「丸かじりがおいしいですよ」
夏、家族で山梨に旅行に行って桃狩りをした。
いちご狩りみたいに狩ったその場で食べるのではなく、決まった個数を狩ったあとで農家の方が用意してくれた桃を食べるスタイル。
「丸かじりがおいしいですよ」と言って、水を張ったボウルを置いてくれた。ここで優しく洗うと産毛が取れる。あとはもうそのままかじるのだ。
初めて皮ごと丸かじりしたけど、すごく、すごくおいしかった。皮は全然渋くない。香りと甘味が強くて、酸味も少しあって味がギュッとしていた。
果肉だけ食べた時のぼんやりした印象がなくなって、ただでさえおいしい桃が最強になった。
そもそも桃がおいしいのだ。採れたての桃で、初めての食べ方で、おいしさの理由が一つに絞れないがとにかくとてもおいしい。
後ろの赤富士のおかげかもしれないし、売り場で流れていた知らない歌謡曲のおかげかもしれない。
五感それぞれが初めての刺激を感じていたが、全部手を取り合って「おいしい」に向かっていた。
ちょっと柔らかい梨のよう。「なかなか食べられないから」と敢えてまぜてくれていた。これもおいしかった。

