特集 2023年7月31日

伊勢うどんでフルコースを作る

前菜の盛り合わせ

まずは前菜の盛り合わせ。ここでは伊勢うどんを出さずに、伊勢うどんのたれに使われるたまり醤油がどういう味なのか、私がいつもどういうものを食べているのか、この店がなんの店なのかを暗喩してみた。伝わったかどうかは知らない。

東京湾で釣ったタコと育ちすぎたタケノコで作ったメンマのたまり醤油煮、そして家庭菜園で抜いてきた大根に店主が作ったカレーリーフソルトという南インドの風を感じるオリジナル調味料をかけたものである。

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家庭菜園が好き、釣りが好き、加工食品作りが好き、南インド料理が好きという自己紹介の一皿。

昭和初期の伊勢うどんと令和の伊勢うどん

伊勢うどんの聞き取り調査をしていて印象的だったのは、時代によって伊勢うどんに使う小麦粉がまったく違うという話だった。

江戸時代から存在していたという伊勢うどんだが、終戦までは伊勢市周辺をメインに国内で作られた地粉を使っていた。

戦争が終わると外国からたくさん小麦が入ってくるようになり、伊勢うどんも外麦と呼ばれる外国産小麦の粉がメインとなる。ちなみにさぬきうどんに使われる小麦(オーストラリア産ASW)と同じものを使う店も多かったようだ。

そして現在は、国内産小麦の盛り上がりもあり、製麺所の工場長や自家製麺の店主が、己の理想とする柔らかさやコシを追求した伊勢うどんが各種作られている。

そんな流れを感じてもらうために、農林61号という戦時中に開発された小麦にあえて全粒粉を混ぜることで製粉技術の低さを再現した麺と、自家製麺の店で多く使われているあやひかりという小麦の麺を手作りで用意した。

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左が農林61号に全粒粉を加えたもの、右があやひかり。生地の段階でももちもち感が全然違う。
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昭和初期を再現した麺を一時間茹でて、釜揚げで提供。小麦の味がしっかり感じられる。
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もちもち感が特徴のあやひありで同じように作った伊勢うどん。モニュンモニュンの食感がすごい。
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玉子入り伊勢うどん

伊勢うどんには「月見伊勢うどん」と「玉子入り伊勢うどん」が存在する。

なんのことやらと思うだろうが、月見はたれをかけたうどんに生卵を乗せたもので、玉子入りは茹でてすぐに料理人が生卵を絡めて半熟にしてたれをかけたもの。釜玉うどんとかカルボナーラが近いだろうか。

ある店主の話では、地元の人は月見よりも玉子入りを好む人が多いそうだ。

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茹でたての麺に生卵を絡めるのが玉子入り。これは「ちとせ」という店で撮影したもの。
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ちょっと玉子に火を通しすぎたかな。

牛肉入り伊勢うどん

伊勢市が松阪牛で有名な松阪市から近いということもあるのか、牛肉が人気のトッピングだという店も多い。薄切りを出汁でさっと煮たもの、スジ肉を伊勢うどんのたれで煮たものなど様々。

一回目はスジ肉を柔らかくなるまで伊勢うどんのたれで煮込み、二回目は霜降りの薄切りをさっとたれで煮て、玉子入り伊勢うどんに乗せてすき焼き風にしてみた。

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たまり醤油のまろやかな味が牛スジ肉とよく合う。
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玉子入り伊勢うどんとたれで煮た薄切り牛肉の相性の良さ。

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