モチを鍋で煮るとやがては溶けて消え、残るのはとろみだけ、ということに最近気がつきました。
ということは、インスタントの豚骨ラーメンを作るときにモチを加えれば、本場ドロドロ特濃系の仕上がりになるんじゃないだろうか? もちろん、味は変わらないだろうけど、気分だけでも。
ベジポタならぬ「モチポタスープ」。今回はそんな実験をしてみたいと思います。
1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。
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「モチポタとんこつラーメン」
先日、当サイトに書いた記事「こんなときこそ『備蓄庫ディナー』を」のなかに、こんなくだりがありました。
濃厚な見た目
鍋をやっていて、締めにラーメンを投入したところ、具として入れていたモチがドロドロに溶けてしまい、なんだか「天下一品」のこってりラーメンのような見た目になってしまった。
単なるアクシデントだったんですが、これ、逆に利用して、ごく普通のインスタントラーメンを特濃風にできないかしら?
例えば、インスタントのとんこつラーメン
百均で買えて2食入りという、非常にありがたい存在。「マルタイ」のインスタントラーメンを買ってきてみました。
ごく普通のモチも用意
さて作っていきましょう。
まずはモチ半個ぶんを短冊状に切り、鍋に投入します。
話はモチを溶かしてから
何度か実験を繰り返してみた結果、ラーメン1杯ならばモチは半個ぶんくらいがちょうどよく、また、溶かしやすいのは短冊切りという結論に至ったので、すべてその方法でやっていきます。
菜箸などでかき回しながら3~4分もゆでれば、モチはあらかた溶けてしまいます。
このくらいになったら次の工程に移ってOK
あとはその鍋で、いつもどおりにラーメンを作るだけ
難しいことは何もありません。
ちなみに、モチを入れず、ごく普通に作ってみたマルタイのラーメンはこんな感じ。
もともとちゃんと濃厚っぽさはある
そして、モチポタラーメンのほうはこんな仕上がりに。
見た目は思惑どおり
静止画の写真だと伝わりづらいかな? 特濃系を売りにする本場の店で出てきてもおかしくないような、ドロドロスープになりました。
ドロ~
さっそく食べてみると、これがおもしろい! 味はいつものマルタイラーメンなんですが、麺をすすりこむときにまとわりついてくるスープの食感が完全に特濃ラーメン。ズルズル~、じゃなくて、フルッ、フルッと、麺にたっぷりからみつくあの感じ。
これ、想像してた以上に気分が出るし、一食の満足度も高まりますね。調べてみたところ、モチ半個ぶんがだいたい60kcalくらいらしいので、そこまで気にするほどカロリーアップするわけでもないし、今後自分の定番になりそう。
「モチポタシチュー」
ホワイトシチュー、僕はルーからしか作ったことないんですが、モチポタスープの理論を使えば、いちから作れてしまいそうな気がします。
というわけで、完全に想像で、鍋で牛乳を、コンソメ、バター、鶏肉、野菜を加えて煮てみます。
時短のためにレンチンした野菜
とろみゼロ、味はシチューのスープができた
シチューって普通は、バターで小麦粉を炒めてホワイトソースを作ったりするんでしたっけ? ぼんやりとしか知らない。でも大丈夫。今日はここに、モチを投入するだけだから。
モチを溶かしたらしっかりとろみが出ました
モチポタシチューの完成!
いや~びっくり。これまた予想以上にシチューですよ! もちろん若干の違和感はある。口のなかがペタっとするような、お米由来の独自食感はある。けれども、ちゃんと美味しい。
あれ? これってもしかして、小麦粉が食べられない方でも食べられるシチューなのでは? もしかしてこういうレシピ、普通に世の中に存在するのかな? いやまぁ、もちろん調べませんけどね。自分が楽しみたいだけなので。
「モチポタグラタン」
翌日、鍋に残っていたモチポタシチューを温めなおしたところ、さらに粘度が上がっていました。
もはやドロドロ
こりゃ~シチューじゃないね。まるでグラタンの中身だよ。……は! グラタン、作ってみるか!
グラタンなんてものは、もはや一度も作ったことがありません。なので完全に想像で、チーズを加えてみる。
溶けたら味はグラタンになった。
これを耐熱皿に移したところで気がつきました。
そういえばグラタンって、ベースのソースにチーズを溶かすんじゃなくて、上にチーズを乗せて焼きあげるんじゃなかったか?
というわけでさらにチーズを盛る
中身とのダブルチーズ状態になってしまいましたが、チーズが多くて起きたトラブルはかつてないので、いいでしょう。あとはこれをオーブンで焼いてみて、どのくらいグラタンに迫れるか。結果は……。
できちゃった!
電子レンジのグリル機能で様子を見ながら10分ちょっと。結果、これが出てきた瞬間、自分でも笑っちゃいましたよね。こんなにもグラタンとは! って。
これ、「作りかたを知らないやつが想像で作ってみたグラタン」としては、長い長い料理の歴史のなかでも、かなり上位に食いこむ完成度なのでは?
で、肝心のお味ですが……。
スプーンに伝わるサクッとした感覚も完璧
トロ~
これはですね、もはやグラタン以外の何者でもありません!
焼けたチーズの味にインパクトがあるからか、シチューのときに少しだけ残っていた「おモチ感」が、ほぼ気にならない。何も知らない人に出してあげて、「普通のグラタンと違うところはど~こだ?」と聞いたら、わからない人も多いんじゃないかな。
あと単純に、超~美味しい。ふだん雑な料理しか作らないので、「これ……ほんとに私が作ったの?」って感じです。いや~、おもしろいな、モチポタ料理。
「モチポタカレー」
料理のなかで、ドロドロしてると嬉しいものの筆頭といえば、僕の中ではダントツ「カレー」です。
そこで、わざわざドロドロしてないカレーを用意しました
レトルトながら450円もした高級品。
こだわりもすごい
まずは温めます
各種スパイスが織りなす複雑な香りがたまらなく食欲をそそる! 形崩れせずにゴロゴロと入った具材も豪華。ひと口そのまま味見してみると、スパイスはもちろん、マグロ、昆布、オマール海老の3種の出汁の風味が想像以上に豊かで、驚くべき完成度のスープカレーです。
正直、このまま普通に食べたい。せっかくスープカレーとして美味しく食べられるように開発してくれた方々にも申し訳ない。しかしながら、今の僕には、モチポタの可能性を追求する使命があります。すでに「モチポタ」を背負ってキッチンに立っているんです(勝手に)。
モチ、投入!
溶けたモチがチーズカレーみたいで美味しそうな時期を経て
「スープ」の影は跡形もなくなり、ただの「カレー」に
モチポタカレー、完成!
どうですかこのカレーライス感。「聞いてくれ、これ、もともとはスープカレーだったんだよ!」と人に言っても、狂人と思われるだけでしょう。そのくらい、見た目は完璧。
で、味のほうはといいますと、これは今まででいちばん違和感ありますね……。オーソドックスなカレーの、煮込んだ野菜が溶けたドロドロと、モチポタの、どこかネチっとしたドロドロ、見た目は似ていても、かなり異質。ただ、スープカレーにモチを入れただけなので、まずくなるということはありません。食べ進むほどにモチポタ感は気にならなくなり、最後まで美味しくいただけました。
しかしながら、どこか不完全燃焼感は残るので、同じスープカレー、もう一度買って、こんどは普通に食べてみよっと。
「モチポタラーメン 天一風」
そもそものきっかけは、不可抗力で天一風になってしまった鍋の締めラーメンでしたが、では初めから天一風を目指してラーメンを作ってみることはできないか? 最後は原点に立ちかえります。
天一のラーメンスープのとろみは、とんこつではなく、鶏ガラと野菜由来のものだそう。そこで、こんなものをベースにスープを作っていきましょう。
「野菜ブイヨン」と「鶏ガラスープ」
すんません。ファンの方々からしたら「天一なめんな!」って話だとは思うんですが、あくまでお気軽にそれっぽいものを再現できないかの実験なので、ご容赦ください。
鍋のお湯に上のふたつを溶かし、どうも野菜感が足りないなと思って、この記事のときに買って以来ぜんぜん消費しきれていない「オニオンパウダー」もドサっと追加。
キロ単位で買ってしまったパウダー
あとはモチを溶かして、市販の生麺と合わせれば……
とりあえず完成!
いいとろみだ
無論、味は本家に及ぶべくもなく、天一の偉大さを思い知る結果に。そもそもスープの色からしてぜんぜん違うし。
ただ、今までに自作したラーメンとは明らかに違う、とろとろのスープ。これは単純におもしろいし、美味しいですよ。
モチポタラーメン、まだまだ可能性がありそうだ。
以上、あれこれ試してみたモチポタレシピでした。
特に感動したのはグラタンかなぁ。本当のグラタンの作りかたをまだ知らないので比べようがないんですが、牛乳に具を入れて味をつけて煮、モチを入れるだけでベースができてしまうというお手軽さは、自分的にちょっとした発見でした。
あと、いちばん気楽で、かつおもしろく、今後もやってみようと思ったのは、やっぱり最初のとんこつラーメンですね。好きなインスタントラーメンにモチを半個ぶん溶かすだけ。
コロナの影響で、家でラーメンを食べる機会が増えた方もいらっしゃるかもしれませんが、マンネリ打開のバリエーションのひとつとしてのモチポタ、あると思います。