このままでもいい
隠れていた空が見えるのは爽快感があるし、ビルの裏側を見るのは奇妙な興奮がある。
再開発でどんな街になるのか楽しみだけど、このままでもいい。

最近、東京の空が広い。
再開発で大きなビルが壊されているからだ。建物がなくなって、見晴らしが良くなっている。
数年後には新しいビルができるからこの見晴らしの良さは今だけだ。
この今だけの景色を満喫しておきたい。
なんといってもいま新宿の小田急百貨店がない。
東口にあるアルタやルミネエスト(マイシティ)が見える。
横長の建物で仕切られていたから東口と西口が別の世界のように思っていたが、ただの同じ駅だったのだ。
説明したところであたりまえの話にしかならない。
ストリートビューで昔の景色と比べると空が広いのが分かる。
新宿西口には私の志集と称して詩集を売ってる人が30年ほどいた。あの人が詩集を売るのをやめたとたんに駅がなくなったので、きっと新宿の地霊だったのだと思う。
同じ百貨店で言えば渋谷の東急百貨店本店もない。
いや、あのビルだって前からあった(Abemaが入っているビルだ)。だが、大きな建物がなくなると隠れていたビルが見えて、出張で来た知らない街のように感じる。なにか名物を食べて帰ろう。
そしてここが意外なのは、百貨店のビルがなくなっても横にあるBunkamura(劇場などが入ってるビル)だけ残っていることだ。
Bunkamuraだけ残すって、百貨店とBunkamuraってビルがつながってなかったっけ?
くっついているように見えるが、Bunkamuraは百貨店のあとでできたので別の建物だった。
ようかんのようにスパッと半分残したわけではなかった。なーんだ。
Bunkamuraは百貨店の横に建てられたのでこのコンクリむき出しの面が見えるようになったのははじめてだろう。
ここに新しいビルができて、またBunkamuraとつなげるらしい。ビルって粘土みたいに通路を切り離したりくっつけたりできるんですね。
渋谷駅から道玄坂を上がっていくと左手に新大宗ビルという大きなビルがあった。3つのビルがつながっていて香港(イメージ)のようなごちゃごちゃ感のあるいい景色だったのだが、最近取り壊された。
新大宗ビルという名前に心当たりがなくても、自転車屋や楽器屋、安いステーキ屋があったあたりと言ったらなんとなく分かってもらえるだろうか。そう、ステーキロッジがあったあたりです。
ここからちょっと上がったところに、王将やバーなど小さな店が軒を連ねている一角があった。あそこも再開発か…
奇跡的に残った民家のように建っていた。OH⚡HOが。
ところで最近の再開発の現場を見ていると、臨時の事務所の大きさに驚く。
再開発で作るビルがこれだったらおもしろいと思う。実はこれで完成です、とか言って。
こういう意匠もポストモダン建築かもしれない。もちろんポストモダンという言葉を勢いで使っている。
これが新しいNHKホールであってくれ!と願ったが違った。CCレモンホールでもなかった。
最後は渋谷駅だ。いま、渋谷駅で山手線を待っていると街がよく見える。逆にビルからは電車を待っている人が丸見えだ。
視力5.0の男女がここで再会する物語が生まれるかもしれない。
のこし、は岡田有花さんもこれすごくないに投稿していたが、つい魅力的なので私も載せてしまった。いま渋谷でいちばん注目されている文字かもしれない。
隠れていた空が見えるのは爽快感があるし、ビルの裏側を見るのは奇妙な興奮がある。
再開発でどんな街になるのか楽しみだけど、このままでもいい。
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