特集 2020年10月1日

「キジバト笛」を作ってハト本人と共演したい

あの名曲がいつでも吹ける!

私にとっては、田舎の夏休みに欠かせないマエストロである「キジバト」。あの特徴ある鳴き声を、どうにかして鳩笛で吹けないかと思ったのだ。作ってみた。

1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

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初めての手作り笛はキジバト専用

子供のころの夏休み、田舎のじいちゃんちに泊まっていると朝方、特徴的な音階で鳴いていたのがこのキジバト。田舎の、と書いたが東京にも普通にいて、そして別に夏じゃなくても今普通に鳴いてる「キジバト」だが、皆さんキジバトと言われてもパッと「ああ、彼らね」と、姿とお声がわからないかもしれません。簡単に説明します。

まずは容姿。その名のとおり、キジの雌に似ているからキジバトと呼ばれるそうだ。そのへんの公園などにドバドバいるドバトより地味である。

キジバト.jpg
繰り返すが地味。(Photo by のびいる

で、かんじんの鳴き声。 Wikipediaには「『ホーホーホッホー』『テーデー ポッポー』と表現される」とある。

うーん、そう来るかね。私には「ポーポ ワッパパー」と聞こえるのだが。ちなみに家人には「デーデッポポー」と聞こえるらしい。

えてしてこういう「聞きなし」の仕方には個人差があるので表現が難しいが、同じページには親切にも譜面まで載っていたので引用する。

Kijibato_Saezuri_Gakufu.png
ますますわからなくなってきました。

最初に2つ、後に3つ。私の認知に近い。皆さんにもイメージどおりの音階だろう。

ここで、今年の3月、犬の散歩中にとらえたキジバトの鳴き声をお聞きいただこう。ちょっと音が小さいが「ああ、あれね」となるはずです。

 

この鳴き声を鳩笛で表現して、キジバトさんとセッションしたいのである。まぁなんて夢のあるお話でしょう。

おっと、ここでまた「鳩笛」というワードが出てきた。郷土玩具でこういうジャンルがあり、各地で魅惑的な鳩笛が作られているのだ。

鳩笛は1音のみ鳴らせるが、ここに1つ穴を開けると、キジバトの鳴き声に近いあの「ポーポ ワッパパー」とか「デーデッポポー」が再現できるのではと思うのだ。オカリナの2音版みたいなものだ。キジバト専用笛。

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左が、確か道後温泉ちかくの神社でお迎えした鳩笛。右は東京蚤の市で見つけた、東欧のだったか。ちなみに鳩かどうかはわからない。

生半可な知識でグングン進める笛作り

さて、 キジバト笛を作ってみたいと軽く言ったが、笛だ。笛なんて作ったことがない。詳しい構造がわからない。当方、口笛だって吹けない。

ネットで鳩笛やオカリナの作り方の記事を探しまくり、プリントアウトまでして、なんとか吹き口の構造が自宅でできないかと、陶土じゃなく石粉粘土でサンプル作ってみたのがこれだ。

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幼稚園の頃に作った、指かオバケかな?

いかん。ちゃちゃっと試作、にもほどがある。

たぶん、口笛や、「ビール瓶の口を吹いてブオーッと鳴らす」のと同じ原理とは思うが、ええい締め切りも近いのに1からやってられっか。

夢のある工作をしようとする人とは思えない舵の切り方で、もう持ってる鳩笛を真似しちゃうことにした。というか最初からそうすればよかったのだ。

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ふむふむ。狭めの吹き口から、この穴の手前の斜めエッジに向けて吹けば鳴るのだな。

探しまくった記事をだいたい読んでいたので、実物に照らし合わせるとなんとなく構造はわかってきた。中の空洞も大事なのであろう。江戸時代の、蘭学に初めて触れる書生のような気分である。

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ターヘルアナトミアには、穴をこうして開けていくと書いてあったで候(嘘)

試しに1箇所、モデルの鳩笛に穴を開けて鳴らしてみたら、穴が大きくなるにつれて高い音になっていった気がする。考えたらリコーダーとかも、そんな仕組みだもんな。

作る前はこの穴の位置とか数とか、そもそも音階があってるのかどうかなど大変不安だったが、こんな適当な感じでなんとか表現できそうだ。

もし1から作るの失敗したら、このアリ物の鳩笛を塗り直して記事にしよう…。そっと誓った。

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吹き口を開けるためのヘラを作っている(このエッジはこの場合あまり意味なかった)。
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まずはこうして粘土を盛って、ヘラを引き抜いて乾燥させる。なんだか五平餅が食べたい。
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吹き口とは別に、胴体を模刻する。モデルさんがいると、はかどるわぁ。
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表面がだいたい乾いたら、中をなるべく多くくり抜いて厚みを薄くしたい。絵的にはキビヤックに近い。
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ここのエッジがキモ、らしい。試行錯誤真っ最中!
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先程の吹き口をあてて、微調整地獄の釜の蓋が開いた。
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しかしなんとか形にはなったぞ!

何度も何度も試し吹きをして、音のなる吹き口の角度を調整。ちょっとのズレですぐ鳴らなくなったりしたが、なんとか安定した形を見つけた。

ここに、高音部の穴を1箇所開けて、2音階鳩笛の完成である。

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ターヘルアナトミアを参考に穴開け(嘘)
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キジバト色に彩色。地味に地味にを心がけ。
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地味にセッション成功

なんだか、見た目はすっごく良くないっすか? キジバト笛。

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こういうのが元からあるように見えるぞ。先輩たちも歓迎している。
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最初の低めの音「デデッ」は指でこの穴を塞いで出し、次の高めの音「ポポー」は指を外して鳴らす。

 

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たぶん首の模様間違えた(後ろじゃなくて首の両脇に模様があるようだけど、まあいいや)。
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かわいいぞ。鳴ればもっとかわいいぞ。

うーむ、さすが、元の鳩笛をほぼ真似しただけあって、いい出来だ。本物は土を焼いて作る土人形だけど、石粉粘土を乾かしてもだいたい笛になった。鳴るかどうかテストしてみたが、たぶんOKだ。たぶん、というのは吹く角度によって鳴り方が違ってきてしまうからだ。できるだけ真似したつもりだったが、構造的なものはまだまだだった。

と、反省している暇はない。さっそくまた犬の散歩がてら、キジバトを探して野外セッションしてみよう。

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手になじんで、これまたかわいいぞ。

午後3時ごろ家を出て、田畑の中を回ってみたが、なかなか今日はキジバトを見かけない。

いつもは散歩中、例の鳴き声が聞こえてきて、上を見上げると電線の上とか高い木の上とか、だいたい高い場所にいるので笑う、のだが。

今日はソロでの演奏か、仕方ない…と、適当な公園で吹き始めた。そうしたらば!

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お?遠くでセッション始めた…?

 

 

風が強くて聞こえづらいが、遠くで本物も伴奏しているのがわかるだろうか。やった。鳥と歌う伝説の少女に、私はなったのだ!

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いた!たっかーいところに!うける!

しかし後から指摘されたが、どうも「ポーポワッパパー」じゃなくて「デデッポポー」の方が正しい気がする。低い「ポーポ(デデッ)」から、高い「パパー(ポポー)」に行く前の「ワッ」を高い方の音に組み込んで吹いている。「ワッ」は無音で、休符って言うんだっけ?それにあたる気が…

ええい、音を文字で表すのが非常にもどかしい。コロナ落ち着いたら皆さんに直接話そう。


まとめ

近づいていくとパタッと鳴き声が止んでしまったので、画面の中での共演はかなわなかったが、とりあえず満足だ。笛もかわいいし。

次はブッポウソウとか、ツバメの「土食って虫食って渋い」あたりを笛にしたい。

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