特集 2025年11月29日

皮のない柚子をもらったのでポン酢醤油を作ってみた

ポン酢醤油を作ってみました。

皮のない柚子(ミステリー小説のタイトルみたいですね)をたくさんもらったので、ポン酢醤油と種を使った醤油ジュレを作ってみた。

手前味噌ながらなかなかおいしくできたのだが、市販のぽん酢醤油に比べると合わせる食材のストライクゾーンが狭く、それがとてもおもしろかった。

趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

前の記事:香川県でさぬきうどんを食べ歩く2泊3日14杯の旅

> 個人サイト >私的標本 >趣味の製麺 >ライターwiki

皮のない柚子をもらった

お世話になっている神戸の書店が、東京で出張イベントをやるというので訪ねたところ、その会場のオーナーがイベントとは関係なく、カウンターの中で延々とまだ青い柑橘類の皮を包丁で薄く剥いていた。

「これは柚子胡椒の仕込み。無農薬の柚子を送ってもらって毎年作っているの。去年のがまだあるから、ちょっと食べてみる?」

柚子胡椒とは柚子の皮と唐辛子と塩を混ぜて熟成させたものだ。味噌の試食コーナーのように渡された爪楊枝の先には、ちょっと黄色っぽい柚子胡椒がついていた。今剥いているような青柚子ではなく、黄色く熟した柚子で作ったもだろうか。

一年間寝かせた自家製柚子胡椒は、唐辛子の辛さが控えめで、爽やかでまろやかな刺激が上品に広がった。これだけで酒が飲めるというやつだ。買えるものなら買って帰りたいくらい。

002.jpg
すごくうまい。私も前に作ったことがあるけれど、唐辛子を入れ過ぎてしまって結局あまり使わなかったのだが、次はこれを目指してみよう。

「この柚子胡椒はあげられないんだけど、よかったらこっちを持って帰って」

帰り際に渡されたのは、皮を剥かれた青柚子の残りだった。柚子胡椒に使うのは皮の部分だけなので、どうしても中身が余ってしまうらしい。もうすぐ黄色くなった柚子も届くそうで、お店で使うにしても多すぎるとのこと。

003.jpg
柚子胡椒に使うのは柚子の皮だけなので、残りはこうなる。

「これだけあればポン酢が作り放題じゃないですか!」と喜んでいたら、「でも種が多くて絞ると意外と少ないから」と、もう一袋もらった。

両手にずっしり。田舎暮らしをしている人が、近所の農家からもらう量である。

004.jpg
ガチャガチャを大人買いした人みたいだ。
いったん広告です

青柚子を絞る

帰りの電車の中、膝の上に抱えた重くなった鞄から、青柚子の香りがほんのりと漂っていて、なんだか誇らしかった。これでポン酢をたっぷりと作ろう。ところでポン酢のポンってなんだっけ。

気になったのでスマホで調べてみると、かんきつ類を表すオランダ語のポンス(pons)が由来だとミツカンのサイト(こちら)に書いてあった。

じゃあポンジュースもそうなのかと確認すると、日本一(ニッポンイチ)のジュースになるようにという願いを込めて名付けられたのだとか(こちら)。

ついでに確認したポンデリングのポンはポルトガル語でパンだった。世の中にはいろいろなポンがある。

005.jpg
小さめの猫一匹くらいあるな。

いただいた青柚子は全部で3.8キロもあったが、包丁で切ってみると、確かに種がたくさん入っていた。バファリンにおけるやさしさ(胃の負担を減らす成分らしい)くらい種が多い。

ここからどれほどの果汁が得られるのだろうかと心配しつつ、握力がなくなるほど絞り続けたところ、総重量の約1/5、800グラムになった。

たったこれだけかと思ったが、こんなにポン酢を使うだろうかとも思う。

006.jpg
種が多い品種のようだ。
007.jpg
柚子を押しつぶして、はみ出た部分を金ザルでこすって限界まで果汁を絞る。
008.jpg
柚子100%ジュース。ちょっと飲んでみたら強烈に酸っぱかった。
いったん広告です

ポン酢を仕込む

さて本来のポン酢は柑橘の果汁に酢を合わせたもので、そこに醤油や出汁と甘みを加えたものがポン酢醤油。ミツカンの商品名で言うところの『ぽん酢』と『味ぽん』の関係だ。

知識としては知っていても、実際は後者をポン酢と呼ぶことが多いのではないだろうか。「鍋をやるからポン酢買ってきて」と言われて、醤油の入っていないほうを「これが本当のポン酢だから」と買っていったら「面倒臭い人」と思われそうである。

ということで、今回作るのはポン酢醤油のほうだ。柚子果汁800:醤油800:味醂100の割合で混ぜて、昆布と鰹節をたっぷりと入れる。この配合だとかなり甘さ控えめになりそうだが、せっかく手作りするなら個性的に仕上げたい。

これを冷蔵庫で寝かせて出汁の成分を移す。ポン酢醤油は仕込んですぐには食べられないのだ。

009.jpg
ガラス瓶に果汁、醤油、味醂を入れて、そこに昆布と鰹節を加えて冷蔵庫で寝かせる。

大量に残された種は、醤油につけてみることにした。

種に含まれるペクチンの力で、ドロッとした醤油ジュレになるのだとか。

010.jpg
種の割合が多すぎるような気もするが、種がたっぷりあるから仕方がない。
011.jpg
たくさんできてしまった。
012.jpg
柚子の搾りカスは凍らせておき、焼酎と炭酸で柚子カスサワーで楽しんだ。カスとはいえ多く入れ過ぎると舌が溶けるかと思う程濃くなるので、柚子は1つ分くらいで十分。
いったん広告です

フレッシュな自家製ポン酢醤油がうまい

ポン酢醤油を仕込んで20日後、そろそろいいかなと濾して鰹節と昆布を取り除き、空き容器に移す。

ちょうど使い終わった市販のぽん酢醤油の容器を使ったら、使いやすいけど手作り感のない姿になった。なんだかありがたみが薄い。蓋が黄色いから醤油やめんつゆと間違えなくていいんだけど。

013.jpg
わかりにくいけど手作りです。

小皿に出して舐めてみると、これがしっかりと酸っぱい。醤油の塩味より柚子の酸味が圧倒的に立った味で、口に入れた瞬間から後味までずっとキリっとしている。どこまでも硬派だ。

それなりに出汁が入っているおかげで、「柑橘果汁と醤油を合わせたもの」から一段階深い味にまとまっている。もっと多くてもよかったか。

甘味はほぼ感じないけれど、必要なら後で足せばいい。これはかなり良いものができたのでは。

014.jpg
美しいでしょう。

これをさらに数カ月寝かせてようやく完成となるのだが、せっかくだからこのフレッシュな味も楽しんでおこう。一年以内に使い切りたいし。

酸味の立った作りたてのポン酢醤油を焼肉と合わせてみたところ、脂多めの肉をすっきりと食べさせてくれた。

015.jpg
少しだけタレを纏わせて焼いた牛肉をポン酢醤油でいただく。
016.jpg
10代、20代ではわからない良さがポン酢醤油にはある。

⏩ ポン酢醤油をいろいろ試す

▽デイリーポータルZトップへ つぎへ>

記事が面白かったら、ぜひライターに感想をお送りください

デイリーポータルZ 感想・応援フォーム

katteyokatta_20250314.jpg

> デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」が届きます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ