読者から教えてもらった東京のおすすめ、次は上野界隈である。
上野駅
東京の中でもこのあたりは独特の雰囲気があると思う。雑多なんだけど落ち着きがあって、古いんだけど新しい。そんなカオスな安定感。
上野駅を出てすぐ目の前に広がるアメ横商店街は、いろんな国の思惑を煮詰めたみたいな空間である。見ようによっては東南アジアでありアメリカであり、アフリカでもある。それでいてすごく日本ぽい部分も残っている。
中でも濃いのがセンタービルの地下にある食品街ではないだろうか。
上野は公園も動物園も博物館も美術館もあるし、少し歩くとかっぱ橋にも秋葉原にも行ける。そういう点で半日時間ができた時には行くべき街ナンバーワンだと思う。ただしかなり個性が強いので負けずに楽しんでほしい。
浅草
上野駅で国際感覚を溶かした体に日本っぽさを取り戻すため、次に勧められていた浅草まで足を伸ばした。これまでは外国人観光客であふれていた浅草雷門だけれど、今の時期は、いつ以来かわからないくらいの静けさを取り戻しているらしい。
東京で仕事をしていても浅草とか上野ってめったに来ないのだけれど、たまに来るといつも人があふれていてテンションが上がる場所なのだ。それが今回はどこへ行ってもびっくりするほど空いていた。ちなみに取材日はお盆休み直前の週末である。
雷門近くで人形焼きを焼くお父さんにお話を聞いた。最近はずっとこんな感じなんですか?
「コロナからこっち、お客さんはぱったりだね。せっかく覚えた中国語も忘れたよ。」
3月ごろを境に人がぱったりといなくなったという。じわじわとではなく、急に。1年前に誰がこの事態を予想しただろう。
「あなたはどこから来たの?東京?」
今は地方から関東に観光に来にくいのだ。神奈川です、というとうれしそうに「ありがとうな、でもすまんな、こんなんで。懲りずにまた来てな」と。
まだ14時だったのだけれど、今日はこれで焼き終わり、ということだったので2袋売ってもらった。そしたら一つオマケしてくれた。オマケしてくれなくていいですよ!と言ってもお父さんは「今日はこれでおしまいだから」といって引かなかった。
それにしても静かだ。
東京は緑が多いのでセミの鳴き声はたくさんしている。それでも、夏の盛りってなんだか静かなんだなぁと思った。暑さが音を溶かしちゃうのかもしれない。
たまらなくなって人力車のお兄さんに休める場所を聞いた。すぐそこに古くからやってる喫茶店があるから休んで行ってください!と。教えてくれたお兄さんは僕よりも日焼けしていなかった。
純喫茶マウンテン
横に開くドアーはチェーン店にはない雰囲気である。お店に入ると奥から少し足をかばって歩くおかあさんがゆっくりと出てきてくれた。お客はちらほらだけど、このくらいの方が遠慮なくゆっくりできる。
店内はぼんやりとした明るさで、遠くの方から音の割れたジャズが流れていた。近くの席から聞こえる話声も、マスクをしているからかもしれないけれど角が取れて気持ちがいい。
お店おすすめのクリームあんみつを注文する。
クリームあんみつって食べた記憶があまりないのだけれど、それでも懐かしい感じがするのが不思議だ。いらすとやでクリームあんみつと調べたら同じのが出てきそうなスタンダード感である。
店内のクーラーに体が冷やされてしまう前に、と慌てて食べる。
甘い、でもすっと疲れが取れていくのがわかる甘さである。このくらいはっきりした甘さが欲しい時もあるのだ。
次はリニューアルしてすごいことになった東京駅です。