特集 2026年2月11日

三重出身者も知らない郷土料理「そうへいじる」を食べに三重の祭りに行った

三重県出身なのに、「そうへいじる」という三重の郷土料理を知らなかった。郷土料理って、だいたい実家の味とか給食とか親戚の家でなんとなく見覚えがあるものだと思っていたのに。「知らない三重」が急に目の前に置かれた感じがして、妙に落ち着かない。

最初は「ほんまにそんなんあるん?(三重弁)」と半信半疑だったのが、調べてみたら一応ちゃんと存在しているらしい。でも三重出身の友人に聞いても誰も知らない。ここまで来ると、逆に確かめに行きたくなるのが人の性である。気づけば検索して、聞き込みして、そしてなぜか三重に向かっていた。

埼玉県在住の主婦です。くじ運はないのですが、1%以下の確率で、PTA会長に当たり、勤めたことがあります。運の使いどころが、ちょっと渋いタイプです。

前の記事:三重県出身者が台湾の三重を歩く


「『そうへいじる』って知ってる?」からすべてが始まった

6月のある日、息子が急に聞いてきた。

「お母さん、『そうへいじる』って知ってる?」
「は?そうへいじる??知らない」
「えー、三重の郷土料理って書いてあるけど。お母さん知らないんだね」

この“ちょっと見下した感じ”が小学生の標準装備なのだろうか。

 

私は三重県出身である。なのに“知らない三重”を突きつけられた。

献立表には、日本各地や世界の郷土料理を取り入れる取り組み書かれており、給食好きの子どもはこれを真剣に読んでいる。


まさか、献立表で母のアイデンティティが問われるとは思っていなかった。

image_s001.png
献立表に突如として現れた三重県の郷土料理「そうへいじる」
image_s002.jpg
ちなみにこれは10月の献立表。給食の世界は広い。広すぎる。
いったん広告です

三重出身の友人に聞いてみる

焦って、三重出身愛知県在住の友人M子(20年来の友人)にLINEした。
「ねえねえ、『そうへいじる』って知ってる?」
しかし返ってきた答えは、
「初めて聞いたよ」
……だった。
よかった……!私の無知ということではなさそうだ。
さらに「菰野町(こものちょう)の郷土料理らしいから、近い出身のY子(共通の友人)なら知ってるかも」と情報まで足してくれる。20年来の友人の優しさだ。

Y子とも20年来の友人だが、LINEがなかった時代の友達で、未だに文通で連絡を取っている。
さっそく次のような文章を書いた。
「ひさしぶり、元気ですか?ところで、そうへいじるって知っていますか?」
差し出し人のテンションが迷子である。
ポストに投函したが、返事が来るかは神のみぞ知る。

image_s003.jpg
手紙を出した。LINEでは繋がっていない。交流の手段をあえてアップデートしていないのだ)
いったん広告です

「そうへいじる」は「僧兵汁」だった

調べてみると、「そうへいじる」は「僧兵汁」。
漢字にした途端に急に物騒になった。
三重県に住んでいたが、僧兵について考えたことは一度もない。
三重県のみならず、日本に住んでいて、僧兵について考えたことがある人が何人くらいいるのだろうか・・。

image_s004.jpg
僧兵のイメージ図。人生で初めて描いた僧兵の絵なので、いろいろ、勘弁してほしい。

僧兵ってこんなのだ。たぶん。

武装して戦ったお坊さん。
これではよくわからないのでもう少し調べてみた。

  • 主に平安時代の終わり頃から戦国時代にかけて活躍した。中世の寺は、祈りの場であると同時に、土地や人を抱える大きな勢力でもあった。自分たちを守るために武器を持つようになった。
  • 三重県はが当時、京都と東国を結ぶ交通の要所だった。
  • 現在の三重県菰野町(こものちょう)、鈴鹿山脈の山中に三岳寺(さんがくじ)という寺があった。戦国時代には多くの僧兵を抱える強い寺院だった。
  • これに目をつけたのが、天下統一を進めていた織田信長である。信長にとって、言うことを聞かず、しかも武装している寺は非常にやっかいな存在だった。
  • そこで信長は、三岳寺を攻め、焼き討ちにしたとされている。比叡山焼き討ちと同じく、僧兵勢力を徹底的に排除する流れの中での出来事だ。三岳寺はこの攻撃で衰退し、僧兵の時代も終わりに向かっていった。


さらに、僧兵汁について調べてみると、次のことがわかってきた。

  • 三重県菰野町・三岳寺の僧兵由来
  • みそ仕立てのスタミナ汁
  • 猪や鹿の肉、にんにく、季節の野菜が入る
  • 僧兵の滋養強壮食
  • 今も祭りや旅館、給食で提供されている

なるほど。要するに、にんにく入り味噌汁の豪華版みたいなものか。
うちは味噌汁を高頻度で作る家なので、これは作れるぞ、と軽いノリで挑戦してみた。

いったん広告です

作ってみたらなにかが違った

とりあえずニンニクをスライスしたものを
普通の味噌汁を作るときに、
どん。
と入れて、長めに火を通した。

image_s005.jpg
普通のにんにくを普通の味噌汁に入れてみた。
image_s006.jpg
火は通した

軽い気持ちで作ったが、普段ほとんど食事を残さない息子が味噌汁を残していた。
「いつもと何かが違う」ことだけは伝わったらしい。


今度はちゃんとレシピを調べた。
「八丈島会」「三重県給食」など複数のレシピがインターネット上で公開されていたが、

  • にんにくを入れる
  • 赤みそ+白みそを混ぜる
  • 鶏ガラを入れる

が共通点だった。

image_s007.jpg
「赤みそ」に続いて「白みそ」を入れているところ。

赤みそと白みそを混ぜるだけで、なんとなく“丁寧なくらし”をしている気持ちになる。気のせいなのだが、気持ちが上がる。

image_s008.jpg
二種類の味噌をブレンドしたので、いつもより美味しそうだ。気のせいだけど。

できあがった「そうへいじる(のつもりのもの)」は、私は「うまい!」と思ったのだが、
「今日のこれは何?豚汁なの?」
という、家族からの微妙な感想が返ってきた。
惜しい。

image_s009.jpg
「そうへいじる」のような豚汁。普通に美味しかったと思う。

⏩ そうへいじるを求めて僧兵祭りへ行くことにした

▽デイリーポータルZトップへ つぎへ>

記事が面白かったら、ぜひライターに感想をお送りください

デイリーポータルZ 感想・応援フォーム

katteyokatta_20250314.jpg

> デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」が届きます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ