トリモチといえば
『みんなの飼育シリーズ2 ぼくのクワガタ』という古いゲームソフトがある。クヌギやナラの木に罠を仕掛けてクワガタを捕獲し、お気に入りの一匹を育てて戦わせるゲームだ。
ぼくのクワガタでは中盤に捕獲アイテムとして「トリモチ」が登場する。他の罠よりも長持ちする代わりに500円と高価で、高値で売れるクワガタが捕まらないと元が取れない。儲かるまでリセットを何度も繰り返した。
そんなトリモチのゲーム内グラフィックが、生の鶏肉のようだった。これがわたしの知るとりもちの全てである。
祖父がとりもちづくりを教えようかと提案してくれたとき、あの鶏肉みたいなトリモチを思い出した。まさかアレが作れるなんて。本当のとりもちはどんなものなのだろう。
とりもちは木の皮から作る
とりもちはモチノキという木の皮を剥いで叩き潰してつくるものだという。ちょうど祖父宅の裏山にモチノキがあり、その皮を剥いできてくれた。
とりもちを作るときは、立木の皮をそのままナイフで削ぐのが一般的だったそうだ。だから子どもの活動範囲内にあるモチノキは樹皮が削がれたものが多かったとの由である。
祖父の時代、とりもちは粘着性を利用して小鳥を捕獲するために使った。
鳥罠は他にも種類があり、通学路に罠をいくつか仕掛けておいて帰り道にチェックするのが日課だったという。捕まえた鳥はそのまま囲炉裏で焼いてオヤツにしていたそうだ。
そんな少年時代を過ごした人間が令和を生きてテレビのdボタンを使いこなしているのだ。文化の振れ幅がすごい。
実際にとりもちを作る
さっそくとりもちを作っていこう。
作り方は本当にシンプルで、モチノキの皮をハンマーで叩き潰し、そのあとで水にさらすだけだという。たったそれだけで木の皮がスライムみたいになるんだったら相当おもしろい。
叩き続けていると粘り気が出て粘土のようになってきた。粘着力はまだまだ弱いが兆しはある。
とりもちづくり成功なるか
粘り気が出るまで叩いたあとは、できあがった物質を水にさらして不純物を取り除く。残ったものがとりもちだ。
どこまでが不純物なのか初めは分からなかったが、ささくれのような木くずがそうらしい。粘土質の物質から根気強くクズを取り除いていく。
どんどん純粋な粘着物質に近づいていく。
現実は無常で曖昧なものだから、どの状態で満足するかは自分できめればいい。法はおれのなかにあるのだ。実はあんたのなかにもあるぞ。
法に則ってとりもちで遊ぶ
さあ、とりもちで遊ぼう。指先で転がしてねばねばを楽しむのだ。このAI時代に原始的な楽しみ!
べとべとしておもしろい。
スライムよりは粘り気が強いだろうか。吐き出してしばらくたったガムのようだ。これなら鳥の足を捉えて逃さないくらいのことはできるだろう。
とりもちは水で粘着力が弱まるので、手にくっついて離れなくなったときは水につけるといい。お湯ではドロドロに溶けて、冷水では固まるようにも感じた。
罠として使うときは枝に巻き付けて使ったそうだ。気づかずに鳥がとりもちを踏むと足だけが離れなくなるので、宙吊りのような姿で捕まえられるらしい。
かくして、私と祖父がそれぞれに持っていたとりもちの思い出は、時を経て今日のこの日に新たに上書きされ、祖父の老眼鏡のブリッジ部分はベとべとになったのだった。
さて、とりもちで遊ぶときは法律を守りましょう。とりもちで遊ばないときでも法律を守ることをおすすめいたします。提供は遵法精神でした。

