れんさい企画「はじめての調味料づくり」
小麦粉から調味料が生まれる不思議
というわけでまずは、「小麦粉から甜麺醤を作る」をやってみたい。
小麦粉のことを、粉もんの材料としてしか意識したことがなかったため、想像がまったく追いついていないが、手を動かしたら見えてくる世界があるのかもしれない。
小麦粉、何を使えばいいのかがわからないぞ。
仕方がないので、パッケージに「パン」と書いてあるのをみて、発酵を連想し、そのイメージだけで、強力粉を使ってみることにした。
小麦粉から作ったという人のブログなどを参考にしながら、材料を揃えてみた。小麦粉、小麦粉を練るための熱湯、塩、麹、以上。ミニマルというワードが脳をよぎる。
餃子かなにかの皮を作っているような気分になってきたが、今日はそっちじゃない。いったん餃子のことは忘れてくれ。そう自分に言い聞かせながら、練った小麦粉に塩と麹と加えていく。
ごつごつした粘土をこねているみたいだ。この固さなら、象の置物とか作れるかもしれない。
混ぜるのにそう時間はかからなかった。だが、ここからが長い旅路だ。諸説あるが、熟成までには1年近くかかるらしいのである。
2022年8月、そのころ世界はどうなっているんだろう。
みんな3回めのワクチンを受けているんだろうか。来週から始めようと思っているダンベル体操は、無事にちゃんと続けられているだろうか。いや、そもそも始めることができるのだろうか。
白い塊をただ眺めているだけで、さまざまな思いが胸をよぎってしまう。こわい。
これこそが、今すぐ食べられない食べものの凄みなのかもしれない。ごく自然に目線が未来へ向かってしまう。
豆豉も作ろう
続いて豆豉も作ってみたい。豆豉とは、大豆や黒豆に塩や麹を加え、発酵させたあと、干して水分を減らして仕上げる発酵食品だ。豆豉醤の主な原材料である。
レシピが見つからずに困っていたのだが、京都で作られている大徳寺納豆とほぼ同じ作り方である、という話にたどり着いた。
思えば乾燥した状態の豆を、自分でふかふかにした経験がない。作り方の裏側を読んで震えた。工程ごとにかかる時間が長い。
レシピによれば、豆を煮てふかふかにしたら、そのあと、「はったい粉」をまぶす必要があるらしい。
「はったい粉」とは……? 初めて聞く名前だ。
困った。ぜんぜんすり潰せない。我が家のミニすり鉢では太刀打ちできない、威風堂々とした固さだったのである。
次回、文明の利器(ミルミキサー)を手に入れたところから、続きを書かせてほしい。