バイク免許を取ると高速に乗れる
西村:原付は高校卒業してすぐに取ったので、取材先でレンタルバイクがあるときは原付借りて取材してたんですよ。
石川:県境とか行くときに。
西村:車とかバイクとかないときついところが多いので、そういうところはレンタルバイク借りてた。で、一昨年ついに普通自動二輪をとりました。
石川:僕は乗らないからピンとこないんですけど、原付とバイクって移動しやすさが違うんですか?
西村:排気量が大きいので、車並みのスピードが普通に出せます。あと125ccより上なら高速道路に乗れるんですよね。
石川:高速か!それはだいぶ変わりますね。
西村:そこはでかいですね。で、普通自動二輪取って、今年の7月に普通自動車をマニュアルで。マニュアルで取ったら面白いかなと軽い気持ちでマニュアルで取りに行って、えらい目こきましたけど、なんとか取りました。
石川:合宿で行ってたのはこれ?
西村:合宿行ったのはバイクの免許のほう。バイクの免許は東京の近くで合宿やってる学校が数件ぐらいしかないんです。そのうちのひとつに、あまり調べずに行ったんですよ。10日ぐらいだから別にいいかと思って。
石川:うん。
西村:そしたら軍隊みたいな感じなんですよ。教官に反抗したりするわけじゃないのに、罵声を浴びせられるんですよね。うまく乗れないだけで。
石川:あ~、昔ながらの自動車教習所ってそんなイメージですよね。
西村:うわ〜、こういう感じか〜と思って。中学校とか高校の部活みたいだなと思って、Googleの口コミを見たら、「陸の監獄」って書いてあって。陸の監獄ってなんだよって。
石川:あはは。もともと監獄は陸だよ!っていう。陸の孤島みたいなイメージなのかな。
陸の監獄での教習
西村:で、20人ぐらいの集団で教習を受けるんですよ。みんな16~20歳ぐらいの子なんです。そのなかにひとりだけ46のおっさん(※西村さん)がいて。で、みんなやっぱり子どもだからうまくできなかったり、暴走させちゃったりするんですよね。
石川:わざとじゃなくて。
西村:わざとじゃなくて。なのに教官がめちゃくちゃ、「てめえこの野郎!!」みたいな感じで怒鳴るんです。
石川:かわいそう…
西村:罵声かよーって。彼らも金払って来てるのに。横で聞かされるのもきつい。でもなんとかやりましたよ。ほんとに。なんとか。
石川:そういうのいやだなー
西村:学科も教習所で模擬テストがあるんです。僕はもうおっさんだし、交通ルールとかけっこう知ってるわけですよ。
石川:原付も乗ってるし。
西村:だからわりと簡単なんですよ。だけど、まわりの16ぐらいの子どもはわからないから模擬試験で落ちるんですね。それでまた怒られてるんですよ。「なんでこんなのできねーんだよ!」って。
石川:かわいそう!!
西村:で、夜にコインランドリーで洗濯してたら、一緒に受けてる若い16とかそのぐらいの子がやってきて「模擬試験なんであんな高得点取れるんですか」って聞かれて。
石川:(笑)
西村:おっさんだからしょうがねえんだよなと思って。「経験の差かなー」と言葉を濁しましたけど。そうとしか言えない。
石川:人生の先輩として。
西村:その時その子、コインランドリーの乾燥機で靴を乾燥させてて、乾燥機がガッタガタいってて。「おいおいこれダメでしょう」って言ったら、「大丈夫じゃないですか」と言って。
石川:(笑)。洗濯免許の学科落ちてますよ。
西村:ダメでしょ、これ!って思って。子どもだからかな。
石川:なんで合宿10日間しかないのにそのタイミングで靴洗っちゃったんですかね。
西村:わかんない。もうボロボロで、靴の中敷きから粉がブワって。なんだこいつって思いましたけど。「洗濯機に名前刻もうぜ」って言ってましたからね。
石川:観光地かっていう。
西村:刻むな!と思うけど、確かにすでに洗濯機にいっぱい名前刻んであるんですよ。
石川:歴代の陸の監獄の囚人の名が。
西村:ひでーな、この教習所と思って。
石川:(笑)。西村さんから見ると教官は年下なんですか?
西村:30とかそのぐらいですよ、きっと。
石川:年上の生徒に対する態度は?
西村:扱いが雑でしたね。集団で受けるから、1人1人にあんまり丁寧に教えないんですよ。全体に対してやり方教えて、やらせて、できないやつは罵倒みたいな感じなんで。結果、ぜんぜん坂道発進とかできてないんだけど、はんこは押されちゃってるんですよ。
石川:それでいいのか(※)。
※注:かつては出来たらハンコがもらえるシステムでしたが、現在は教習を行ったという事実に対して押印する制度に変わったため問題ないそうです。
西村:でも、まあなんとか坂道発進とかスラロームとかは、なんとか教習時間内に俺はできるようになりました。でも最後の試験は一発じゃ合格しなかったですね。2回落ちました。
石川:練習不足で。
卒業、そして…
西村: 3回受けてなんとか合格して、家帰ってTwitterで俺が行ってた教習所の名前で検索したんですよ。そしたらキラキラ女子みたいな子が「今日からバイクの合宿免許受けるぞ」って感じで、バイクの写真とか最寄りの駅前の風景とかアップしてるんですよ。
石川:陸の監獄に新入りが…。
西村:このひと同じところで受けるんだって思って、その人ちょっと追っかけて見てたら、だんだん落ち込んでくるんですよ。「また今日もコケた」みたいなこと書いてあって。「もう受かる気しない」とか。
石川:うわー、不憫すぎる…。
西村:かわいそう、この人……とか思って。思わず、俺リプライしたんですよ。「僕も2週間ぐらい前にそこで受けて、大変だったけど、合格しました。教官ちょっときついこと言うかもしれないけど、それは受け流して頑張ってください」みたいな。
石川:先輩としてね。優しいじゃないですか。
西村:そしたらブロックされました。(笑)
石川:(爆笑)若い女の子に絡んでくるおっさんだと思われた。善意だったのに。
西村:これは俺が悪かったな。
石川:それはもうしょうがない。中年男性としてその運命は受け入れていかないと。
西村:ちょっと落ち込んでてかわいそうだったから。みんなうちの子と同い年ぐらいですからね。子どもはかわいそうだから。
石川:その子もリスク回避でブロックせざるを得ないですけど、内心救われた部分はあるんじゃないですか。いいことをしましたよ、絶対に。いい話です。
西村:はははは。はははですよ。
石川:バイク乗るたびに思い出しますか?
西村:あの子取れたかな〜って。もうブロックされてるから見れないですけど。