特集 2020年7月15日

物言う段差「広告階段」コレクション

おもてなしは階段から始まっているのだ。

階段の段差は時に饒舌に、その先に何が待ち受けているかを語る。
これがあれば安心して登る事ができるのか、それとも登らずに済むのか。集めてわかったことは、特にない。


 

1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。(動画インタビュー)

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物言うといえば

2000年代初頭、村上ファンドを率いる村上世彰氏は上場企業の株式を取得するだけでなく、経営に厳しく提言を行い企業価値の向上を求め、この姿勢は「物言う株主」として注目を集めた。

しかし、もっと物言うものが、身近にあるんじゃないかと私は思った。それが階段の段差のところ(蹴上げという)である。駅の出口や街中の雑居ビルで、行く先に何が待ち構えているのかと不安を持って見上げる我々に価値ある情報を提供してくれる。
 

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物言う階段だ!(ジンギスカンめっちゃうまかった)

階段という特殊な環境が生み出す独特のリズム感やカオスさを伴って見る我々を安堵させたり、かえって不安に貶めたり、様々な感情を巻き起こす。そんな魅惑の広告付き階段を集めてみた。

駅の階段は物を言う

多くの人が交錯する駅の階段では混乱を避けるために段差が「のぼり」「くだり」を分けて通るように言ってくる。

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こんなやつね。

おかげでおびたたしい数の人が上り下りする際も激突などせずに、たまに悪人を追いかけるジャッキー・チェンが逆行していく程度で通行できるのだが、以前、足場の取材で訪れた東所沢駅の仕分け具合がすごかった。

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完璧にのぼりとくだりを貼り分けている。もはや改修費をかけずに階段を二つ作ったようなものではないか。


大阪の地下鉄動物園駅では我々を脅かす犯罪行為への対策がかわいい動物達とかわりばんこに発信されていた。

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詐欺をめし捕らえるためのすごいソリューションがさらっと提案されている。
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いかすまち、すなわちcool town。

ビルの階段がいい

商店街の雑居ビルで広告階段はぞんぶんに存在感を発揮している。ほの暗い階段の先に待ち構えているサムシングを明らかにするのは段差だ。段差ーインザダークだ。

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これから細長い写真ばかりになります。
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闇へ消えていくハイレンド。

リズミカルにテナントや商品名を繰り返す。インターネットのバナー広告だったらこんなにずらっと並んでいたらうっとおしくてロイヤリティ低下は必至だが階段はむしろもっと連なれ!とすら思う。

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洋服直し、一泊休んでまた直し。

ここにフロア案内が加わるとまたいいヴァイヴスが生まれる。

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矢印いっぱいでアゲアゲ。今夜は焼肉だ!というテンションがいやが上にも盛り上がる。
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ウェルカムマット+段差広告の最強コンボ、美術品のように並んだ最下段のコーラもいい。

 そうかと思いきやツンデレみの強いやつもあった。デレは特にないか。

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こっち来んな。

 

いったん広告です

メニューが見えて便利

飲食店関係は推しのメニューと金額をがっつり打ち出してくる。

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あらゆる肉食べ放題!
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魅惑の飲み放題(ただし生ビールはオプションと最下段に記載)
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もう完全にお品書き

コミュ力勝負だ不動産

不動産関係ではメッセージがだいぶ情緒的になってくる。 

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一段一段、接客するように。
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「資料のコピーだけでもOK」とにかく接点を作る。

不動産店というのはなかなか差別化が難しいので来訪者との接点である階段で親しみを演出し、おお、そんじゃカプチーノでも飲んだるかぐらいのマインドを抱かせる必要があるのだろう。

情緒合戦の激化は表現をさらに先鋭化させる。

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「2店舗目できます!」その情報いるのか。
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「飾りじゃないのよ不動産は!」ちょっと悲しすぎるのよ不動産は。


もちろん他業種で情緒的なのもあるが不動産ほどくだけていない。

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ダーツ投げ放題!ひじが壊れるまで投げたい。
(ちなみに今四十肩がめっちゃ痛い)
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「楽しい雰囲気」「気分爽快」「ストレス解消」かわしきれないほどのポジティブワードを浴びる。
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ワード・エクセルがサビのよう。

入り乱れてこそ雑居ビル

ざまざまなテナントが入り乱れて競演している階段こそ雑居ビルの醍醐味である。

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ひろしと早稲田のデュエット。

 

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がんばれ「2階へどうぞ」、負けるな「3階へどうぞ」
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もみの匠はなんだかすごい麻雀を打ちそうだ。
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ここではモッズが麻雀を挟んだ。
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統一感とカオスが同居するとてもいい階段。登るにつれ支配力を増すウィング、間隙に飛び込むスナックみさ。
アタック25のような手に汗握る攻防が(静かに)繰り広げられている。

 

いったん広告です

手書きにスカスカの味わい

手書きで果敢にアピールしてくる階段も趣深い。

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決算したさが炸裂する乱れ貼り。
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「歌って」「はずんで」整然と並んでいるがテンションは高い。


 

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メモか!

ばばーんと段差いっぱいに主張せず、余白をいかしたレイアウトが逆に存在感を際立たせているのもある。素朴だが力強い吸引力を放っている。

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シンプルに中国整体。なんかかっこいい。
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近くて遠いおぼろげなカミユ(ピンボケ)。
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よく見るとなにか散りばめられている。
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運転代行!

スカスカじゃんと言いながらも結局、凝視したり傍らまで確認しにいっているのだからまんまと術中に堕ちている事になる。

しかしスカスカをスカスカのまま良しとせず、徐々に版図の拡大を目論んでいるアクティブな階段広告も存在しており、偶然その様子を記録する事ができた。

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アゲアゲの日焼け、30分1000円
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約1年後、少し上に伸びた。30分以下のメニューを細かく刻んできている。日焼けのトレンドがショートステイに移行したのか(多分違う)

1年おきにこの階段を記録していたのは本当に偶然で「お、なんかいい感じだねえ」と写真に収めて整理していたら同じ場所の写真が出てきたのだ。まったく記憶になかったがおそらく1年前も偶然通りかかった時に「お、なんかいいねえ」と思ったのだろう。
自分の成長しなさが喜ばしい限りだ。


 街にそびえる雑居ビルという未知の山を見上げると段差という道しるべがあるのは文明的でありがたい。下りではこうはいかない。山で迷ったら降りてはいけないとはよくいったものだ(違う)

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途中まで降りてやっとわかったよね。
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