鑑賞者の脳裏に曲を鳴らし疑似体験を促すキャラ達、探し続けていればきっとあなたのマインドの柔らかいところにタッチする歌を歌い上げるキャラに出会うはずだ。というかそんなバーチャルな感じではなくて、はやくちゃんとした賑わいが戻りますように。
感染症対策により三密が敬遠される中、もっとも艱難辛苦を強いられているレジャーのひとつがカラオケではないだろうか。
カラオケ講師の父を持つ身としては早く表声や裏声を思いっきり部屋に反響させながら「ボーン銀座USA!」とかわけがわからない事をシャウトして気持ちよがる日々が戻ってきて欲しいと切に願う。
めっさ気持ちよさそうにカラオケを楽しむ人畜その他のカラオケキャラを愛でながらその日を待ちわびよう。
数々の娯楽がしのぎをけずる街の中でカラオケは、気持ちよく歌って楽しいという体験のイメージを発信して道行く人のカラオケ欲を刺激している。人だけでなくかわいい動物やかわいい無機物、かわいいなんだかよくわからないもの、様々な姿でその気持ちよさを伝えてくる。我々がそれを目にした瞬間、脳内にグルーヴが生まれるのだ。
鳥やカエルなど美しい鳴き声を持つ種をはじめとしたカラオケアニマル達が恍惚としてマイクを握る。その擬人化具合も見ものだ。
<鳩&汽車>
装飾テントを一見しただけでは何の店かよくわからないが、「ポッポ」という文字にしても口に出しても気持ちよさしかないフレーズに鳩や汽車が連なって歌い出す。有機物も無機物もない地球の仲間感。この根源的な気持ちよさ、描かれているのはまさにカラオケである。
<タートル>
「ル・ベール」はフランス語で「緑色」という意味なのでキャラのモデルはいわゆるミドリガメか。ミドリガメはミシシッピアカミミガメという赤い耳のような模様が特徴のカメの子供時代の呼び名であり、このキャラにはカラオケのもうひとつの重要なファクターである「聞く」という行為も暗示されている。
<コアラ>
ロッテの名菓「コアラのマーチ」に続けとばかりに繰り出されるコアラ×音楽のイメージ。コアラの声は無理やり文字で起こすと「ヴーゥ、ヴヴーゥ……」と地獄のようなうなり声で、鳴く動物というイメージからは程遠いがそんな彼らに小刻みにステップを踏ませるグルーヴをカラオケは持っている。
<擬人化カラス>
積極的に声を出していく動物の代表格カラス。もはや飛べないくらいに擬人化されたおかげでマイクを手にする事ができた。
カラスになぜ鳴くの?と問う童謡があるがこのカラオケカラスに言わせれば「気持ちいいからに決まってんだろ」という事ではないか、はやく次の曲を入れよう。
<カバというかあれ>
ムーミンとガールフレンド、フローレンのデュエット。ムーミンのテンションがちょっと悪ノリじゃないかと心配になるぐらい高い。
<馬デュエット>
どうぶつ部門の一推しがこの馬デュエット。
馬の擬人化か人間の擬馬化か、フォーマルをパリッときめた紳士淑女の華麗なるデュエット。パッと見なんで馬なんじゃと釈然としなかったが、眺めているとそこからデュエットの名曲が聞こえ、この馬人たちが今にもよりそい、見つめ合いながらカラオケを堪能しそうな気がした。変なキノコでも食べてたのかな。
カラオケを象徴するアイテムといえばマイク、マイクもいろいろ気持ちよさそうだ。
<性格>
キャラが気持ちよさそうというわけではないのだが店名との組み合わせが総合的に気持ちよすぎてピックアップしてしまった。自分勝手とは閉塞した現代社会において最高の快楽ではないか。
<無敵のマイク>
そのまま手を振り下ろして殴られたら瞬時に頭がもげそうな迫力満点のビッグマイク。ZEEBRAはかつて「jahに無敵のマイク預かり」と唄っていたがこれを見た瞬間に「あの預かり物はこれだ」と思った。
<エコーっぽさ>
マイクに目と口を あしらったかわいいキャラがカラオケにいざなうが全体的になんかすごかった。
<マイク擬人化>
これも共食いキャラの一種といえるだろうか。これがほんとのスタンドマイクみたいなマイク人間が全身で表現する開放感が気持ちいい。マイクだった頃からこれがやりたかったんだろうな。
やはり一番自然に感情移入できるのが人キャラだろう、にんげんだもの。
<男爵>
ほろよい気分で美声を披露する男爵。みずからの声量、声質に絶対の自信があるからマイクなんていらない。世界14大テノールくらいには入ってるのではないかという貫禄だ。
<ドローン>
よくこの構図を発想したなという感心しかない。歌いながらドローンに向かってきっちり目線を振るこの余裕。そうとうの手練れと見た。
人差し指を掲げてご機嫌で歌うのは西野カナかアタックNo.1かはたまたABBA(Super Trouperね) か。
<狭い階段ギャル>
人1人がやっと通れる程の階段でノリノリのカラオケギャル。ここでアガっていつしか階段も上がってしまうという心憎い仕掛けである。
その先に彼女がいるという保証はない。
<こぶしアゲアゲ>
鬨の声を上げるようにオーディエンスを鼓舞する姿が勇ましい。アゲていこう、がんがん拳を振り上げていこう。カラオケ幕府を立ち上げるその日まで。
<あぜんとする男>
自分が入れた曲を歌われてあぜんとしているのか、彼のこれ以上ないあぜんとのコントラストが女性の気持ちよさそうさを一層引き立てている。
<歌聖>
じんぶつ部門のNo.1というより、これまで見てきたカラオケキャラで最高点に到達しているのがこれだ。
この陶酔感、恍惚感、カラオケ講師の父が見たら「歌聖じゃ」とあがめたてまつるに違いない。マズローの欲求段階で第8段階ぐらいまで到達した唯一の人類が彼らなのだ。君はここまで来れるか。
<じわじわくるトマト>
昔からこの感情をうまく言語化できずもどかしいのがこのトマトである。しっかりマイクを握って画面をしっかり見据えて歌う好青年っぷりが名状しがたい印象を私の心に残すのだ。だってトマトだよ。
<歌広場の爪>
関東近郊に幅広く展開するカラオケチェーン「カラオケ歌広場」の丸いあれだが最近、所用で(どんな)この丸いやつを観察していたら
微妙に手のリアルさが異なる2タイプが存在する事がわかった。
端的に言うと「爪があるやつ」と「爪がないやつ」である。
だから何だというわけでも無いが、街で歌広場を見つけた際は「おお、爪がある」などとコアラのマーチの眉毛ありをゲットした時のような感慨を得てもらえれば幸いである、という発表する場に困っていたどうでもいい知見をさくっと披露して終わります。
鑑賞者の脳裏に曲を鳴らし疑似体験を促すキャラ達、探し続けていればきっとあなたのマインドの柔らかいところにタッチする歌を歌い上げるキャラに出会うはずだ。というかそんなバーチャルな感じではなくて、はやくちゃんとした賑わいが戻りますように。
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