僧兵、普通にいる
これで、目的は果たした。しかし、せっかくなので、お神輿も見ることにした。
会場には、すでに僧兵の格好の人がたくさんいた。お神輿の担ぎ手だ。
頭に巻く布(裹頭:かとう、というらしい)までかぶった“フル僧兵”は少数で、衣装だけ着た“半僧兵”が多い。
地元の青年たちらしく、家族や友人と談笑していて、リラックスした雰囲気だった。
近くの若い女性たち(高校生くらい)が、
「あんな旦那おったらな〜って思わん?」
「ほんまやな〜」
と三重弁でしゃべっていたのが微笑ましかった。僧兵コスチュームマジックなのか、若くて体の強い男性が担ぎ手になる傾向があるからなのか、わからないが、僧兵、モテている。
こちらはにやにやしている怪しいおばさんになってしまって恐縮だけど。
そんななか、唐突に消防車が到着した。
インターネットで集めた事前情報によると、お神輿が通った後、というか通るのと同時に散水しまくって、火事を防ぐのだそうだ。
ちなみに消防団員の人たちも出番(仕事)を待っている間はリラックスしたムードで、地面に車座になって軽食をとっていたりしたのだが、そうへいじるを食べていたのを私は見逃さなかった。
おいしいもんね。
昔、信長と戦った僧兵たちが力をつけるために食べていた(であろう)僧兵汁を、
現代では、僧兵が担ぐ神輿の火災を防ぐ消防士たちが、やはり力を出すために食べている。
食が時代を越えてつながった瞬間を見たように思った。
お神輿を観に行った
御在所ロープウェイの乗り場付近が祭りのメイン会場だったが、お神輿は20時半に、最初にバスを降りた臨時バス停の前にある、広場を出発する。
「白い袈裟頭巾に黒法衣の男衆が、重さ600kgの火炎みこしを担ぐ」と各種の案内に書いてある。その神輿が、公道約1キロを上り(公式観光サイトでは「温泉街約2キロ」と記載されている)、最終的に屋台のあった「御在所ロープウェイ・まつりメイン会場」に到着するのだそうだ。
つまり、お神輿を最初から見たければ、バスを降りた場所まで戻る必要があった。
私は19時半過ぎに、先ほど恐々上ってきた道を、また恐々引き返して、お神輿の出発地点で待機することにした。
出発地点に着いて驚いたのは、(一部の)観客の熱気である。
一眼レフを抱えた人が僧兵を囲んでいる。
最初に、バスで、私が着いた時間は19時前だったが、そのときにも人が待機していたようなので、18時台から場所取りしていた人もいるのだろう。
確かに、こんなに大勢の僧兵を観られるのは、この日この場所だけだと思う(たぶん)。しかし、何がそこまで観客を惹きつけるのかよくわからない(埼玉から観に行った自分が言うのもなんだけど)。
いよいよ、点火
かがり火が燃え始めると、いよいよか、と(私も含めて)観客の期待が高まった。
しかし、まず、僧侶によるお祓いがあった。
お祓いは神事なので撮影禁止だった。だから写真はないが、白い衣装の僧侶(三獄寺の住職らしい)が僧兵ひとりひとりの頭を触って、無事を祈っているので、さっきまでと違い少し厳粛なムードになった。
それが終わると、かがり火から松明に火をつけて、その松明を、神輿に乗せていく。
これがめちゃくちゃ危ない。
僧兵が「あっつ!!」と叫ぶ。絶対パフォーマンスじゃない。
火の粉が落ちてくるのか、至近距離で燃えさかる松明を持っているから熱いのか、詳細はわからないが、本当に熱いのだということはよくわかる。
松明が何度も倒れそうになり、観客がざわつく。
燃えさかる松明。観客の熱気も最高潮。
それでもなんとか無事にすべての松明が神輿に付けられたようだ。
そしてついに神輿が動き出す。
せいや!せいや!というかけ声と共に、僧兵たちが、山道を登っていく。
せいや!せいや!
最初から見ているので僧兵も普通の青年たちだとわかっているのだが、絵面だけ見るとだいぶ怖い。だいぶホラー。僧兵の集団が燃えさかる神輿を担いで練り歩くのだ。
実際、「こわいよー」という子どもの泣き声が聞こえてきた。怖がりの子どもだったらトラウマになるんじゃないか。なまはげみたいに。

