できるだけ穏やかにレポートします
あのー、筆者の前回の記事はお化粧を体験するという記事でして、性差にふれるから持ち上げられたり炎上したり騒ぎになったらやだなーと「淡々と書く」としたんです。
そして今回、行ったのが10月27日土曜の渋谷のハロウィン。群集が軽トラを倒したとかで話題なんです。思いっきり炎上案件なんですよ。でも行ってる方はそんな軽トラが倒れるとか知らないじゃないですか(泣いてます)。数、数えたかっただけなんですよ。
ただ現地はこんな感じでしたという感じで、できるだけ淡々と書きますので。以降、手記です。
午後8時渋谷センター街にて
渋谷のハチ公前の交差点につくと警察がたくさんいて「立ち止まらないでください」とアナウンスしている。W杯級かそのちょっと手前くらいのおおごと感。
センター街にいくとすでに仮装している人でにぎわっている。道の端で写真撮られてる人にまじって、道行く仮装してる人の数を数えていく。センター街の中でもなかなかにセンターな場所だ。
といってももちろん全員はムリなので、目についた人の仮装が何かを書いていく。そうすると割合くらいはわかるはずだ。最終的に女性410人、男性372人まで数えた。
写真がコミュニケーションのきっかけ
「写真撮っていいすか?」とあちこちで聞こえてくる。かわいい女の子の二人組が人気だ。しかもかわいい女の子の二人組はなぜか複数いる。三人でもなく一人でもない。決まって二人だ。
声をかけてくる男が地味な感じでも国籍がちがってもおじいさんでもOKしている。写真撮る方も楽しそうで動機はよくわからないがよかったよかった。
外国の人が多い
とにかく外国の人が多い。こんなに多いのか。欧米の人が多く、東アジアの人が少ない。ハロウィンになじみがあるからだろうか。そして彼らと話す日本人も多い。こんなにみんな英語を喋れるのか。
「英語しゃべれるの?」「そう、留学してました。また来年から働きに行くんです」という英語が聞こえてくる。英語が喋れる大学生がここに結集してるのではないか。
コミュニケーションがとにかく活発
「おれ、今年こそ地味ハロウィン行きたかったんだよな……知ってる? 地味ハロウィン」と、顔と歯と胸にビカビカと光るLEDをつけた若い男がとなりの彼女に言ってる。派手である。
その彼女は軽いナンパをされていて二人は「彼女さんなんですか? すいません!」と謝られていた。隣にいると胃酸が少し多めに出る状況だ。
写真にしろナンパにしろここはとにかく「よく声をかけあう場」である。もしかしたら登山ってこんな感じなんだろうか。
もちろんこっちが仮装を数えていることもすぐにバレて「何が多いですか?」と隣の人に聞かれる。ここではロッキングチェアに座った調査員でいることは許されない。「警察ですね…」というそっけない返答でわかってくれたのかそれ以上声はかけられなかった。
雑なコスプレが多い
開始30分。ガチャピンにゴリラがくっついた仮装をする人がいる。なんなんだ。ただ青色のアフロの人もいる。これ本当になんなんだ? 頭が疲れる。
仮装モチベーションが低いのかわりとみんなこれぞという仮装をしていない。頭にタコの足を乗せた人をなんの仮装だと言えばいいのだろうか。もっとはっきりしてほしい。
お酒は氷結ストロング
ハッピーハロウィーン!と氷結ストロングのロング缶を持った外国の人が来た。21時、お酒片手の人が増えてきた。大体の人は氷結ストロングを持っている。外国人も大学生くらいの若者も氷結ストロングをよく飲んでいる。ここでは安くて強い酒が人気だ。
だんだん立ち止まる人が増えてきた
21時20分身動きがとれず、立っていてもぎりぎりを人が通る。すごい!という声が上がっては人だかりができ、道が渋滞。人通りはひっきりなしにあるが、ところどころ立ち止まっておしゃべりをする場ができつつある。
人通りはどんどん増えていく。被写体にもっと寄ってくれと指示をしてる報道のカメラマンがいる。ワールドカップの狂騒にどんどん近づいていってる。
会話がナンパに近くなっていく
21時30分、声を掛ける人が多くなってくる。20時頃は写真を撮らせてほしいと声をかけていたが、このあたりから内容が踏み込んでくる。仲良くなりたい男女に隣り合わせる、居心地のわるさといったらない。
小学校のサッカー部の森迫先生は審判はボールが当たっても石と同じ扱いだと説明してくれた。森迫先生が審判をやってくれた日、ボールが森迫先生に当たるたびに「石、石」と声を出してたのを思い出した。
石、石。私は石。森迫先生、なぜか今センター街でその精神が役立ってます。
22時くらいから様子がおかしくなってくる
22時まだまだ混雑している。大きな声が上がって「ファイトだよ、ファイト」と女の子がぼやいている。ケンカが起こったらしい。ふつうに治安が悪いことに驚く。
どこからか低音が…と思ったらラジカセを持ったピエロが歩いている。かなりの低音なのでそれ用に作られたスピーカーなんだろう。
ウォッカをエナジードリンクでその場で割って飲んでいる人たちがいる。なんて体に悪そうなんだ。自分に罰を与えたいのだろうか。彼らが忘れていった酒を酔ったサラリーマングループが持っていった。小さな悪事がはびこっている小ゴッサムシティが出来上がっている。
となりの女性2人組がここに来て薄着になった。なぜだ。着る時間帯だ、風邪をひくぞ。彼女たちはひたすらナンパされていたが突然「楽しいー!」となんのタイミングもなく言い始めた。よくわからないが楽しかったのならなによりだ。
渋谷ハロウィンの女性で一番多いのは警察
開始2時間くらいで疲れてきて数えるペースがガクンと落ちたのでこの辺で先に集計を出そう。
こちらは女性の仮装の数である。1位はなんと警察。420人を調べて39人。13位のSWATはアメリカの警察の特殊機動部隊だ。警察、ミリタリー、SWATを合わせて17%。こんなにも治安よさそうな人たちがいてあの治安である。
上位3つは警察、バニー、ドレス(ただ着飾ったもの)であり8位の魔女まで本来のハロウィンっぽいものは出てこない。動物カチューシャとバニーは「簡単に頭につけるもの」なので合わせるとこちらが一位。
勝手に1位だと思っていたゾンビメイクをしたナースは10人。流行りがあるのだろうか。結果をながめていても「ベタでかわいくなれるやつ」 が人気である。
それも当然だ。おもしろやハロウィンの本来など必要ない。声をかけられやすい服装が重要だからだ。
渋谷ハロウィンの男性で一番多いのはミニオンズ
対して男性372人を調べたところ、1位はなんとミニオンズだった。なぜだ。そんなに人気のキャラクターなんだろうか。そして2位はSWAT。もうさっぱりわからない。私達のなかでアメリカの特殊機動部隊といえば今や渋谷ハロウィンである。
また、女性はディズニーキャラクターが多いのに対し、男性はマーベルコミックスのキャラクターが多い。仮装グッズが充実してるからだろうか。
この辺りの順位は近隣のドン・キホーテの棚に左右されまくっているのではないかという気もしてくる。
また、3人以下の合計が女性17%に比べて男性は32%と跳ね上がる。これは男性の方が「人とかぶらない珍しい仮装をしてくる」割合が多いことを示している。かんたんにいうとウケ狙いで趣向を凝らしてくるのが男が多いのだ。
もちろんここが出会いの場としても機能してるので、求愛行動の一つとしてヒトのオスはおもしろ仮装をしてくるのだ。悲しい!
同じ仮装であることが重要
「ドラえも~ん!!」と呼びかけられた男が「イエー!」と応える。ドラえもんが最も言わなさそうな言葉である。お互いをキャラクター名で呼んで盛り上がって写真を撮るという小さな一連のシステムが出来上がっている。
SPの仮装をした人たちがプーさんのコスプレを護衛していて人だかりができる。(……これどこかで見たことあるな)というノリが多い。ネタが初出であるかどうかはあまり問題ではないようだ。
アラレちゃん3人組がアラレちゃん2人組と出会って盛り上がっていた。マーベルの人たちが集まって写真を撮る。
なるほど、同じコスプレをしているのは悪いことではないのか。かぶって恥ずかしい!ではない、かぶりましたね仲良くなりましょう、なのだろう。考えてみれば渋谷に限らず仮装大会はどこもそうか。
隣には同じ衣装で揃えた5人組の男。「思い出した! 集まって待っとけば勝手に来るから!」と言ってる。去年の教訓を思い出したようだが期せずして渋谷ハロウィンの真髄を見た気がする。バイトの服で揃えてきたグループもあった。ただ人数でインパクトを出すということが重要なようだ。
ミニオンズのコスプレをした2人組が「もう少し増やしたいよな…」と言っていた。やっぱりそうなのか! それでナースゾンビがあんなにいるのか!
文化のちがいも仮装を通じて乗り越える
「バナナ食べる?」と猿の仮装が言って「猿がバナナ…(笑)」「リアルすぎる(笑)」と若い女のゾンビがツボにハマっていた。地味なグループと派手なグループが仮装を通じて会話をしている。目的がある場なので多少の文化の違いは埋まるのだろう。外国人が多いのも文化の埋まり具合が楽しいのだろうか。
ここが死者と生者が入り交じる盆踊りのような境界の場であるような気がしてきた。ヤカラと一般人が混じるという意味で。
だんだんとしんどいノリになっていく
22時40分、会話のナンパ度が高くなってきた。クラブよりもうるさくない分、おしゃべりしやすいのだろう。ウォッ、ウォッ、ウォッ、と歓声が上がる。W杯の渋谷でよく目にするあれだ。肩くんで盛り上がるやつだ。
そういえば現場の音が変わってきた。話し声に大声が多くなってきた。声を張らないと聞こえにくくなってきたのだろうか。ちょっとした居酒屋のようだ。
パリンと音が聞こえて、隣でウォッカの瓶が割れた。みんな怖くないのだろうか。おれは瓶が割れたので怖い。転んだら血だらけだ。
YouTuberののぼりを持って歩く自衛隊風の男に酔っ払いがおれも出してくれ!と絡んでいる。ひどい飲み会の最後の方の地獄っぽさが延々とつづく。
パーティー会場になっていく
23時、帰り方向の人が増えてきた気がするがそれでも新しい人はまだまだ来る。あまり状況が変わらなくなってきたのでドン・キホーテに行ってみる。
一本路地に入ると座卓を置いて飲んでいるグループがいる。そういえばここは全体的に主催者や管理する人がいないパーティー会場という印象。
隣の道路に出ると大きなスピーカーを積んだ車が停まっていて音楽に合わせて何人かが踊っている。センター街は今や外国人が多く来るクラブみたいな感じなので、いよいよ本物に近づいてきた。低音の響く車がとにかく多い。
ドン・キホーテでは仮装グッズが売られている。ゾンビメイクは278円。こんなに安かったのか。そりゃ、ゾンビメイクもつけとくか、となるはずだ。なぜかたくさん見たミニオンズの着ぐるみも発見。ここが発信地か。
24時この感じがダラダラつづきそうなので帰る
24時くらいまでいてみるか、とセンター街のバーガーキングで休憩をしていたら目の前のガラス越しに男がふらふらやってきて口に指を突っ込んで嘔吐しはじめて、隣のテーブルにいた金髪の男たちから悲鳴が上がった。
やがてそこに魔女の宅急便の仮装をした人がなんかやってるなと思ったら、きれいになっていた。魔女はほうきでなくてデッキブラシを持っていた。なんだこれは。この自浄はなんなんだ。ボランティアしてる人がいるのだろうか。さっぱりわからない。
その後終電を越えてもこの状況は変わらなそうなので帰った。ここではホラー映画で最初に殺される人の前フリみたいな狂騒がずっと続いている。
だからナースゾンビがいたのか!
なんで5人同じ格好をしたナースのゾンビがいるのか。なぜ1人しかいないはずのウォーリーが3人いるのか。渋谷のハロウィンを見かけるたびに不思議だったが、中にいるとその理屈はわかってきた。
同じ格好をすることが重要なのだ。かぶることは恥ではなく盛り上がりであるし、声をかけられることにつながる。そしておもしろさよりもかわいらしさやかっこよさである。目的はコミュニケーションにあるのだから。
渋谷ハロウィンを実際に間近で見てみると、外国人の多いクラブみたいな場所(※音楽を目的としないようなとこ)だった。ナースゾンビが生まれる背景がよくわかった反面、ハロウィンってそもそもなんだっけ?という根幹がさらにわからなくなった。
ライターからのお知らせ
炎上するような記事書く一方、フットサルでもやるか、みたいな感じでコントでもやるか、とコントはじめたんですがだんだんおおごとになってきてついに来月の本公演でシティボーイズのきたろうさんが出ることになったんですよ。コント界のトッププレイヤーなのでメッシが来ると思ってください。胃が痛いので太田漢方胃腸薬Ⅱを飲んでます。
明日のアーvol.4『観光』
11/22~25@VACANT(原宿)
出演:
大北栄人(明日のアー主宰)
桑原美穂(左右 Vo.Gt)
7A(モデル・ラジオDJ etc.)
花池洋輝(左右 Vo.Ba.)
張江浩司(ハリエンタル/来来来チーム Dr.)
藤原浩一(デイリーポータルZ 編集部)
宮部純子(俳優・五反田団/青年団)
八木光太郎(俳優・GERO)
吉田靖直(トリプルファイヤー Vo.)
よシまるシン(イラストレーター)
■ゲスト出演:
きたろう(俳優・シティボーイズ)
【チケット発売中】
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