特集 2026年1月20日

カブをガチホする

「ガチホ」という投資用語がある。短期的な値動きに振り回されず、株などの投資商品を本気(ガチ)で持ち続ける(ホールド)という意味の言葉だ。

株式のガチホは精神力が試されて厳しいが、野菜のカブのガチホなら気軽で楽しいかもしれない。単に手でカブを握り続けるのだ。

まずはそこからはじめてみよう。億万長者への第一歩である。

1993年生まれ。京都市伏見区出身、宮崎県在住。天性の分からず屋で分かられず屋。ボードゲームと坂口安吾をこよなく愛している。

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わたしは破滅に備えている

株で儲けるのは簡単だ。安く買って高く売るだけなんだから。

そんな調子で何も考えず売買を続けていたら、新年早々とんでもない額のマイナスを抱えてしまった。どえらい含み損で本当につらい。

このままでは今年度中に破滅しそうだが、わたしはこれまで破滅に備えてきたので問題はない。備えあれば憂いなしというやつだ。

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家がなくなったら車に住めばいいし
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車を維持できなくなったら一輪車で買い物に行けばいいし
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食うに困ったら山で食べられるものを探せばいい

いざというときの覚悟があるので、一文なしになるまで勝負できるというわけだ。

ここまできたらガチホしかない。本気のホールド。いまは値段が下がっていても、暴騰する日まで損を確定させなければ勝てる可能性はあるのだ。絶対いつかは助かるだろう。

……不安だ。

ガチホの練習を野菜のカブでしておきたい。気を紛らわせたい。

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カブを買ってきた

近所のスーパーで300円のカブを買ってきた。これがわたしに許される最後の贅沢かもしれない。

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ちゃんと売ってた

カブは野菜の中でも目立つコーナーに置かれていた。旬なのだろう。流れは確かにこちらにある。幸先が良い。車の運転もあるので、家まで戻ったらカブをガチホしよう。

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いまからガチホ、はじめます

左手でガッチリホールド。これぞカブのガチホである。

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カブのガチホをしています

やりたいことはほぼ終わったが、ホールドし続けることに投資の妙味がある。

もう外も暗くなってきたが、限界までガチホしよう。カブを手放さない。やることはそれだけだ。

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カブを手放す理由はいくらでもある

突っ立っていてもしょうがない。カブをガチホしつつ散歩することにした。気づけば外は真っ暗だ。田舎は街灯が少なくて夜がちゃんと夜をやっている。

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左手でガチホするものとし、右手への持ち替えは禁止とする

この手の中にあるカブを手放す理由は探せばいくらでもある。

まず、株式投資の「株」というのは切り株が語源といわれていて、いま手に持っているカブ(蕪)のことではない。じゃあ俺は一体なにをしているのだろう。

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切り株は成長するし枝分かれしますからね。まさに株ですね

「むき出しのカブ、野菜泥棒だと思われるかもしれない」

「ひもじい」

「こういう言葉遊びみたいなネタってみんなやらなくなったよな」

……そんなふうに弱気や不安が襲ってきても強い心でホールドを続けるのだ。それこそが真の投資家の態度といえよう。

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はやすぎる利食いはダメ

長時間歩くとお腹が空いてくるのが動物の宿命だが、誘惑に負けてカブにかじりつくことなかれ。

カブは生で食べるよりも料理をして食べるほうがおいしい。すなわち、時間をかければカブから得られる幸福の値が高まるのだ。利益の最大化をはかるのも投資には大切なことである。

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いいカブだとおもったんだけどな

カブをガチホするとき、葉っぱを持つのと白い部分を持つのでは、葉っぱを持つほうがいい。白いとこ持つとめっちゃ冷たいから。

ずっとだまってカブを持ちながら歩きつづけた。

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そんなこんなで何も見えなくなった
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家に帰ってきた

しっかりとカブを握り続け、ついぞ手放さないまま家に帰ってきた。1時間は歩いていたようでテンバガー級の達成感である。

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これはもうガチホといっていいでしょう
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寒かったが運動を終えたあとの爽快感がある

ガチホも大事だが、同じくらい生活も大事だ。明日のために米を炊こう。ガチホしたまま炊飯できるだろうか。

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いけるかしら
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いけるんかい

カブのガチホと日常生活は両立できることが分かった。

みんな、カブに現を抜かさずに日々の暮らしにも精一杯取り組もうな。

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これが損切りだ!

炊飯器のセットが終わり、一息ついていると思わぬ妨害が入った。

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うわー!なんとかキャットバウンスだー!

うちの猫は葉っぱが大好きなのだ。気を抜くとカブをかじられてしまう。

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かなり興奮している
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どんなフードよりも草が好き

猫の手から逃すためにカブを持ち上げ続けていたら、急に左腕に疲れが溜まってきた。もう無理かもしれない。ついに損切りか。

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急に重いぞ
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もう諦めよう
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ポジションを解消して気分爽快!

カブを手放したら気持ちが軽くなった。

持っているときには気づかなかった重い心身の負荷があったのだ。見切り千両、損切り万両とはよく言ったものである。

やはり失敗したカブは切ったほうがいいのだろうか……。

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今更切ったところで……
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カブを切ったら美味いスープになった
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冷えた体にしみて美味い!人生最高レストラン!
編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
なるべくお金を使わない生活をしているという窪田さんがずっと株をやっているのが心配です。 いつ貧乏になっても大丈夫という失敗前提で記事が始まるのも不安。
でも、「こういう言葉遊びみたいなネタってみんなやらなくなったよな」
この一言に本気の不安を感じました。確かやって窪田さんを安心させてあげて!(林)

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