特集 2023年9月19日

佐世保の重要文化財、針尾無線塔がフェス会場みたいになって興奮した日

佐世保の重要文化財「針尾無線塔」は1922(大正11)年に旧日本海軍によって建設されたコンクリート造で高さ136mの超巨大電波塔だ。

昨年には建設100周年を迎え、NHK総合土曜ドラマ『17才の帝国』の舞台になるなど全国的な認知度も徐々に上がっている。

先日、2日間限定で塔の基礎部分が公開された。この先あるかないかの貴重なシーンを一目見ようと2,650人が訪れ、ちょっとしたフェスティバルの様相となった。

わたしも家族と一緒に和気あいあいとお邪魔してきたので、その様子をお伝えしたい。

1986年生まれ佐世保在住ライター。おもに地元の文化や歴史、老舗や人物などについての取材撮影執筆、紙媒体のお手伝いなど。演劇するのも観るのも好き。猫とトムヤンクンも好きです。

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長崎県佐世保市の重要文化財「針尾無線塔」とは

針尾無線塔(※正式には「旧佐世保無線電信所(針尾送信所)施設」)は、1922(大正11)年に旧日本海軍によって155万円(現在の約250億円)の費用と4年の歳月を投じて建てられた。

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てっぺんまで見上げようとすると首が痛くなるほどでかい
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針尾町の景色ではおなじみの光景である

3本の塔はどれも136mで、300mの間隔を置いて三角形に配置されている。

1941(昭和16)年12月8日に、太平洋戦争の口火を切ったとされる“ニイヤマタカノボレ”の暗号文はここでも中継された……のではないか、と言われている。しかしながら発信、送信に関する資料はないそうだ。

終戦後はGHQに接収、その後は海上保安庁が使用し海上自衛隊も共同で使用、1997(平成9)年に無線塔と電信室ともにその役割を終えた。

天空に向けそそり立つインパクト大なビジュアルは、SF的な異様さとカッコよさ、同時に戦争の歴史の重みをずしりと感じさせてくれるのだ。

ちなみにここは針尾地区で暮らす少年少女たちの遊び場にもなっており、塔の頂上で度胸試しが行なわれることもあった。

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頂上の「かんざし」で胡坐をかいて座る男子学生。「前略、136mの塔の上より~針尾無線塔とともに暮らす男たち」より

2013(平成25)年に国重要文化財に指定されたことを機に施設の一部公開がスタート。

令和2年に至るまで各種ガイダンス整備(駐車場、側溝、案内板や復元建物建設、Wi-Fi)を進めてきた佐世保市が次なるステージに進んだのが保存調査だ。

現況撮影・各種図面作成・耐震診断などを行う予定らしい。

人間でいうところの健康診断だ。「100歳になったし、そろそろ体のこと考えなきゃね」ということである。

そんな保存調査の一環として、1号無線塔の基礎の形状を確認するために深さ6mまで掘削した礎を特別に公開することとなった。

“—灰塔の礎 出現—”のフレーズとともに突如佐世保市のSNSに現れた告知は、市民のTLやメディアをざわつかせたのだった。

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尖ったキャッチフレーズと迫力満点な画像が好奇心をくすぐった
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初日で1,300人が来場。文化財に車の列ができて大興奮

礎の公開は2日間限定とあって、初日は1,300人の見学者が訪れたそうだ。

昼過ぎ頃、わたしのTLにも「めっちゃ並んでる」の知らせが立て続けに入り、翌日は早めに出ないとなとそわそわしていた。

そして2日目の当日、朝10時過ぎには現地に到着したのだが1号塔の前には人の列がずらりと並んでおり「おぉー」と声が出る。大型商業施設の観覧車が見えた時と同じテンションだった。

普段停めないところに誘導してもらい、なんとか駐車して降りた。無線塔を見上げるより先に、これまで見たことのない目の前の光景をぼーっと眺めてしまった。とにかく人が多いのだ。

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小走りしたくなる気持ちを抑えつつ
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こんなに車が停まっているの、見たことが無かった

これは、ちょっとしたフェスじゃないか。うれしくて顔が勝手ににやけた。

10年前はきっと「おれ、図体だけデカくて地味だから…」とか言っていたかもしれない無線塔に「よかったじゃん!」と、肘でつつきたい。文化財に対し、気分は勝手ながら幼馴染である。

道すがら、以前取材したレジェンド(少年時代、無線塔の頂上まで昇ったことがある人)にお会いしたのでご挨拶がてらお話した。

「沢山の人たちに来てもらって本当に嬉しいよね。針尾無線塔は私たちの誇りですよ」の言葉に胸がじんとして、にやけていた口元がきゅっとなった。

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御年80歳(には見えない!)田平さんは、針尾無線塔保存会の会長さんだ。夫婦でボランティアガイドをしている。

1号塔へ続く人の数はざっと100名ほど。「25名ずつ説明を行ないますので、並んでお待ちください」と市教委文化財課の職員さんがマイク越しに呼びかけている。

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職員さんから資料を手渡される。この日は地元ボランティアの方々に加え、10名ほどが出動したらしい。本当にお疲れ様です
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白飛びしているが、この先の左手に見えますのが1号塔です
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午前10時過ぎ時点でこんな感じ。周囲の人に対し仲間意識が芽生える

この待ち時間もフェスっぽい。針尾無線塔デザインのタオルを自作して持ってくればよかったなぁと思いながら、人の列を眺める。

さきほど手渡された資料を見ながら「へぇ、そうなんだ」「すごかよね」と話している人たちがいる。

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職員さんの努力が報われているのを感じ目が細まる

たぶん、新聞やニュースで見てなんとなく来た人たちも、何事かが待ち構えている様子に気持ちが高まっているようだ。

15分ほどで塔は目の前に。礎はもう少し先なんだけど、ここで職員さんのガイドが始まった。予想外のサービスだ。

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暑い中ガイドをしてくれた文化財課の松尾さん。長年、針尾無線塔の整備とPRとさまざまな活動をされている。今年のお誕生日は針尾無線塔で迎えたらしい。おめでとうございます。

⏩ 次ページ:いよいよ基礎部分を見学!

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