特集 2022年4月20日

真冬に気球に乗ってカキ氷を食べたらどれだけ寒いのか

いぜん佐賀で取材中、「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」を偶然見て大感動した。(記事はこちら

その時に知り合った気球のパイロットさんがなんと、「気球に乗ってみる?」と誘ってくれた。
若干高所恐怖症ながらも、そんな機会なかなか無いぞと即決。

そうだ、そんなに乗る機会がないからこそ、ただ乗るだけじゃダメだ。

真冬の上空でキンキンに冷えたかき氷を食べよう!

東京葛飾生まれ。江戸っ子ぽいとよく言われますが、新潟と茨城のハーフです。
好きなものは犬と酸っぱいもの全般。そこらへんの人にすぐに話しかけてしまう癖がある。上野・浅草が庭。(動画インタビュー)

前の記事:祝「捨てられた椅子に座るシリーズ」1000脚達成!~椅子に取り憑かれた男のゾッとする話~

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時は2月上旬の真冬、場所は京都

いろいろあって、気球に乗せてもらうのが2月という真冬になってしまった。絶対寒いよな。。

でも、こういうのは行ける時に行くべきだ。
暖かい時期になると気球のシーズンオフらしいし、ズルズルのびてパイロットさんの気が変わってしまっても困る。

寒いという理由でやめるわけにはいかないのだ!

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早朝5時に京都駅前のホテルに迎えにきてくれた気球クルー。気球は風の影響の出にくい朝に飛ぶ。

まったく知らなかったが、気球は一般的なサイズで100キロ以上もあるのでまず1人だけで飛ばすことはできない。
毎回最低4~5人のクルーで協力する必要があるそうだ。

今回は京都大学OBがメインとなるメンバーたちの活動に参加させていただくことに。
車中ではたまに、風向きが、とか、ヘクトパスカルが、とか言ったり、気圧の計算したりとなんか頭いいこと言い合ってて楽しそうだ。

私は難しい話になると自然と思考を停止し、ただボンヤリしていた。

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6時45分頃 京都府亀岡市のコンビニ駐車場。今日飛ばすのは2機で、そのメンバーみんなで集合。風を確認するため見上げている。(撮影し損じたが、ガスを入れた風船を飛ばして風の流れを見ている)

メンバーの1人が記録帳簿みたいなものをつけていた。彼らは気球の大会に参加するので、その練習でもあるのだ。

わたしはその横で、コンビニでとあるものをゲットした。

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コンビニで氷ゲット!普通のロックアイスだと大きくて削れないのでアイスコーヒー用の氷だ

気球に乗る+かき氷が成功するかでドキドキが倍

みなさんが気球を飛ばす事前確認をしている間に、私は上空でかき氷を食べるための準備を怠らない。

どうせなら作りたてのかき氷が食べたいので、この日までに電動かき氷機(電池式)を買って、どのサイズの氷なら削れるか、や、氷の持ち時間など地味な計測をしてきたのだ。

(どうせなら作りたてがいい、と書いたが、そもそもかき氷ぽいアイスがこの時期売られてないので自分で削るしかなかった)

気球に乗るというだけで一大イベントなのに、さらにイベントを上乗せしちゃっているので、成功するのかという変なプレッシャーでドキドキが倍になっている。

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私が乗せてもらう気球のメンバー。男性4人がかりで車から気球のパーツを取り出す。前もってこれを準備してくれてる訳だからありがたい。
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球皮(布部分)、すごく重い! 手伝うつもりでいたけど…役に立たなそう。申し訳ない。
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1人がバスケットの中に入り、カチャカチャと組み立てる。紹介が遅れましたが今回声をかけてくれたパイロットの橋本さんです(オレンジ色)。
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火を出す機械を載せた骨を組み立てる。
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ガスボンベは隅に3本配置(ひとつ20キロ)。
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火が出るかテスト。うわ~! すでに興奮する!
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袋から球皮を引っ張り出す。
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バスケットは倒しておく。
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球皮の、ところどころ縛っている紐を取る(私が手伝えたことその1)
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球皮の端を持ちあげ(私が手伝えたことその2・手伝い終了。)、空気を送り込む!
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どんどん膨らむ球皮
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うわー!サーカスのテントみたい!
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ムクムクと大きくなっていく。火をおこし、あたたかい空気も送り込む!
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あたたまった空気が上向きに上昇して、球皮が丸まっていく!
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すごいすごい!
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でーきた~!! この気球には「王天姫(のうてんき)」という名前がついている。可愛い~!
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良い光景すぎるので、縦写真もあげちゃう

こうやって気球ってできるんだ!
興奮して私はシャッターを押し続けた。

気球といえば、プカプカと優雅に浮いているのしか見たことがなかった。
こんなに体力が必要だとは想像していなかった。
これは男性の力なくしてはなかなか飛ばせませんぞ。

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改めて…でかい! 最も一般的な大きさの気球は高さ約20m
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なお、気温はマイナス2度です!
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バッチリ着込みました!
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寒さ対策バッチリ

私がこのコートを引っ張り出す時は本気で寒い地域に行くときのやつだ。
これまで真冬のカナダや北海道などで活躍している。

もちろん服の下には上下ともユニクロのヒートテックだ。さらに念のためユニクロのダウンも中に着れるように準備していた。ホッカイロも持ってるし、手袋もこの時のために新調した。
寒いのが苦手なのだ。

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いざ乗り込む! バスケットにはちゃんと足をかけるところがある。
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ほかに3人乗り込み、1.2m四方の中に4人乗った。
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パイロットの橋本さんがバーナーのレバーを握り、火をつける!すると、空気があたたまって・・・浮く!
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ちなみにレバーはこんな感じ。シンプルといえばシンプル!

気球は完全に風まかせ

みんなの疑問として、気球の操縦はどうやってするのかというのがあるだろう。
実は気球は下の2つしかやれることはない。

1.空気をあたためて浮かせる
2.あたたまった空気を逃がし、おろす

方角を変えることはできない。
ただただ浮かすかおろすかだけで上空をただようのだ。

なので操縦はバーナーのレバーがあるのと、紐をひっぱり球皮の上部分を開いて空気を逃がす、というシンプルなものだった。

ただ、風まかせだからこそ「風を読む、予報する技術」がとても重要になってくる。メンバーは常に風向きや速度などについて話していた。

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行ってきます~。下には1人、誘導係として残る必要がある(重要人物・山下太一朗さん)。
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浮いた~!!!

気球に乗ってると風を感じない

まったく知らなかったが、気球は風と一緒に動くから、逆に風を感じないのだそうだ。

私はポケットカイトというミニ凧をいつも持ち歩き、風を感じたら凧あげをするのだけれど(詳しくはこちら)、今回は自分が凧になる感じなのだろうか。
いや、糸でつなげられていない分、もっと自由。
鳥だ、私は鳥になるのだ!

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ボーっ火をふく
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「暑くなってきた」と脱ぐ橋本さん。 ええー!!

なんと、パイロットの橋本さんが暑がってさっそく上着を脱いだ。
たしかに、頭のすぐ上には火があるし、思っていたほどぜんぜん寒くない。
むしろ下にいた時よりあったかいぞ!

少しあがったところにある「逆転層」はあったかい

実は地面に面しているところの方が、冷え込んでいて気温が低いのだそうだ。

通常、100メートルあがるごとに体感気温は1度下がると言われているが、それはもっと高いところの話らしく、いま漂っている上空100~300メートルあたりでは、むしろ冷え込んだ地面から離れたことであったかくなっているらしい。

知らなかった…タワーの中くらいしかこの高さは経験していないもんな。それに、早朝で真冬だから違いが顕著にわかるのだろう。

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足元に置いていた温度計は4度。頭の位置らへんについている気球の計器は12.6度。逆転層+バーナーの火であたたかいのだ。

そして見てほしい、この絶景を!

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仲間のもう一機。朝モヤがまた美しい。。
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最高すぎる朝。なんて贅沢なんだ!!
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犬の散歩してる人たちが手を振ってくれた。犬たちも不思議そう。散歩してて気球見えたら楽しいよなあ。

気球は基本的に、風の安定している早朝にあげる。だから、気球によく出くわすのは、子供とかお年寄りといった朝早くに外を出歩くような人が多いらしい。

そもそも、いろいろな条件があるため、気球を飛ばせる地域というのは凄く少ない。
だからこういう風に気球を見上げられる人たちはそれだけで羨ましいと思ってしまう。(いろいろな条件については後述。)

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なお、気球の動きにあわせ、下ではずっと山下さんが車を運転して追ってきてくれている。トランシーバーを使い、常に連絡をとりあう。

上空400メートルのあたりにやってきた。

条件があえば1500メートルまで行けるかもと事前に聞いていたが、この日は珍しい風向きだったようで、あまり無理せずこのくらいの高さでキープしよう、ということになった。

それでも東京タワー(333メートル)よりも高いぞ!

今だ!上空で出来立てのかき氷を食べる

とにかく絶景に見惚れ興奮していたが、私には重要なミッションがあったのだ。
急いで、東京から準備してきたかき氷機を取り出す。

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ジャーン!電動のかき氷機~!
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さっきコンビニで買った氷を水筒に移していた。それをかき氷機に入れる。
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スイッチを押すと、下から削られた氷が出る!
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シロップがわりはこれ。京都に行く直前、真冬だとどの店でもシロップが手に入らない(時間があればネットで買えたけど)ことに気づき、急きょそれっぽいものを買ってきた。
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できた~!京都らしく抹茶味のかき氷と、バイス(梅)味のかき氷だ!
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前日によなべしてスプーン状にしたストローで食べる。ぜんぜん寒くないし普通にうまい!

逆転層にいるから寒くなくて普通にうまい!

バーナーの火であったかいし、さきほど説明した逆転層にまだいるため、ぜんぜん寒くない。だから普通に美味しくかき氷をいただけた。想定ではガチガチ震えながら食べるはずだったのに。真冬の美しい朝の光景を見ながら、かき氷を食べる。あー最高だ。

ちなみに、イベントとして気球でシャンパンを飲むセレブたちもいたりするそうだ。(もちろんパイロットは飲みません)

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たくさん気球に乗ってるメンバーも、かき氷を食べるのはさすがに初。(河田さん)
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みんな嬉しそうじゃないか。(快晴さん)
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「酸っぱい!」バイスの方を食べた橋本さん。確かに酸っぱいかき氷も珍しい。初体験だらけだ。
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絶景とかき氷(京都仕立て)
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こんな景色を見ながらいただきました。
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自分の気球の影、かわいいなあ。
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この高さから落ちたら…死! でも不思議とそんなに怖くないんだよなあ。ちなみにパイロットの橋本さんは高所恐怖症だそう。
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そろそろおりる時間。風を読み、着地場所を見定める。
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下で車を走らせている山下さんと連絡をとる。かっこいいなあ。
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パイロットは緊張を見せてはならない

ずっと余裕そうに見えていたパイロットの橋本さん。
久々の操縦だったのでこのとき実はかなり緊張していたらしい。だがパイロットはほかのメンバーを不安にさせないように冷静にふるまう必要があるのだ。

なおこのとき、気球に乗ってから1時間以上が経過。
滞空時間は長いけど、この日は風が弱かったため距離としては1キロしか移動していなかった。レースのための練習をしてきたもう1チームにとっては物足りなかったかもしれない。

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カメラ好きなら最高の被写体だなあ。
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見飽きないもんなあ
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最高すぎてずっとニヤついてました!

気球をやるなら独身男性が有利?!

そういえば、どんな人が気球乗りになるのだろう?なかなか聞けないのでこの際に聞こう。

・体力が必要なので、基本は男の世界。
気球や装備がとても重いので、男性が多い。とはいえ女性も2割程度いて、女性だけで大会にでるチームもあるそう。

・お金をかける情熱があること
まず気球そのものに5~600万円かかるそう。
1人ではなかなか手に入らないので、皆で出し合うようだ。(今回乗せてもらった王天姫は、私が佐賀で出会ったメンバーの所有物を借りている。)
それにガス代、移動代、保険代等。
なお、パイロットの試験は機材が全部揃っていれば2~30万くらい。

・コネや、ノウハウを伝授してもらえる環境があること
日本の気球文化は、まだ50年くらい。当時いくつかの大学生を含む気球グループが偶発的にでき、以来、気球乗りは歴史ある有名大学10校くらいにある気球サークルの大学生やOBがメイン層のようだ。サークルにいることで、お金のやりくりなどノウハウを伝授される。

・恋人や家族の理解が必要
気球を飛ばせられるのは一部の地域だし、大会会場も限られている。気球を運ぶ必要があるので、移動は全て車となる。その移動を面倒くさいと思わない人である必要がある。

また、大会は、天候に左右されるため3日以上滞在するようなのでその間は家を離れることになる。いろいろとお金もかかるしで、家族が理解してくれないとやれない。そのため独身男性が多いそうだ。なお、メンバーいわく「変人が多い」そうだ。

・地元の人たち、まちの理解が必要
気球を飛ばせられるのは、本当に限られた場所だけのようだ。(色々な手続きをすれば全国で20箇所くらい飛ばせられるそうだが、30機以上の気球が飛ぶような大きな競技会を行ってるのが主に4箇所。栃木県栃木市、佐賀県佐賀市、長野県佐久市、岩手県一関市。)

なにせだだっ広い土地が必要だし、何よりも、地元の人たちや、まちの理解がないと飛ばすことはできない。

そしてここ、京都の亀岡市で飛べるようになったのは最近で、この日、自分は飛ばずに車で誘導してくれていた山下太一朗さんが地道に調整を行ってくれたからだそうだ。なんと2年もかけながら、応援してくれる人を増やしていったそう。

そしてそんな山下さんに心得を伝授したり、今回乗った王天姫を貸しているのは、私が佐賀で出会った方々だというのだから面白い。

こういった、様々な条件が重なり、ようやく飛ぶことができる気球。
乗れるのは本当に貴重なのだ。

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楽しかった上空の旅も終わり
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着地場所を決め、そこを狙って操縦。微調整をする橋本さん。
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日が昇り影が濃くなった(よく見ると手を振ってます)
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操縦忙しそう。一番の腕の見せ所だな。
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無事着地!そして車で案内してくれてた山下さんがかけつけてくれた。
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ありがとう王天姫ちゃん!
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ごめんやで王天姫ちゃん…。(実はバイスを大量にこぼしていました。炭酸と知らず…)
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無事生還!
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バスケットを倒し、お片付けスタート!
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急いで布をかき集め根本から紐で縛っていく(たんぼに球皮が乗っていますが、これも地元の了承済み)
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ナイロン素材。同じようなウィンドブレーカー持ってるな。
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紐で縛って(これは手伝えた)
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袋に詰め込む。空気を抜きながら。
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最後、コンパクトにまとめた気球をハイエースに乗せる。ハイエースは気球のために作られたかのようにピッタリ!
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バスケットの裏側。これに4人乗って大丈夫ってすごいよなあ。
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こんな感じで、4人のおかげで猛烈な感動をさせていただきました!本当にありがとうございました!(この、球皮の空気を抜ききったときが達成感を感じる瞬間らしい)
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私も乗せてもらう。もうとにかく、最高のなかでも最高な体験でした!
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山下さんが下で撮ってくれていた写真。私、これに乗っていたんだなあ…!

いつかもっと、気軽に飛べるように!

いつも見上げている空に、自分がプカプカと浮かぶ。
いつも感じている風に、自分が乗っている。

そんな体験ができるなんて思ってもみなかった。というか、気球乗りっていつもこんな素晴らしい体験してるのか!わたしは何度も「ずるい!」と連呼していた。

でも、記事中に書いたように、いろいろな条件を乗り越えてできる体験なのだ。まだまだ日本では気球の歴史が浅いようだけれども、気球の普及に大いに関わっている大学関係者や、イベント関係者の熱意、気球を容認してくれる地域の協力、そして、私が佐賀で出会ったメンバー(みなさん拠点は兵庫の姫路)のように山下さんのような若手に色々伝授し、そして山下さんが京都で飛べるように実際に行動に移したりしている。見えないところで着実に気球の良さは広がっているのだ。

いずれ、もっと日本各地で、この素晴らしい体験が気軽にできるといいなと心から思う。それで、私は地上でかき氷屋をやるのだ。儲かるかもしれないぞ。
 

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ちなみにポテチ袋膨らむか実験も一応したけど400mだとまったく変化なしでした!
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