特集 2025年11月20日

三重県出身者が台湾の三重を歩く

台湾に「三重」という地名が存在するのをご存知だろうか?
台湾華語(台湾で話されている中国語)で「サンチョン」と発音される。日本の三重県出身の私が歩いてみたので様子をお伝えしたい。

埼玉県在住の主婦です。くじ運はないのですが、1%以下の確率で、PTA会長に当たり、勤めたことがあります。運の使いどころが、ちょっと渋いタイプです。



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台湾の三重站(三重駅)に行ってみた

私は三重県出身である。
すでに実家も三重県内にはないし、連絡を取り合う旧友も(ほぼ)いないのでたいした思い入れはない。しかし、18歳まで過ごした三重は間違いなく自分の唯一の出身地である。

台湾に「三重」という地名が存在することは、2022年に家族の転勤で台湾に住み始めてから知った。都心部である台北市の隣に位置する新北市の中に、三重区(区の字は本来は旧字体で表記される)がある。
それ以来、「(日本の)三重出身者として、(台湾の)三重に行ってみなくては!」という謎の使命感を抱いたまま、三年弱の間、台湾で暮らした。

重い腰を上げたのは、年度末での本帰国が決まった2025年の3月半ばのことだった。

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ジャジャーン
ついに(台湾の)三重駅に来ました!
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台北市内から1時間もかからず行けるが、三重駅の駅前にはあまり何もなかった。何もないのも三重っぽい。

三重駅自体は小さな駅で、駅前にロータリーなどもない。台湾にはコンビニがたくさんあるが、コンビニすらすぐに見当たらなかった。

写真の撮影者は小学二年生の息子。学校が春休みに入っていたので、仕方なく連れてきた。彼は生粋の埼玉県育ちのため、別に三重に思い入れはない。

そんな息子は電車好きで、ここでも電車に乗りたいのだと主張する。それにこの日は3月だというのに25度超えの夏日予報も出ていたので、その辺をぶらぶら歩いてみる予定を変更して電車に乗ることにした(三重駅までも電車に乗ってきたが)。

私には行きたいところがある。マジョリカタイルが建築物に埋め込まれていることで有名な「先嗇宮(シエンソーゴン)」が三重区にあるので、そこを目指すことにした。

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マジョリカタイルってこんなものです
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三重駅のエスカレーターから高架線路が見える。あまり外国感はないが、黄色いタクシーが海外っぽい

台湾の三重駅には、台北MRT(都市高速鉄道。要は都市部を走る電車である)と空港に直結している桃園MRTの両方の路線がほぼ垂直に交わって通っている。電車が好きな人にとってはなかなか楽しい駅だと思う。

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三重県には「三重駅」はない

せっかくなので、比較対象として日本の三重と見比べながら紹介していきたい。

日本の三重に「三重駅」はない。県庁所在地は津市なので、「津駅」がある。

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「眼科検診のあれ」に見える、とどこかで読んだことがある津駅の表示。

 

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津駅前。私が子どもの頃からそう大きくは変わっていない気がする。三重(サンチョン)に似ていなくもない。

残念ながら「津駅」の駅前にもあまり何もなく、津市在住だった十代の頃の私がショッピングに行く「都会」といえば、同じ三重県内の「四日市駅」だったりした。四日市駅併設の近鉄百貨店に、津市にはないハーゲンダッツの店舗があって、そこでアイスクリームを食べたのが都会の思い出だった。そのハーゲンダッツもとっくの昔に閉店している。

津駅にも近鉄とJRの二路線が走っているが、三重(サンチョン)とは違い路線の伸びる方角は同じで、名古屋までほぼ併走している。

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津駅の上から名古屋方面を撮った写真。左側が近鉄の線路で、右側がJRの線路
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台湾の三重駅前には公園がある

さて、話は、台湾の三重に戻る。
台湾の三重駅のすぐ目の前には大都会公園という名前の公園がある。

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ジャジャーンをもう一枚撮っていたが、注目して欲しいのは後ろの「新北大都会公園」の文字
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大都会公園の滑り台(ごく一部)

この大都会公園は、川の土手の傾斜を利用して設置された長い滑り台がたくさんある、子どもにはなかなか楽しい公園なのだ。大都会かどうか、はともかく。

そんな光景を見て、三重県にも負けないくらい長い滑り台があったのを思い出した。三重県津市の中勢グリーンパークだ。

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子どもがまだ小さいときに連れて行った、長い滑り台のある中勢グリーンパーク。日本の三重だって負けないぜ。

三重県出身者以外で中勢グリーンパークを知っている人は多くないはず。私が三重県出身だというのが証明される知識だと思う。

とにかく、この日はそんな大都会公園は電車で素通りして、先嗇宮(シエンソーゴン)のある南西へ向かった。三重県でいうと熊野古道のあるあたりだと思う。そして私は熊野古道へは行ったことがない。

三重県は南北に長いのである。

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三重県の面積は台湾の三重のだいたい321倍にあたるらしいので、こうやって比べるのが適切なのかよくわからないが、それを言うとこの記事の意味がなくなるので突っ込まないでほしい。
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我が家の「電車が好きな人」。小2の息子は撮り鉄を目指している。
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台湾の三重も、日本の三重も、映画の撮影地をアピール

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三重駅内部の壁面に、映画の撮影地マップがあった。

駅構内の広告で知ったが、三重区を含む台湾の新北市はいろんな映画の撮影地となっているらしい。

そういえば、日本の三重でも数年前に津市で『浅田家!』という映画のロケが行われ、母が喜んで唐突にパンフレットを郵送してきたのを思い出した。やはり、台湾の三重と日本の三重県には、共通点があると思う。『浅田家!』はまだ観ていないが……。

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母から送られて来たパンフレットはそのまま保管している
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台湾の三重には「幸福駅」がある

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台北MRTのうちの一路線・中和新蘆線に乗った
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電車のなかから幸福駅の看板を撮影したかったが、主張が弱い。

唐突といえば、台湾の三重区には「幸福(シンフー)」という駅がある。地名にあやかる人が集まってきそうだと思ったが、実際はすごく静かな駅だった。

日本の三重県にも縁起のいい名前の駅が

三重県には「大安駅」という縁起のいい名前の駅がある。
ただ、読み方は「たいあん」ではなく「だいあん」だ。

三岐鉄道の駅で、交通の便がいいとはいえない場所にあり、「幸福(シンフー)駅」よりもっとずっと静かな駅だ。

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三重県にある大安駅。大安駅なのにこんなに静かでいいのか戸惑ったが、静けさこそが大安かもしれない。
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大安駅の改札口には有人の切符売場があり、その横が図書館になっていた

帰国後に「大安駅」を訪れてみたら駅に図書館が併設されていて、切符売場の隣に図書館の入り口があった。図書館が併設されている駅というのは良いな、と思って、少し幸せな気分になった。台湾の「幸福(シンフー)駅」も、降りて散策してみたらささやかな幸せが感じられるような発見があったのかもしれない。

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