特集 2023年4月11日

新型コロナが生んだ民芸・オリジナルマスクコレクション

3年間のマス活の成果です。

2022年3月13日より、新型コロナウィルス感染対策として推奨されていたマスクの着用は個人判断となった。もちろんまだ油断はできないがコロナの終息ムードというのが感じられてきて、ノーマスクでスマホを見ていた人のスマホリングはきらきらしたハート型だった。

コロナ騒ぎが立ち上がった頃は深刻なマスク不足が続いたが、だったら作ったれとばかりに衣料品店や近所のバザー、そば屋、道の駅など、ドラッグストアではない店でオリジナルの布マスクが売り出されていた。これはまさに新型コロナが生んだニュー民芸ではないかと思った私はちょこちょこ買い集めていたのだ。

 

1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。(動画インタビュー)

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> 個人サイト バレンチノ・エスノグラフィー

マスク緊急事態

まさかマスクが入手困難になるとは。2020年、新型コロナウィルスの襲来は世界にパニックをもたらした。市政の一生活者たる私にとって混乱が直感的に感じられたのは店頭からマスクが消えた事だった。2月にはクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の長期検疫がリアルに危機感を伝えたりして、マスクは店頭に並ぶやいなや完売。ネットでは金額が高騰し、転売行為などをめぐって人心は分断した。

1枚のマスクを2枚にする方法を考えていた。ばかだな。

行きつけの病院にはよくわからないおっさんが現れ「マスク確保できますよ」とマスク商談を持ちかけていた。マスクパニック(マスパ)ここに極まれりである。

3月の終わりには東京都知事から不要不急の外出を自粛する要請が、4月には初の緊急事態宣言が発せられた。

在宅ワークでなにげにテンションが上がったのでランチにポークジンジャーソーメンチャンプルーを作ったりしていたが......。
3日後には皿さえ用意しなくなってて笑った。

マスクは相変わらず入手困難だったが、まるで闇市のようにどこをどう流通してたどり着いたのかよくわからないマスクが居酒屋で売られていたりした。

コーラにマスク、そして3500円!高!
3300円!あ、でも50枚入りか、いや、高いよ!

 さすがに3000円もするマスクは買う気にならなかったが、ある日、ぶらぶら歩いていたらこじんまりとしたバザーで布製の手作りマスクが売られているのを見かけてなんとなく購入した。

葉っぱパターンがかわいい。

マスクといえば衛生感を表す白で不織布やガーゼというイメージしかなかったが、オレンジに無数の葉っぱっぱがデザインされたマスクのざらっとした手ざわりは私の心に何かを残した。

数日後、昼食に立ち寄った蕎麦屋で「手作りマスクあります」という貼り紙を見つけた。女将を「すみません」と呼び止め「マスクをください」と言ってみたところ、注文を先読みして蕎麦湯を手に取っていた彼女は「え、買うんですか」といった表情で店の奥からマスクのつまった箱を持ってきた。「どれでも3枚で300円です」安い!このまえ3500円だったんだよマスク。

スクエアカットの生地にゴムをつけたシンプル仕様。

 

わんこめっちゃかわいくないだろうか。

蕎麦屋でマスクを買い求める日が来るとは思わなかった。このコロナ禍という危機の中で身を守るマスクが一部の資本家どもに独占されて手に入らない(妄想入ってます)。しかしこんなことで我々庶民はへこたれない。

メディカルなルートを頼らず、無名の名工たちがこの新しい世界の日用品として、強固で美しいマスクを生み出している。これはまさにコロナ民芸ではないか。

おにぎりもかわいいぜ。

 不織布のマスク不足が解消されたら、この民芸も消え去ってしまうかもしれない。いまのうちになんらかの形で残され、鑑賞されなければならない。そう思った私は出かけた先で手作りマスクを、ついには手作りでなくともオリジナルで作られたマスクをを見かけては買い求めていた。その愛すべきコロナ民芸マスクコレクションを堪能しよう。

ずらっと並べた。2020年も6月ごろになるとマスク不足は解消されたが翌年もその翌年も入手はできた。
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衣料品店でゲット

布で作るわけなのでやはり親和性が高いのは衣料品店、街のブティックや和装屋では勢いよく布マスクが作られ、店先を彩っていた。

埼玉県の和装店で購入。シンプルな厚手の生地に耳にやさしいふわっとしたマスクひも。
なんだかんだいってこういうのが一番使われる。

奄美大島では世界三大織物にも数えられる伝統工芸品「大島紬(おおしまつむぎ)」がマスクになって売られていた。

しぶい、かっこいい!

 

大島紬の代表的な柄「龍郷柄」。奄美大島の風景を織りなしている蘇鉄の実や葉、それに乗り移ろうとしたハブの紋様などが図案化されている。そういえば私はこの龍郷柄の由来をヒントに蘇鉄の木でハブを探しまくっていたが一匹見つけたことがある。

のぼり旗店も当然布製品は得意とするところ、生地、発色ともにクオリティの高いマスクが作られていた。

ほっこり幼児柄。

 

バックのオレンジグラデーションが鮮やか。

ここでは2023年に購入したのだが、店主によると「前はもっといっぱいあったんだけどマスクがどこでも買えるようになってからはあまり作らなくなっちゃいましたね」との事だった。

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