3秒目を離すと、そこにはカラの皿と、一回り大きくなった江ノ島さんの姿があった
やっぱり誰かがたくさん食べる姿を見るのはいいものだった。世界の富豪は全員江ノ島さんにスパゲティをご馳走するのがいいと思う。
人がたらふく食べる姿というのは気持ちが良いものだ。
夏休み、かわいい孫が遊びに来たおじいちゃんとおばあちゃんは往々にして食べきれないほどの料理を振る舞うだろう。それはきっと孫たちがたくさん食べる姿を見ていたいからだ。
カロリミットのCMでも「いっぱい食べる君が好き」と歌われていた。みんな食べる人を見るのが好きなのだ。
いっぱい食べる人が気持ちよく食べる様子を見にいこう。
※編集部より
この記事はデイリーポータルZの運営元であるイッツコムのサービスエリア、東急沿線の魅力を紹介する記事です。本当です。
さて、この記事は下のインタビュー内で突然決まった企画である。
江ノ島さんが感激してDMを送った〜北向ハナウタさんインタビュー
当サイトのライターである江ノ島さんと筆者・北向ハナウタがお互いの撮影に同行して書き合う謎の企画。今回は第2弾だ。
江ノ島さんといえばツヤツヤたらふくとご飯を食べる様子で右に出るものはいないとも言われるライターであり、当サイトでも『おれは○○なら無限に食べられる』シリーズを連載している。
そりゃあもう、ご飯を思う存分食べてほしい、そう思ったのだ。
さあさ、ここから先は筆者もひとりの観客のつもりだ。今回はスパゲティを食べたいのだという。いっぱい食べてる様子、生で見せてもらうぞ!
今回は2軒の店を巡る。まず最初に彼に案内され連れて行かれたのは東急東横線、中目黒駅。ここに大盛りのスパゲティを出す店があるという。
やる気だ。そのぶん回した左腕でスパゲティの器を力強く抑えてくれるのだろう。
店内は中目黒らしい落ち着いた雰囲気。
この店は普通サイズが300g。この時点でかなり多いよな、おれ食えるだろうか。江ノ島さんはダブル(600g)を食べるという。
醤油やら塩やら味噌やら、和風の味付けが多いのも店の特徴だ。美味しそうだなー、江ノ島さん、どうします?
「塩バジリコ」と「カレーミート」で決めかねているらしい。どうなんだろう、大量に食べるのなら塩バジリコのほうがいくらか食べやすそうな気はするけど。
江ノ島:よし、塩バジリコにします
北向:おー。悩んでたのは、大盛りになったときの食べやすさとかを考慮してですか?
江ノ島:いや、単純に味で悩んでました
食いしん坊だった。おれは「たらこクリーム」にします。店員さんを呼ぼう。
江ノ島:すみませーん
店員さん:はい、お伺いします
江ノ島:あの、人気メニューってどれですか
店員さん:うちはナポリタンですね
江ノ島:あー……塩バジリコで
北向:無視だ
北向:なんでさっき人気メニュー聞いたんですか
江ノ島:(店員さんと)合うかなーと思って。選択を後押しするかなーと
そういえば江ノ島さんとご飯食べる時に店の人気メニューを聞いている姿をよく見かける。あれは取材的な意味合いがあるのかと思ったけど、背中を押してほしかっただけだったのか。
江ノ島:カレーミート美味しそうだったなー
あと、黒酢ドリンク的なものを頼んでました。
ご飯が届くまで落ち着かないみたいです。早く来るといいな。
パスタの1人前といえばだいたい100gだろう。100gは少し足りないなー、と思うときもあるけれど、それにしたって6人前だ。
さあさっそく食べよう。
それは美味しいリアクション!?熱いリアクション!?
熱かったみたいだ!
北向:味はどうですか
江ノ島:麺がすっごいもちもちしていて美味しいです
北向:けっこう歯ごたえありますよね、アルデンテ的な
江ノ島:鷹の爪の辛さとバジルの風味、具材はナポリタンっぽいんですよ。…実家で作った味
江ノ島さんのいう「実家の味」は最大限の褒め言葉として捉えていい。江ノ島さんのお母さんは料理が得意なのだ。
食事の後半では「味をハーフ&ハーフにしたい」という話をしていた。大食いはいつでも”味の飽き”との戦いのようだ。確かに同じ味を大量に摂取するのは大変よなあ。
けっこう上からかけるんだな。
江ノ島:…それ(筆者のたらこクリーム)、食べきれます?
北向:あ、ギリいけるとは思いますけど
江ノ島:ならいいんですけど
江ノ島:めちゃくちゃ美味しいですね!!
北向:よかった〜
江ノ島:好きな味だなー
北向:塩バジリコも完食できそうですか
江ノ島:いけます。怖いな…
北向:これを食べきれてしまう自分が怖い?
江ノ島:怖いですね
天才の苦悩みたいだ。
やっぱり、人がたくさん食べる様子を見るのは気持ちがいいものだ。富豪が苦学生にご飯を山盛りおごりたくなるのもわかる。
そして江ノ島さんは特に苦しそうな様子もなくおいしそうに食べるのがいい。
15分ほどでたいらげたが、終盤はなかなかお腹に溜まったようだ。
北向:スパゲティ600g(+たらこクリーム)どうでした
江ノ島:これはね、なめてかかったら良くないですね
江ノ島さん曰く、スパゲティは「しっかり噛まなくてはいけない」のが満腹感につながるのだそうだ。そういった意味で今まで食べた大盛りチャーハンなどとは勝手が違うらしい。
側から見るとかなりスムーズに食べていたようにみえたけど。
あの死闘から1ヶ月(ゆっくり取材してました)。江ノ島さんに呼び出されて東急大井町線の大井町駅に来た。
なんでも是非食べたい大盛りスパゲティがあると言うのだ。
江ノ島さんは”仕上げるため”に集合前に銭湯に入ってきたとのこと。そうだ。この人は本気のときは銭湯に入るんだった。肌もツヤツヤである。
駅から徒歩8分ほど、案内されたのはハピネスという洋食屋。来年で創業50年をむかえる老舗だ。こちらもまた良い雰囲気である。
この店に決めた理由が、ここの名物・カレースパゲティである。このあいだの店でも最後までカレーミートにするか迷ってましたもんね。
江ノ島:ハムエッグが超うまそう。ハムエッグが超うまそう
北向:2回言った。さすがに今回はカレースパゲティ食べますよ
目移りする気持ちもわかる、それだけメニューが(特に主食が)豊富なのだ。1週間毎日この店でも飽きないなと思う。
江ノ島:単純にカレー好きなんですよ
北向:はいはい
江ノ島:スパゲティも好きなんですよ
北向:うん
江ノ島:食べたいな、というのがありますね
食べたいな、というのがあるようだ。
ほどなくしてスパゲティが到着。大盛りはやっていないとのことでこれが普通サイズだ。江ノ島さんの目測では300g程度ではないかとのこと。
前回の店の塩バジリコダブルより量は少ないけれど、江ノ島さんが食べたいものを食べるのが一番だ。大切なのはおいしいものを食べること。
江ノ島:カレーがうまい、カレーがすごくうまい…めちゃくちゃうまい
本当においしいのだろうな。しゃべる文字数のわりに全然情報が増えないけど、とにかくカレーがおいしいのだろうなということが声色から伝わってくる。
北向:カレーは辛いんですか?
江ノ島:辛くないんです。家のカレーみたいな味
補足すると、江ノ島さんのいう「家のカレー」は最上級の賛辞だ。
江ノ島:あー、これはうまい
北向:情報が増えないな
まだ筆者のカレースパゲティが届かない、はやく食べたい。
江ノ島さん、よく食べ物を熱がっているよなと思ったけど、口に入れるペースが早いからなのだろうな。
前に彼が「ラーメンよりもつけ麺が好き。早く食べられるから」と話していて、当時はよくわからなかったけど今ならわかる。この人は目の前の美味しいものを一秒でも早く体内に取り込みたいんだ。
江ノ島:たぶん麺が茹で置きされているんですよ。やわらかい
北向:へ〜。そうか、ナポリタンみたいな感じですね
しばらく江ノ島専属カメラマンとなっていた筆者のもとにもカレースパゲティが届いた。
わー、デミグラスのような甘みのあるカレーが確かにおいしい。だしの効いた”そば屋のカレー”というジャンルがあるように、”洋食屋のカレー”というジャンルもあるよなと思う。
いや、今日はそんな感想は良くて、
江ノ島:いま、4合目くらいです
北向:余裕の感じでしたね
きれいに皿の端まで余すことなく食べきるところも江ノ島さんのいいところだ。しかしこの量だったら本当にあっという間なんだな。いいものを見させてもら…
2杯目だ。そういうのってあるんだ。
北向:ナポリタンも結構ボリュームあるけどいけますかね
江ノ島:いけるかじゃないんですよ、行くしかないんですよ
格好いい。
もう、「ゆっくり食べた方がいいんじゃ」なんて言うまい。江ノ島さんの食べたいスピードで食べるのがいいんだ。
江ノ島:あ、うまい!ナポリタンが一番うまいわ
北向:お〜。一番うまいって、スパゲティの中でということですか。この店の中でということですか
江ノ島:いや、何との比較とかじゃないです
わからないけど、とにかく一番です。
よく食べました。 はー、いいもの見た。
やっぱり誰かがたくさん食べる姿を見るのはいいものだった。世界の富豪は全員江ノ島さんにスパゲティをご馳走するのがいいと思う。
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