榊の木の皮がすごく怖い
林の中で掃除しているときにふと榊の木の皮を見て驚いた。めちゃくちゃ人間の目みたいだったのだ。
怖い怖いと言いつつも目のモチーフが好きなので、つい夢中で眺めてしまう。くさいと分かっているものを何度も嗅いでしまうような感じ。
見つめているとどんどん親近感が湧いてきて、しまいにはこの子を可愛くしたくなった。しなければ。もはや義務感と言っていい。
化粧する枝を用意する
そうは言っても立木にイタズラをするわけにもいかないので、いい材がないか祖父に尋ねてみる。祖父は林を持っていて、僕の願いを高い精度で叶えてくれる。
ちょうど邪魔になって伐採する予定の榎(えのき)があるというので場所を教えてもらい、また翌日に様子を見に行ったらすでに切り倒されていた。仕事がリニアくらいはやい。
木は1本だけあればいいとちゃんと伝えておいてよかった。下手したら祖父は僕のために山中の木をすべて切り倒していたかもしれない。日頃の甘やかしっぷりからするとそこまでやりかねないのである。
正月に季節外れの椎茸狩りをしたいという幼い僕のために、ビニールハウスを建てて暖房を入れて無理やり椎茸を発生させてくれたこともあるくらいだ。
椎茸を発生させるという、聞いたことなさすぎる溺愛。
木を盛る
目がたくさん付いた木が手に入ったのでメイクアップしてあげよう。化粧道具は100円ショップで手当たり次第に買ってきた。
ふだん化粧をしないので、道具の使い方をネットで調べながら塗りたくっていく。
やってみてすぐ分かったのは、化粧道具は樹皮を盛るために作られていないということである。
道具を強く押し付けるとなんとか色はつくが、のっぺりしてあんまりかわいくならない。でももう後に引けないのでこのままいく。
つけまつげを貼ったらチビるほど可愛くなった。
これはいい。好きです。
楽しくなって盛りまくったら原型がわからなくなってしまった。でもそれくらいのほうがいいのかしら?