昔からある名物はおいしい
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「シロコロホルモン」を知っているだろうか。神奈川県厚木市から生まれたB級グルメだ。
B-1グランプリという各地方のご当地グルメの大会で優勝した人気グルメだが、個人的に食べたことないかもしれない。今、シロコロホルモンと向き合うために、厚木へ行った。
今回、昔からあるものなのかを聞くため、厚木市出身のライター伊藤さんに話を聞いた。
――元々、シロコロホルモンって有名だったんですか?
「あくまで私個人の感覚ですが、B-1で優勝して有名になるまでシロコロホルモンていう呼称は地元でも全然使われてなかったです。コロッとしたホルモンはあったんだけどシロコロホルモンという名前で売り出したのはやっぱ2000年以降とかじゃないかなあと。有名になってから『あ、あれ厚木ならではだったの?』みたいな感じです」
地元の人もなんかコロっとしてホルモンがあるなとは思っていたが、「シロコロホルモン」として認知したのは、2000年以降の感覚だそうだ。
また、厚木は養豚が盛んな土地のせいか、他の地域とは違った風景がスーパーにあった。
ミミガーは見たことがあるが、ハツ、コブクロなどのホルモンも置いてある。自分の近所を見たらこてっちゃんしかなかった。こてっちゃんもおいしいですね。
また、厚木にはシロコロホルモンが生まれ出る前からある名物があるらしい。
「元々、豚肉を使った名物はあって「とん漬」なんかはもっとトラディショナルな豚みやげでしたね」
人類の歴史でみそ漬けにされてまずかったものなどない。絶対においしい。フライパンで焼いてみる。本当はアルミやクッキングシートを敷いたほうがいいらしいが、家になかったのでそのまま焼いた。
みその甘く、香ばしい匂いが部屋に漂う。そういうアロマテラピーやってほしい。
味はみその奥深い味と肩ロースのほどよい脂が連絡網を作って伝えたいぐらいおいしい。
また、とん漬をもっとお手軽に食べてもらおうと地元の人が協力した名物、厚木バーガーも存在する。色々なお店で提供しているのだ。
とん漬のみそに、パンに塗られたマヨネーズ。見た目は洋風だが、味は和風テイストだ。こってりとコクがある風味にキャベツのシャキシャキ感が口の中をさっぱりさせる。それはもう間違いないおいしさだ。(ちなみに伊藤さんはマヨネーズが嫌いなので食べたことがないそうです。)
――シロコロは昔からよく食べるものでしたか?
「いや、うちはそんなに食べませんでした。22~23年前はどこでも出してなかったような気がします」
「焼肉屋で働いた友人にも聞いてみましたが、当時は「シロコロホルモン」というメニューはなく、裏メニューにもありませんでした。厚木のホルモンが特別だ、みたいな話も特に出ていなかったみたいです。飲食店のメニューに載り出したのはBー1で脚光を浴びてからですね」
「豚が身近にいるせいか、他の地域よりも豚の色々な部位を食べるかもしれない」、「シロコロホルモンは有名になってから厚木市内でも多く見かけるようになった」、「シロという部位はあったかもしれない」などほぼ伊藤さんとほぼ同じ証言が出てきた。
知名度が上がったこと見かけるようになったシロコロホルモンだが、どんなものかを確認してみよう。伊藤さんにおすすめしてもらったお店がまだ開いていなかったので、歩いて見かけたお店に入ってみる。
シロは豚の大腸の部位で10グラムぐらいしか取れない貴重な部位だが、そのまま食べるとくさい。そこで臭みを取るために裏返して洗うそうだ。
裏返えして洗ったシロは、焼くと丸くなり、焦げないように網の上でコロコロさせる様子からことから地元の人がシロコロホルモンと名付けた。
「脳を揺さぶれるおいしさ!」というわけではないが、心にしみるおいしさってあるじゃないですか。それです。
歯ごたえのある食感でかみしめるたびに脂がにじみ出る。さらにかかっているみそだれが肉のおいしさを引き立てる。ビールが飲みたい。
日もだいぶ暮れてきた。そこで伊藤さんがおすすめの「酔笑苑」に向かった。実はこの店、かつてデイリーでも訪れたお店である。詳細は「シロコロを食べにロマンスカーで」にて。
店内は満員でほろ酔いな人たちのにぎやかな声がBGM代わりだ。ぎゅうぎゅうになりながら座る。
シロコロホルモンは開店と同時に並ばないと食べられないほどの人気商品。注文したときにはすでに売り切れてしまっていた。残念ではあるが、せっかく来たのでホルモンの盛り合わせをもらう。
プリップリである。弾力のホルモンが口の中ではじける。隣の人に「うまそうに食べるね」と声をかけられた。「シロコロホルモンを食べに来たんですけど売り切れてしまっていて」と答えると、「ここのシロコロホルモン食べたら他のお店のは食べられないよ」と教えてもらった。もう、絶対食べに来たい。
ホルモンの魅力も聞いてみた。「どこの部位かわからないけど、食感が違うでしょ。どこの部位なのかを考えたり、食感の違いを味わうのが魅力」
ラーメンを埋め尽くすほど大きくて、ぶ厚いチャーシューが3枚も。かぶりつくと肉汁があふれてくる。スープも昔ながらのしょうゆ味でさっぱりしていながらも肉のからの出汁でコクとうま味がすごい。半ラーメンもあるのでシメにぴったりだ。これだけでも食べに来たい。
余談だが、近くの席に付き合いたてと思われる、初々しくて、敬語で話し合う20代後半のカップルがいた。「婚活サイトとかで知り合ったんですか?」とニヤニヤしながら声をかけそうになったが我慢した。心のキュンキュンが止まらなかった。
ここも満員である。活気あふれる店内には食欲をそそる煙が漂っていた。
ちなみにシロコロホルモンはみそだれが主流である。みそが豚の臭みを消すなどの役割もあるが、淡泊な味のシロコロには濃いみそ味が合うのだ。
そして、みそだれはお店ごとに味の違いがあり、配合や素材にオリジナリティーがある。
最後に訪れたのは、千代乃。先ほどの厚木バーガーのお店へ向かう際に見つけたお店。偶然見つけた。
千代乃は2008年に行われたB-1グランプリで優勝した際に出店しており、そこから人気となり、芸能人なども多く来店するお店となった。そんな名誉あるお店だとは。おいしいお店を探し出す嗅覚が目覚め始めた。
お店の方に聞いてみたところ「お店のオリジナルメニューで、見た目がよくないけどおいしいんだよ」と言うので頼む。しばらくすると来た。
見た目は確かに深海にいそうな外見だが、食べると甘辛い照り焼きのような味でシロコロのうまみがぎゅっと詰まった一品だ。ビールはもちろん、焼酎にも合いそう。
歯ごたえと柔らかさのバランス、かむとあふれる脂の甘さ、みそだれのコクと濃厚な味、全てが合わさってそれはもう白飯を頼むしかなかった。さすがグランプリで優勝したお店だ。
店員のおじさんが「うちは本物だからうまいでしょ?」といいながら、焼いてくれるなど気遣ってくれる。話を聞いてみた。
――元々、シロコロホルモンとして出していたんですか?
「元々はシロで出していたが、有名になってからわかりやすいようにシロコロホルモンとして名前を変えんだよ。そしたら、他でもシロコロホルモンって出すお店が増えたよね」
――有名になったとき町はどんな感じでしたか?
「テレビとかで紹介されたのもあって、お店にはドカッとお客さんが来ましたよ。グランプリで優勝した直後ぐらいには、市内に50店舗ほどシロコロホルモンを提供するお店があったね。品質として、良くないものや名前だけシロコロと名乗った偽物が出回ったこともあるが、やっぱりお客さんが入らなくて潰れたお店もあったみたい」
「今は地元に根付いた名物として落ち着いた。遠くから食べに来てくれる人もいてありがたいよ。また来てよ」
どこのお店もそれぞれの特色があるが、地元の人たちに愛されるお店であった。将来、「どんな人間になりたいですか?」と聞かれたら、「噛めば噛むほど味が出て、みそだれのような自分の持ち味を持っており、長い間、人々に愛されるシロコロホルモンみたいな人になりたいと思ってます」と答えよう。
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