アイスクリーム風フローズンヨーグルトという文化
バニラアイスのような味のフローズンヨーグルト。私がその存在を知ったのは2002年のことだった。突如ひとりでアメリカはニューヨークを旅したときに(!)食べた。
英語がまるでできないため、滞在中は常時及び腰でへこへこ歩いていたニューヨークの街。そこではいたるところでアイスを売っていた。
そのなかに「ヘルシーで太らない」みたいなのをウリにしているソフトクリームをたくさん見かけたのだ。
よくよく説明を見ると、どうも「フローズンヨーグルト」とある。食べてみるとこれが見事にバニラのソフトクリームの味だ。ヨーグルトの味はあまりしない。
なにこれ! と思った。
そんな不思議なバニラの味がするフローズンヨーグルトは、どれもどこか遠くで喉を通りにくいような、草の味のような突っかかりを感じたのである。草ではあるが、まずいわけではなく、なにかクセになる味だった。
調べてみると、80年代にアメリカでその手のフローズンヨーグルトが流行したらしい。2000年代には下火に、ということだったが、当時はまだまだ人気があったように思う。
フローズンヨーグルトは日本にもきていた!
そしてそんなフローズンヨーグルトは日本にも上陸していた。
その名も「I Can't Believe It's Yogurt」。日本でその存在に気づいたときは興奮した。
あの草が、日本にも! と思ったのだ。
撤退してクレープチェーンになっていた
「I Can't Believe It's Yogurt」はその名前のとおり「ヨーグルトとは思えない!」アイスクリームのようなフローズンヨーグルトを売るチェーン店としてアメリカから上陸。
かつては池袋のサンシャインシティの中にあるショッピングモール、アルパに入っていたのを覚えている。
しかし2003年にチェーン全店が閉店され、運営元の会社が現在はクレープのチェーンに事業を変更したそうなのだ。
まだ草の味のフローズンヨーグルトもある?
「I Can't Believe It's Yogurt」はお店だけではなく商品ブランドとしてコンビニなどでカップアイスとしても売っていたと思う。
ハーゲンダッツのような体のカップに入って、売り場もそれこそハーゲンダッツの隣に並んで売られていた。一時は人気があったように思うのだ。
聞くと、事業替えしたあとのクレープ屋チェーンでもフローズンヨーグルトは扱っているらしい。
草じゃないなあ
食べてすぐ「ああ」と思った。すごくさっぱりしていておいしい、これからの季節にぴったりのフローズンヨーグルトだ。
が、これはあれだ。ヨーグルトの、ちゃんと酸っぱいフローズンヨーグルトだ。きちんきちんとしたヨーグルトの味がする。
かつて「I Can't Believe It's Yogurt」で売られていた、「ヨーグルトだなんて信じられない!」というソフトクリームみたいな味ではなかった。
残念だが、「I Can't Believe It's Yogurt」が撤退したということは、そういうことなんだろう。
「Coco Manna」
フルーツミックスアイスクリーム
ブルーベリーミックス
草度:0
カナダ発「ヨーゲンフルーツ」はどうか
横浜ワールドポーターズにはもう1店フローズンヨーグルトを出すお店がある。しかも、こちらは専門店だ。
その名も「ヨーゲンフルーツ」。カナダ発のチェーン店らしく、日本には横浜以外に全国にまばらにフランチャイズ展開しているらしい。
もしかしたら、こっちでは草を出しているかもしれない。
カナダは草か、否か
こちらのフローズンヨーグルトはソフトクリームから搾り出す形式で作っている。私が体験したニューヨークのスタイルと同じだ。期待が持てるが、どうだろう。
あ、クリーミーだ! 口当たりはかなりソフトクリームに近い。これは……、と思っただのが、やはり味は酸味のあるヨーグルトの味だった。惜しい。
惜しいというとなんだか残念みたいですが、当然これはこれでえらい美味しかったんですよ。
はっと思い出したのは、高校生の頃にampmで食べたフローズンヨーグルトだ。そういうのを売っている頃があった。遠い記憶なので曖昧だが、あの味にかなり似ている気がします。
「ヨーゲンフルーツ」
フローズンヨーグルト プレーン
草度:0
本命「ゴールデンスプーン」へ
残念ながら、2軒巡ってまだ草は味わえずだ。
しかし私には1軒、ここなら草の味がするだろいうという押さえの店があった。「ゴールデンスプーン」である。
2008年に南カリフォルニアからやってきたチェーン店の「ゴールデンスプーン」は
「アイスクリーム好きのためのヨーグルト」で「アイスクリームのような味わい」
というのを掲げている。まさに、私が探しているタイプのフローズンヨーグルトを扱っているお店なのだ。なによ、最初からこのお店に行ったらいいじゃないのよ、という話で申し訳ない。
見ればみるほど、思い出のフローズンヨーグルト
行ってみると、商品の提供方法からしてこれまでの2軒とは違った。プレーンのフローズンヨーグルトに後からフルーツを練り込むタイプではなく、色々なフレーバー(私が行った東京駅の店は12種類あった)が、ソフトクリーマーから出てくる仕組みになっている。
各フレーバーはどれもヨーグルトから作られているのだが、「バニラ」や「チョコ」「カフェラテ」などヨーグルトのことは忘れたような展開になっていた。いいぞ! 12種類の中から定番らしい「オールドファッションバニラ」を頼んだ。
きっと、ニューヨークのあの味がよみがえるはずだ(なんだこのかっこいい一文は)。
うまい
ひとことでいうと、すごく美味しいバニラのソフトクリームだった。濃厚でこってりしている。ヨーグルトの影をほとんど感じない味。あれ、草は?
そうだ、あの草の味は、ヨーグルトを感じさせない味に驚いたあと遠くからやってくるのだった。
全力で集中して草が香り始めるのを待つ。しーん。
……私に草の香りが届くことはなかった。
ええっ?! じゃあ、このゴールデンスプーンのフローズンヨーグルトは本当にヨーグルトなのにバニラのソフトクリームだってことか。なんかそれ、すごくないか。
草は、刈り取られてしまったのだろうか。
「ゴールデンスプーン」
オールドファッションバニラ
ジャストチョコレート
草度:0
草よいずこ
今回いろいろと食べて歩くにあたって、フローズンヨーグルトの専門店(というのが、意外にたくさんあるのだ)についてちょっと調べてみた。
これが、どうもどこも苦戦しているようなのだ。
いくつかのチェーンが店舗拡大を掲げて日本に上陸、また日本発でオープンしたにもかかわらず撤退したり閉店したりしていることが分かった。
これ、もしかすると草の味のせいだったんじゃないか。
そもそも本当に草の味がしたかどうかも危なっかしい思い出なのだが、個人的に納得するにはそう考えるしかない。
あの草の味、独特の味で変で面白いなと思ったのだが……。もう、食べられないのだろうか。
イタリアからの刺客
草、草の味。そう思って生きていたところ、友人から情報があった。横浜のみなとみらいのクイーンズスクエア横浜にある「アローズ・パレット」というところのフローズンヨーグルトの味が荒削りでいい、というのだ。
どう荒削りなのか聞くと「うーん、こう、ワイルドというか……」と、どうも気になる。
この「アローズ・パレット」の商品は本場イタリアのヨーグルトジェラート、なんだそうだ。
これまで食べてきたのは北米のチェーンだったが、こんどはヨーロッパ。どうなんだろう。草だろうか。
ちょっとでも草の可能性があるならば、行きます! しかし最初に続いてまた横浜だ。意外にもフローズンヨーグルト激戦区、横浜である。
柱の店
イタリアのヨーグルトジェラートの店。どんなおしゃれなお店だろうと思って行ったら、それは柱であった。
柱に埋まっているのだ。フローズンうんぬんが一瞬どうでもよくなる意外性ある店舗スペース。
メニューは基本的にフローズンヨーグルトにソースやフルーツをトッピングするシンプルなもの。
フレーバーこそプレーンしかないが、ソフトクリーマーから出す方式のようなので期待は持てる。
あっ! これは!
一口食べて、美味しさにハッとなった。ヨーグルトの味である。酸味あるおなじみのあの味だ。けれど相当にクリーミーでふわっとしている。
そして、遠くからそれはぼんやりとやってきた。
草……? いや、違う……。これは……? この景色は……?
……山菜?
クリーミーな食感のあとに喉の奥に感じたのは、草っぽい青さというよりどこか山菜のようなエグみ(ただし全く不快ではない)だった。
あとからじわっと喉の奥に感じるというタイミングとしては、草の感覚にかなり近い気がする!
ちなみにこちら、今回食べたヨーグルト味の普通のフローズンヨーグルトなかでは個人的に一番と思える味でした。柱の店、また行こう。
「アローズパレット」
フローズンヨーグルト
草度:2(ただしくさというか、山菜)
ギャル系チェーンが のしてきている?
ここまでは海外から上陸したチェーンだが、国内初のフローズンヨーグルトチェーンもいくつか存在する。
特長として、そのどれもがギャルっぽい。場所も渋谷に2軒ある。
渋谷1軒目は路面店の「Razzleberry」。店構えが黒とピンクときた。この店の前は何度も通ったことがあるはずなのだが、まさかフローズンヨーグルトの店だとは気がつかなかった。下着のお店みたいな妖しさなのだ。
思った以上に、theギャルだ。ここに草は生えまいという雰囲気におされながらも、何しろ食べてみねば。
日本のブランドではあるものの、フローズンヨーグルト自体は「YoCream」というアメリカのものを採用しているらしい。プレーンのほかにチョコレートフレーバーが選べるところに、草としての期待が持てる!
おそるべきサッパリさ
イートインスペースは黒のテーブルにピンクのソファだった。草の味のするアイスを求めてたどりついたのがここなのだ。世の中の不思議と一緒にフローズンヨーグルトを噛みしめたい。
食べてみると、かなりクリーミーで驚いた。生クリームのような食感。けれども味はとんでもなくさっぱりしていて、ああ、これはヨーグルトだ。ちょっと草の味がするかな? と思ったら、うっかりお願いしたトッピングのキウイだった。
こちらのフローズンヨーグルトはカロリーが低いのが特徴だそうだ(1カップ80kcal)。ギャルというと、いわゆる肉食系女子という印象だし、お店の雰囲気もまさに肉食なのだが、商品は超ヘルシー。
意外なようで、さもありなんという気もする。みんな細っそいもんなあ。
「Razzleberry」
フローズンヨーグルト プレーン
トロピカルパラダイス トッピング
草度:0
ティーン向けというジャンル
黒とピンクの内装の店を出ながら、もう草のことはいいかなと薄々思い始めた。周囲から浮く、ということがここまで戦意を喪失させるとは。
最後に訪れたお店、「PureBerry」は「SPY」という雑貨店の一角にあった。ギャルはギャルでも10代(もっと下?)向けのお店のように見える。
ソフトクリームサーバーには「CARPIGANI」とあって、イタリアのアイスクリームメーカーのものだそうだ。
味は、かなり薄めのヨーグルト味のフローズンヨーグルトだった。クリーミーさがなく、コンビニで売っているようなカップアイスのフローズンヨーグルトに近い。さっぱりしていて美味しい。
私が諦めたのもいけなかったのか、草の味はしなかった。
このお店、これまでで一番盛りが良かったように思う。目の前で修学旅行風の制服の女の子たちが雑貨を物色していて、学生向け=盛がいいというのは定食だけじゃないんだなと思って納得しました。
「PureBerry」
フローズンヨーグルト プレーン
マシュマロ トッピング
草度:0
まだまだ可能性は残っている
私がニューヨークに行ったころ、カロリーゼロのダイエット飲料もやたらと売られていておどろいた。日本ではまだ「ダイエットコカコーラ」があるくらいで、他に何かゼロ飲料が売り出されてもすぐになくなることが多かったように思う。
いまや日本もダイエット飲料花盛り。あれが受け入れられている今なら、草の味のフローズンヨーグルトも受け入れられるはずだ。
日本には上陸していないものの、今は韓国発のフローズンヨーグルトチェーンが世界的にきてるという情報もあった。
関西や沖縄には東京で出店していないフローズンヨーグルトチェーンが展開しているらしいし、今後も草の味をあきらめることなく注目していこうと思います。
発見したら、お知らせしますね! 草の味!
※あらためまして、こちらは2010年6月に掲載された記事の画像を大きくしつつ加筆修正し再掲載したものです。
※掲載したお店は営業しているもフローズンヨーグルトの扱いがなくなっているお店、閉店したお店が多いです。