特集 2024年9月10日

平安時代から続く徹夜イベント「庚申待」をやってみた

続いてライター荻窪圭さんの庚申塔の話

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荻窪さん

最初はライター荻窪圭さんの庚申塔についてのお話だ。

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荻窪圭さん

荻窪さんはIT、カメラ、古道などに詳しく、先日も「カメラのレビューでいつも同じガスタンクを撮る荻窪圭さんと、ガスタンクを見に行く」という記事に登場していただいた。(この章に出てくる写真はすべて荻窪さんによるものです。)

荻窪さんの話の前に、まず庚申塔ってどんなものというのを簡単におさらいする。

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これは上記のガスタンクの記事で荻窪さんに案内してもらったときに見かけたものだ。

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この手がいっぱいあるのが青面金剛(しょうめんこんごう)様で、手にいろんなものを持っている。その下に踏んでいるのが、見ざる言わざる聞かざるの猿たちだ。おそらく庚申の申(さる)と猿のシャレから来ている。

庚申塔は60年に一度の庚申の年とか、庚申待を何回か繰り返した記念とかに建てられる。

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荻窪:庚申待ちっていうことで、庚申塔のコレクションから面白いやつを突っ込んできました

会場:やったー!ありがとうございます!

荻窪:はい、第一弾。庚申塔はどれかというと・・

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荻窪:これ!

会場:おー、なんか卵みたいのがある

荻窪:これがですね、狛江市偉いんですよ、この庚申塔が三叉路の道しるべをかねていて・・

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矢印は筆者加筆

荻窪:よく見ると「西 府中道」

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荻窪:「右、當村(とうそん)​​地蔵寺」これ、狛江の泉龍寺のことです。お地蔵さんで有名でした。もう一つ、「玉川渡し場道」。これがですね、多摩川の登戸の渡し。

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荻窪:反対側が丸っこいやつ。左が江戸青山、六郷道(ろくごうみち)。これ品川道とも言われてるやつなので、江戸青山にまっすぐ行って、あとは多摩川沿いのほうにいくと六郷に。(道しるべは)代表的な庚申塔の使われ方の一つです。

会場:どうして庚申塔を三叉路に置くんですか?

荻窪:庚申塔もお地蔵様も馬頭観音も、交通の要所が多い。村の入口とか。この道をこっち入るとうちの村ですよと。お地蔵様は村に悪病とか悪疫が入ってこないように守る役割もしてたんです。庚申塔もたぶん同じような感じで道しるべとして置かれたんじゃないかと。

会場:どうせ置くならそういう場所に置こうということですか。

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ちょっと面白い庚申塔

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荻窪:ここからはちょっと面白い庚申塔です。

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荻窪:世田谷区成城に残ってる庚申塔です。ふつうの庚申塔ですよね。 

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荻窪:猿が向かい合ってるのがかわいい。

会場:おーーー!

荻窪:ちゃんと見ざる言わざる聞かざるで両側が向かい合ってるんですよ。

会場:踏まれてる邪鬼もかわいい

荻窪:置かれてる場所は成城からちょっと北に行ったところで、結構古い道があって残っていた。

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荻窪:つづいて世田谷区の「暗いよ狭いよ怖いよ」 です。

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荻窪:これです。

会場:閉じ込められてギュッてされてる!

荻窪:地下室に閉じ込められてるでしょ。たぶん上に青面金剛がいて踏んづけて圧縮されてる。

会場:願主ってなんですか? がんしゅ?

荻窪:たぶん庚申講のトップの人

吉村:「講衆同行十四人」と書いてあるので、14人のグループを作って多分リーダーの人がいたんでしょうね。右側には「安楽也」と書いてあります。村が平和でありますように、とかですかね。

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いろんな猿がいる

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荻窪:猿シリーズいきます。渋谷区なんかは庚申塔すごいいっぱいあったのに、開発で居場所がなくなって、最終的に昭和40年くらいに集められたという場所です。

会場:なるほどー

荻窪:金王八幡の隣の豊栄稲荷に集められてますが、寄ってみるとこう。

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会場:すごい!いい!いすぎです(拍手)

荻窪:いいでしょう? なぜ三猿だけがフィーチャーされた庚申塔がいっぱいあるのか。渋谷の古老に聞いてみたい。

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荻窪:これは渋谷なので、みなさんぜひ行ってください。

会場:はい!

吉村:庚申塔がいっぱい集まるのはもう一つあって、百庚申といって100個建てようとするパターンもあります。初めからいっぱい建てようとするんですね。そういいつつ、字で百庚申と書いてあるだけのこともあるんですが(笑)。

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荻窪:記号化されてゆく猿です。どんどん記号化されていくんですよ。

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見ざる言わざる聞かざるの三猿

荻窪:膝と肘と顔しかない。猿って知らないとなんだか分からない。胴体がなくなっちゃった。

会場:デフォルメされていくんですね。

荻窪:蜘蛛の怪物みたいになっちゃった。どんどん記号化していくのが漫画っぽいなと。場所は駒込です。

会場:庚申塔のフルスペックってこんな感じですよね。青面金剛がいて、邪鬼を踏みつけてて、三猿がいて、あと日月があって・・。

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荻窪:そうですねー。それがなぜフルスペックなのかもよく分からないんですが。

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荻窪:これ同じ場所です。角柱の三面に猿がいる。元禄十六年と書いてある。で、だいたい元禄の途中から青面金剛中心の型が決まってくるんです。それより前は自由。

(注:元禄は1680年ごろ。徳川綱吉の時代)

荻窪:場所は駒込の、本物の吉祥寺の近くです。境内の裏に集められてるんで、なかなか気づかない。こういうところにあります。

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とろける庚申塚 

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荻窪:つぎは「とろけ庚申」

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荻窪:いいでしょう?溶けっぷり。

会場:え、なんでこうなるんですか?

荻窪:たぶん、岩の質。砂岩じゃないかな?崩れやすい上に246沿いなので(交通量の多い国道)、死ぬほど排気ガスを浴びてる。いいでしょう。左はかろうじて猿が残ってるけど、右はもうドロドロで分からない。場所は駒沢の地図カフェの近くですね。

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荻窪:最初に知った「とろけ庚申」はこれです。川沿いなんですけど・・。

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会場:うわーーー!

荻窪:すごいでしょう? この溶けっぷり。ちょっと怖い。

会場:野晒しだったり砂岩だったりでこんなふうになるんですかね。とろけたやつをこうやって保管してるのも面白いですね。

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初期の庚申塔は自由だった 

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荻窪:つぎは元禄より前の古いやつです。 豊島区の金乗院というところ。目白不動があることで有名です。実は目白不動は別の場所から移ってきたんですが。

荻窪:でここにある庚申塔がこれです。

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会場:かっこいい! 

荻窪:かっこいいでしょ?ちゃんと三猿もいるんですよ。これが元禄より前の寛文のころ(元禄の20年くらい前)。やっぱり元禄以降になると青面金剛中心になって、さらに江戸後期には文字庚申(文字だけの庚申塔)になる。でも元禄以前は自由で、これは自由にもほどがある。

会場:これ何ですかね?剣に巻き付いた龍みたいな。ドラゴン?

荻窪:倶利伽羅(くりから)不動ですね。

吉村:お不動さんが炎の剣を持ってるわけですが、その炎がドラゴンになってって、倶利伽羅っていう紋様になるわけです。炎でもありドラゴンでもあり。

荻窪:猿が剣を下から支えてますね(笑)

会場:奥に青面金剛がうんたらと書いてありますね。

(人間を罪過から守る青面金剛の化身・・と書いてある)

吉村:さっき青面金剛=不動なのかっていう話がありましたが、そう考えてもいいってことかもしれませんね。

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荻窪:最後に最強のやつを持ってきました。

会場:笑

荻窪:いいでしょ?飛んでる。これは東京じゃなくて川崎市だったので番外編にしました。向ヶ丘遊園駅から歩いたところにあるお寺です。かなりに奥に行かないとない。見つけた時は笑いました。 

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写真は尽きても話は続く

今回は一人につき40分の時間で話してもらっている。ここまで約2時間たつが、ただただ楽しい。これがあと(話だけで)4時間あるのだ。

 

つづきます

こんな調子でまだまだ夜は続くのだが、さすがに長くなりすぎるのでいったんここまで。次回につづきます。

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