、キャラクターの名前は「フクロウ君」なんですね。覚えやすい・・・ポーズもイカしてるな・・・

「まどかチェーン」とは各店舗のいしづちが参加するチェーンのことで、本部は愛媛のほか関西などにもあったとか。

 すでに消滅しているまどかチェーンの貴重なシールです。(店長は「はがしたいけどはがれない」と言っていた。)

店頭に野菜が売られてました。太く立派な大根、袋にパンパンの水菜が150円。
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 充実のお弁当コーナー

お店に入ると、

 

左手にお弁当コーナーが!

 色んな種類があります。ワクワクです。

 

店長の月本紘八朗さん(80)にお話を伺いました。

 月本店長:お弁当・お惣菜は毎朝6時から手作りしていますね。あと、ジャンボおにぎりは1日30個作っています。

他店舗では「バクダンおにぎり」だが、伊丹店では「ジャンボおにぎり」。

このおにぎりはいしづちがチェーンだったときからの名物。握りこぶしよりでかくてパンパンなのだが、お米がフワフワ。朝ごはんならこれ一個でお腹いっぱいです。

刻んだからあげが入ったおにぎり「からあげジャンボ」もこれまた絶品。

 月本店長:先日、和歌山のある方から「昔近所のいしづちで食べていたおにぎりがどうしても食べたい」と問い合わせがありました。

むぎこ:和歌山にもいしづちが多かったんですよね。思い出の味を求めてやってくる方もいらっしゃるなんて・・・!

伊丹店は裏の厨房でつくる手づくり弁当が目玉。お昼を過ぎるとほとんど残っていません。

お米は家で炊く派の人に嬉しい「とんかつセット」。カツが分厚くてボリューミー、これで300円というお得さ。

 

大人気のさば弁当、今日も近所の病院の看護師さんが買占めていったそうです。

さばの塩加減と焼き加減がちょうどよく、買占めしちゃうのも納得。(原付の式森くんもおススメしていました)

 

丼ものもあります。「ソースカツ丼」は、カツの下にタルタルソースがかかったたくさんのキャベツが。ガッツリ系のメニューにしっかりキャベツがあるのは嬉しいですよね。

 

どれもおいしいし、満腹になるし、ああ、近所にあったらどれほど重宝したことか...!

伊丹店は毎日作る「給食弁当」の注文も受けているそう。いしづちの手作り弁当魂はここに生き続けていました。

・・・ですがこの店の真価はここからです! 

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