特集 2026年9月29日

飲み会で知らない話題で盛り上がられてもこちらの態度次第では楽しくなる

皆さん。飲み会で自分の知らない話題で盛り上がられると、あんまり楽しくないですよね?知ってる人と知らない人で会話の輪が二つに分かれちゃうこともありますし。

「この話は知らない人もいるから前提も共有しておくか」とか「あの人、つまんなそうにしてるな」とか、飲み会は意外に気を使うことも多いです。

しかし。知らない話題をされた側が、むしろ前のめりの姿勢で話を聞いてみたらどうなるでしょうか?

1980年、東京生まれ。片手袋研究家。町中で見かける片方だけの手袋を研究し続けた結果、この世の中のことがすべて分からなくなってしまった。著書に『片手袋研究入門』(実業之日本社)。

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談志コスプレの縁は続いていた

昨年、DPZライター唐沢むぎこさんの「談志コスプレをしてみたい」という特殊な願望を叶える企画をやりました。

談志コスプレをする唐沢さんと、唐沢さんと同じく台湾にまつわる研究をしているというだけで巻き込まれた台湾夜市研究者の三文字昌也さん

初対面が極めて特殊な状況になってしまった、いや、特殊な状況だったからこそ、この日以降も2人の関係は続いたのです。今年7月には三文字さんの著作『台湾夜市大全』刊行記念で、唐沢さんをゲストに招いたトークイベントも開催されました。

イベント序盤「談志のコスプレがきっかけで…」と2人の出会いの話になりましたが、お客さんはまったく理解していなかったと思います!

このイベントの打ち上げで不思議な経験をしました。唐沢さんと三文字さんが私の知らない中国ドラマの話題で盛り上がり始めたのですが、不思議と聞いていてちょっと楽しかったんです。そのドラマを知っている人が私を含め他に誰もいなかったので2人はすぐ話を切り上げましたが、ずっと気になっていました。なんであの時、嫌じゃなかったんだろう?

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時の流れに身をまかせ

8月某日。謎を解明すべく、居酒屋であらためて2人に思う存分その中国ドラマについて話し合ってもらうことにしました。

乾杯!メンバーは三文字さんと唐沢さん、それぞれのパートナーのルーさんと四谷君、そして私の5人。三文字さんと唐沢さん以外はドラマについて全然知りません

近況報告もそこそこに、早速ドラマについて語ってもらいましょう。

唐沢「結局“情”の話なんですよね」三文字「そうそう!」

いきなりトップギアで始まった2人の話の熱量は2時間制の居酒屋なんかで受け止めきれるわけもなく、当然のようにファミレスに移動、そして会話のテンションは2時間前とまったく変わらず続いています。

2軒目なのにみんなガッツリしたものを食べてるのは、1軒目の居酒屋で話すのと聞くのに夢中で食べるのを忘れたため

結局この日、私は4時間に渡って1mmも知らない話を聞き続けたんですけど、結果的にはやっぱり凄く楽しかったんです。自分なりにその理由が幾つか判明したので、解説してみようと思います。

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①単純に勉強になる

今回は(私には関係ない話だな)なんて思わず、むしろ「なんの話?教えて!」と前のめりな姿勢で挑むことにしました。

ノートを取りながら2人の話を聞く私

すると「知らない話を聞かされる時間」が「知らなかった知識を吸収できる時間」に変わるんですね。今回2人の話を真剣に聞いたおかげで幾つも新しい発見がありました。

・2人がハマったのは『宮廷の諍い女(いさかいめ)』というドラマ→中国で2011〜2012年に放送された作品だが今なお圧倒的な人気を保っており、ネットミームになってたり検定やスタンプもあったりする

・清代の後宮を舞台とした、雍正帝から乾隆帝誕生までを描く全76話の長大なドラマ。裏切りや追放や陰謀、恋愛模様など複雑な人間関係と(ちょっとツッコミたくなる)劇的展開→日本でいう大奥のような内容。昔私がハマった『チャングムの誓い』や今大人気の『薬屋のひとりごと』など類似作品が色々と思い浮かぶ。東アジア各地で伝統的に人気のある形式なのかもしれない

・圧倒的な映像美→それ以前の中国ドラマも面白いのだが、ある段階から映像が格段に綺麗になったそう

・三文字さんも唐沢さんも中国語上達という目的で見始めた部分も少なからずあった→唐沢さんは言語交換をしていた中国人の友人に薦められた。異なる母国語を持つ2人がお互いの母国語を教え合う「言語交換」という文化自体、私は今回初めて知った。

最終的にはノートのメモは6ページ分になってました

 ドラマの内容だけでなく、それに付随して自分が今まで触れてこなかった世界の知識がどんどん得られます。

唐沢さんが気持ち良さそうに決め台詞を放ったのですが、すみません!知らない故事で受け止めてあげられませんでした。勉強します(*)!

時間が経つにつれ登場人物の名前や関係性、時代背景なども理解できてくるので、気が付くと自然に質問している自分がいました。

私だけでなく四谷君も質問を重ねますが、本質を突いてたらしい!羨ましい~。池上彰の番組出演者の気持ちがちょっと分かります

(*)「黄梁一炊の夢」 人の世の栄華や富貴、栄枯盛衰が、ほんの束の間で、はかないものであることのたとえ

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②好きなものを熱く語る人を見てるだけで楽しい

あとシンプルに、好きなものについて語る人達って良いオーラが出てますね。

自分がこれから語る内容に自分でツボって大笑いしだす唐沢さん
三文字さんも爆笑!すみません、なにが面白いのか全然分かりません…
しかし2人が楽しそうに話すのを見ていると…
なんかつられて私も楽しい気分になるから不思議

もはやなんの話をしてるかなんて関係ないのかもしれません。そんなことより楽しそうな人を笑顔で見守る。それだけでなんだか心が満たされてくるのです。

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③同志を見つけた人達を見る喜び

ちょっと②にも近いんですけど、「ああ、遂にこの話ができる相手が見つかった!」っていう瞬間の人間を目撃する喜びもありました。

後から調べてみたら確かに『宮廷の諍い女』って今でも人気が衰えていない伝説のドラマらしいんですけど、日本で知ってる人はかなり限られるはず。2人はきっと(こんなに面白いのに…)という忸怩たる思いを孤独に抱えていたと思うんです。

それが話せる相手が遂に見つかったんですから。嬉しかったでしょうね。後から写真を見返したら2人の動きが完全にシンクロしていました。

主人公のライバルがショックのあまり酸っぱいきゅうりを食べまくるシーン
傷を治す薬だと思ってたものが堕胎薬だったシーン
衝撃の展開に驚くふたり
なんなんだ、この人達!

でも、私だって長年研究してる片手袋とか敬愛してるエルヴィスの話が同じテンションで通じる相手を見つけたら、こんな風になると思うんですよね。もはや2人が羨ましくなってきました。

唐沢さんが作ってきた人物相関図を…
「こんな良いメモはないよ~」と嬉しそうに唐沢さんを讃える三文字さん
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きっとみんな楽しかったはず

いや~、自分の知らない話しかしてないとは思えないほど、楽しい飲み会でした。勿論、「知らない人の悪口を永遠に聞かされる」みたいな負のオーラに満ちた状況だと、どんなに頑張っても苦痛でしかないと思います。しかし今回のように、

・こちらの積極的に話を聞く姿勢
・話している側の楽しげな雰囲気

が揃った場合は、知らない話題でも全然つまらなくないことが分かりました。皆さんも是非試してみて下さい。

ちなみに。私以外、同席したルーさんと四谷君はどう思ったのでしょう?唐沢さんが四谷君にLINEで感想を聞いてくれました。

あれ、四谷君…?

いや、みんな楽しかったはずです。間違いない!


私、賢くなっちゃったかも

勿論、すべての飲み会なんて過ぎ去ってしまえば一瞬の儚い出来事かもしれませんけどね。なんて言うのかな~。私の知ってる言葉で言うと、そう。

「黄梁一炊の夢」

と表現すれば良いんですかね。

編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
知らない単語だらけでしたが、「ショックのあまり酸っぱいキュウリを食べまくる」「傷を治す薬だと思ったら堕胎薬」という強引なエピソードが気になります。
ドラマは見た人同士で語る、という楽しみ方がありますが、いまここに「語る人を見る」というところまで広がりました。(林)

はげます会限定連載「石井公二のおいしいもの手帖」第13回

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