特集 2023年7月14日

バブル遺産。京都・祇園のド派手近未来ビルが楽しい

祇園の話がしたい。

あの舞妓さんたちがいる、京都の祇園だ。

風情あふれる伝統的町並みで知られる祇園だけど、

その隣り合わせに、これでもかといった奇天烈建築が建ち並んでいるんです。

しかも高密度で。

平成元年生まれ。令和から原始まで、古いものと新しいものが好き。

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くつがえされる祇園イメージ

皆さんにとっての祇園は、どんなイメージだろうか。

祇園=おっかないところ。

平凡な大学生活を京都で送っていた筆者の、正直な印象である。

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京都最大の繁華街、四条河原町(写真右奥)から鴨川を渡り、
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老舗のレストラン菊水と南座(どちらも戦前の建築)が入口に並び立つ
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八坂神社の門前、左右に広がる繁華街が祇園である

もちろん、修学旅行で行ったことはあった。

けど、関東の純朴な中学生には、古風な観光地としての顔しか見えてなかった。

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祇園のランドマーク、八坂神社の西楼門
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祇園の南側にひろがる町並み保存地区・花見小路
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まさに京都な花街だ
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コンビニだって京都風に化粧する祇園なのだけど…

関西の人には当たり前だろうが、祇園といえば現代においても一大歓楽街なのだ。

まだ成人もしてない頃、野次馬気分で夜の祇園を通ってみたことがある。

ビビってしまった。

ネオンの灯る通りは客引きであふれ、派手なホストやキャバ嬢が闊歩しており、関東のベッドタウンから出てきた田舎者の大学生には、ミニ・歌舞伎町のように感じられたものだ。

(2015年に客引きが条例で禁止され、今はそんなこともないらしい)

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こんな雅なところばかりではないのだ

それも、風情あふれる町並み保存地区と隣り合わせでやってるのがおもしろい。

そんな祇園だからこそ、バブル時代に建てられたとがった建築が多数あるのだ。

 

ここまでやるか!な祇園のアバンギャルド・バブル建築たち

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まずは富永町通を左に入っていく

さて、古い町家と近未来ビルがひしめき合う、祇園のもうひとつの魅力に迫っていきたい。

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お茶屋の隣に…早速あったぞ
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1987年に建てられたマルトーⅣビル(丸東祇園ビル)だ

この一筋縄ではいかない、メタリックで力強いデザイン。なんと形容すればよいか…SFアニメに出てくる、研究所の実験棟みたいだ。

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コンパクトながら六角形に立ち並ぶ列柱がシンボリックだ

このうなぎの寝床のような細長ーい敷地をこれだけダイナミックにみせられるのだ。

作った人はタダモノではないんじゃないか。

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同年、大阪・道頓堀につくられたKPOキリンプラザ大阪(1987年)。リドリースコット監督の『ブラックレイン』(1989年)で、サイバーパンクな日本イメージとして使われたことで有名なビルだ
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実はこれ、同じ人が設計している。

のちに京大教授となる、高松伸(たかまつしん)だ。

関西きっての大御所建築家で、特にバブル時代にアバンギャルドな作品を多数残している。

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そして、まだまだこれでも序の口なのだ。

富永町通を進んでいこう。

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さらにやりすぎなマルトー15ビル(1990年)が!

なんだこれは…!ロケットのような、蜘蛛のような。この狭い敷地から今にでも跳び出していきそうだ。

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ビルというより彫刻作品のよう。六本木ヒルズの蜘蛛っぽさもある

設計は若林広幸(わかばやしひろゆき)という人で、高松伸とともに京都を代表する建築家だ。

京都市出身、もともと陶磁器の「たち吉」のデザイナーで、その後我流で建築を勉強した個性派なのだそうだ。

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となりの光ビル(1991年)とひしめき合うロケットたち
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その先は京都らしい通りになっていて、ギャップに感情が追いつかない
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金蛇精を横目にさらにすすむと
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またあった!なんだこれは

同じく若林広幸設計のマルトー17ビル(1991年)だ。ビルの間から甲虫が生まれるかのような、すげーデザイン。

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自然石の上に立つメカニカルな列柱

こういうところ、単なる近未来風なだけでないところが京都っぽい。

庭石っぽいといえばぽいような…。

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見上げると懐かしいSF映画のような世界観にすいこまれていく
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左脇にはこじんまりとした祠が
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四ツ目地蔵尊という古い石仏が祀られている

この祠も建物と一緒に建てられたのだろう。ちゃんとデザインの一部になっていて、こういうところ好きだな。

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うーん、深海の節足動物っぽい

さて、東京の人ならこの感じになんとなく見覚えはないだろうか。

渋谷のディズニーストア。

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渋谷の西武百貨店の裏にある、ヒューマックスパビリオン渋谷ビル(1992年)

ディズニーとかに道楽が同居するこのビルも、若林広幸設計なのだ。

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豪華客船をイメージしたらしいこのビル、渋谷にあっても異彩をはなっている
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入口ホールの天井もかっこいいな

さて、これだけだと当時たまたま2人の超個性的な建築家がいた、という話に終わってしまいそうだが、この80年代~90年代初頭という狂騒の時代も関わっている気がする。

というのは、今では「和の大家」なんて呼ばれ、新国立競技場の設計も行った隈研吾(くまけんご)も、当時はすごいやつを作っているのだ。

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伝統的な木造建築を意識したという新国立競技場(2019年)
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…の設計者が1991年に作った、世田谷区にあるM2ビル

「ポストモダン」なんていわれて、当時はこういう大胆な建築が建てられた時代だった。

時代性半分、作家性半分といった感じだろうか。

(高松伸や若林広幸もその後はおおきく作風を変えたようだ)

 

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