特集 2018年12月11日

時は来た! 「シロコロホルモン」と今こそ向き合う

シロコロホルモンを改めて確認しに行きました。

「シロコロホルモン」を知っているだろうか。神奈川県厚木市から生まれたB級グルメだ。

B-1グランプリという各地方のご当地グルメの大会で優勝した人気グルメだが、個人的に食べたことないかもしれない。今、シロコロホルモンと向き合うために、厚木へ行った。

1988年神奈川県生まれ。普通の会社員です。運だけで何とか生きてきました。好きな言葉は「半熟卵はトッピングしますか?」です。もちろんトッピングします。(動画インタビュー)

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出身者に聞く豚肉文化の歴史

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小田急線ユーザーならおなじみの本厚木。寝過ごして起きたら本厚木だったことが3回ある。

今回、昔からあるものなのかを聞くため、厚木市出身のライター伊藤さんに話を聞いた。

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サケマイスター2級を取得している毒の伊藤さん(毒のある生物に詳しいという意味です。画像はこちらの記事から)

――元々、シロコロホルモンって有名だったんですか?

「あくまで私個人の感覚ですが、B-1で優勝して有名になるまでシロコロホルモンていう呼称は地元でも全然使われてなかったです。コロッとしたホルモンはあったんだけどシロコロホルモンという名前で売り出したのはやっぱ2000年以降とかじゃないかなあと。有名になってから『あ、あれ厚木ならではだったの?』みたいな感じです」

地元の人もなんかコロっとしてホルモンがあるなとは思っていたが、「シロコロホルモン」として認知したのは、2000年以降の感覚だそうだ。

また、厚木は養豚が盛んな土地のせいか、他の地域とは違った風景がスーパーにあった。

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スーパーの豚肉コーナーの充実っぷり。

ミミガーは見たことがあるが、ハツ、コブクロなどのホルモンも置いてある。自分の近所を見たらこてっちゃんしかなかった。こてっちゃんもおいしいですね。

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昔からある名物「とん漬」

また、厚木にはシロコロホルモンが生まれ出る前からある名物があるらしい。

「元々、豚肉を使った名物はあって「とん漬」なんかはもっとトラディショナルな豚みやげでしたね」

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駅前にあるとん漬のお店「波多野商店」。他にもとん漬が置いてあるお店はいくつかある。
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買ってきた。包装紙から良い品物の雰囲気がにじみ出ている。
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包装紙を取ると、みそ漬けにされた豚肉が。

人類の歴史でみそ漬けにされてまずかったものなどない。絶対においしい。フライパンで焼いてみる。本当はアルミやクッキングシートを敷いたほうがいいらしいが、家になかったのでそのまま焼いた。

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油絵とかで表現したい美しい焦げ目。

みその甘く、香ばしい匂いが部屋に漂う。そういうアロマテラピーやってほしい。

味はみその奥深い味と肩ロースのほどよい脂が連絡網を作って伝えたいぐらいおいしい。

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おいしかったです!

また、とん漬をもっとお手軽に食べてもらおうと地元の人が協力した名物、厚木バーガーも存在する。色々なお店で提供しているのだ。

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ブンブンというパン屋にも置いてある。最後の1個だった。人気商品!
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そしてこれが厚木バーガー。トーストしたイングリッシュマフィンにとん漬をはさんである。

とん漬のみそに、パンに塗られたマヨネーズ。見た目は洋風だが、味は和風テイストだ。こってりとコクがある風味にキャベツのシャキシャキ感が口の中をさっぱりさせる。それはもう間違いないおいしさだ。(ちなみに伊藤さんはマヨネーズが嫌いなので食べたことがないそうです。)

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話をシロコロホルモンに戻そう

――シロコロは昔からよく食べるものでしたか?

「いや、うちはそんなに食べませんでした。22~23年前はどこでも出してなかったような気がします」

「焼肉屋で働いた友人にも聞いてみましたが、当時は「シロコロホルモン」というメニューはなく、裏メニューにもありませんでした。厚木のホルモンが特別だ、みたいな話も特に出ていなかったみたいです。飲食店のメニューに載り出したのはBー1で脚光を浴びてからですね」

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地元の人にも聞いてみた。

「豚が身近にいるせいか、他の地域よりも豚の色々な部位を食べるかもしれない」、「シロコロホルモンは有名になってから厚木市内でも多く見かけるようになった」、「シロという部位はあったかもしれない」などほぼ伊藤さんとほぼ同じ証言が出てきた。

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昔からの名残で「シロ」だけが記載されたメニュー表も多く見かけた。
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あと、メニューの表の下にあった定休日。僕らも「つかれちゃったので休みます」って言いたいですね。
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シロコロホルモンを食べてみよう

知名度が上がったこと見かけるようになったシロコロホルモンだが、どんなものかを確認してみよう。伊藤さんにおすすめしてもらったお店がまだ開いていなかったので、歩いて見かけたお店に入ってみる。

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写真を見ただけなのにお腹がすいてきた。
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みそだれがかかった白いのがシロコロホルモン。

シロは豚の大腸の部位で10グラムぐらいしか取れない貴重な部位だが、そのまま食べるとくさい。そこで臭みを取るために裏返して洗うそうだ。

裏返えして洗ったシロは、焼くと丸くなり、焦げないように網の上でコロコロさせる様子からことから地元の人がシロコロホルモンと名付けた。

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ゆっくり食べようと1つずつ焼こうと思ったが、
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もう1つのせようと思って、
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食べたい思いがあふれた結果、3つのせて焼いた。
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仕事以上に真剣なまなざしで焼けるのを待つ。
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うまい・・・。

「脳を揺さぶれるおいしさ!」というわけではないが、心にしみるおいしさってあるじゃないですか。それです。

歯ごたえのある食感でかみしめるたびに脂がにじみ出る。さらにかかっているみそだれが肉のおいしさを引き立てる。ビールが飲みたい。

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おすすめのお店に行く

日もだいぶ暮れてきた。そこで伊藤さんがおすすめの「酔笑苑」に向かった。実はこの店、かつてデイリーでも訪れたお店である。詳細は「シロコロを食べにロマンスカーで」にて。

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開店から1時間後ぐらいに訪れたが外には並んでいるお客さんがいる。

店内は満員でほろ酔いな人たちのにぎやかな声がBGM代わりだ。ぎゅうぎゅうになりながら座る。

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「シロコロ」を注文するがすでに売り切れていた。無念。

シロコロホルモンは開店と同時に並ばないと食べられないほどの人気商品。注文したときにはすでに売り切れてしまっていた。残念ではあるが、せっかく来たのでホルモンの盛り合わせをもらう。

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ここでは味付けは自分でおこなう。こんなシステムを取り入れている店、おいしいに決まっている。
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ホルモンたちが焼き上がった。

プリップリである。弾力のホルモンが口の中ではじける。隣の人に「うまそうに食べるね」と声をかけられた。「シロコロホルモンを食べに来たんですけど売り切れてしまっていて」と答えると、「ここのシロコロホルモン食べたら他のお店のは食べられないよ」と教えてもらった。もう、絶対食べに来たい。

ホルモンの魅力も聞いてみた。「どこの部位かわからないけど、食感が違うでしょ。どこの部位なのかを考えたり、食感の違いを味わうのが魅力」

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その後、アミレバ(レバーを網状の脂で包んだもの)も食べた。作った人と友達になりたいぐらいおいしい。
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焼肉屋のチャーシュー麺。

ラーメンを埋め尽くすほど大きくて、ぶ厚いチャーシューが3枚も。かぶりつくと肉汁があふれてくる。スープも昔ながらのしょうゆ味でさっぱりしていながらも肉のからの出汁でコクとうま味がすごい。半ラーメンもあるのでシメにぴったりだ。これだけでも食べに来たい。

余談だが、近くの席に付き合いたてと思われる、初々しくて、敬語で話し合う20代後半のカップルがいた。「婚活サイトとかで知り合ったんですか?」とニヤニヤしながら声をかけそうになったが我慢した。心のキュンキュンが止まらなかった。

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続いても伊藤さんが紹介してくれたお店「大ちゃん」。店構えからうまさが漏れ出ている。

ここも満員である。活気あふれる店内には食欲をそそる煙が漂っていた。

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ホルモンの魅力に安さもある。先ほどまで食べていたおじさん3人組は合計で5000円ぐらいだった。
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カリカリとした部分とプリっとした食感の違いがおいしい。

ちなみにシロコロホルモンはみそだれが主流である。みそが豚の臭みを消すなどの役割もあるが、淡泊な味のシロコロには濃いみそ味が合うのだ。

そして、みそだれはお店ごとに味の違いがあり、配合や素材にオリジナリティーがある。

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大ちゃんのみそだれは辛味が効いていて個人的に好きな味だ。
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グランプリを取ったお店で歴史を聞く

最後に訪れたのは、千代乃。先ほどの厚木バーガーのお店へ向かう際に見つけたお店。偶然見つけた。

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店構えが派手で、観光向けのお店かなと思っていたが、
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なんと、B-1グランプリで優勝したお店だった。

千代乃は2008年に行われたB-1グランプリで優勝した際に出店しており、そこから人気となり、芸能人なども多く来店するお店となった。そんな名誉あるお店だとは。おいしいお店を探し出す嗅覚が目覚め始めた。

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もちろん注文するのはシロコロである。しかし、メニュー表には気になる文字が。
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シロコロのチャーシュー? わけがわからないのでとりあえず頼んだ。

お店の方に聞いてみたところ「お店のオリジナルメニューで、見た目がよくないけどおいしいんだよ」と言うので頼む。しばらくすると来た。

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最初、いかめしが来たのかと思った。
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断面はチャーシューである。

見た目は確かに深海にいそうな外見だが、食べると甘辛い照り焼きのような味でシロコロのうまみがぎゅっと詰まった一品だ。ビールはもちろん、焼酎にも合いそう。

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主役の登場。どこよりも大きく、プルプルだ。

歯ごたえと柔らかさのバランス、かむとあふれる脂の甘さ、みそだれのコクと濃厚な味、全てが合わさってそれはもう白飯を頼むしかなかった。さすがグランプリで優勝したお店だ。

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左のみそだれは、ここに来た大学生がこのタレだけでご飯を3杯食べたらしい。土地に伝わる伝説みたいな話である。

店員のおじさんが「うちは本物だからうまいでしょ?」といいながら、焼いてくれるなど気遣ってくれる。話を聞いてみた。

――元々、シロコロホルモンとして出していたんですか?

「元々はシロで出していたが、有名になってからわかりやすいようにシロコロホルモンとして名前を変えんだよ。そしたら、他でもシロコロホルモンって出すお店が増えたよね」

――有名になったとき町はどんな感じでしたか?

「テレビとかで紹介されたのもあって、お店にはドカッとお客さんが来ましたよ。グランプリで優勝した直後ぐらいには、市内に50店舗ほどシロコロホルモンを提供するお店があったね。品質として、良くないものや名前だけシロコロと名乗った偽物が出回ったこともあるが、やっぱりお客さんが入らなくて潰れたお店もあったみたい」

「今は地元に根付いた名物として落ち着いた。遠くから食べに来てくれる人もいてありがたいよ。また来てよ」

どこのお店もそれぞれの特色があるが、地元の人たちに愛されるお店であった。将来、「どんな人間になりたいですか?」と聞かれたら、「噛めば噛むほど味が出て、みそだれのような自分の持ち味を持っており、長い間、人々に愛されるシロコロホルモンみたいな人になりたいと思ってます」と答えよう。

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かみすぎて左奥歯が痛くなったので帰ります。

昔からある名物はおいしい

自分たちは特別だと思っていなかったものが突然、人気の名物になった。人気はあればいつか廃れることもあるが、シロコロホルモンは色あせることない。地元に根付いた名物は強いなと感じた。
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情報と共にむちゃぶりもあった。

 

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