出所は忘れました
このテストをどこで知ったのかはっきりと覚えてはいないのだが、むかしテレビで、それもNHKのドキュメンタリーみたいな、わりとシリアスな番組で見たような気がする。
いわゆるゲーム感覚の心理テストというよりも、もうちょっと学術的なものとして紹介されていた覚えがある。
とはいえなにぶん記憶もおぼろげなので、それは僕の思い過ごしで、もしかしたらただ心理テストの本で読んだだけかもしれないし、もっと言えば中学生の時に河原で見つけた成年誌に載っていた情報の可能性もある。93~96年頃に成年誌の白黒ページに載っている箸休め的なコラムでそんな記事を見たことがある方、特にその雑誌を岐阜県の川に捨てたことがあるという方、そのことはそっと胸の内にしまっておいてください。
さて話を戻す。冒頭でみなさんに書いていただいた500円玉大の丸、改めてまじまじと眺めてみて欲しい。そしておもむろに500円玉を取り出し、隣に並べてみよう。
このテストの結果はこうだ。
「500円玉より丸が小さければ、あなたは経済的に余裕のある暮らしを送っている。丸のほうが大きければ、あなたは貧乏である。」
僕はこのテストの身も蓋もなさが好きだ。「あなたの好みのタイプは…」とか「あなたの精神年齢は…」とか、そんなマインドの部分の話じゃない。「あなた貧乏である」。なんというか、それ言っちゃダメだろ、みたいなところをズバリと突いてくる。
500円玉じゃなくてもいいのでは
心理テストというのはみんなでワイワイやれば楽しいものだが、机に向かってひとりでやってみると、思いもよらず自分自身とガッツリ向き合う結果になってしまったりする。大きく描いてしまった500円玉を見て、そういえば最近ハードカバーの本買ってないなとか、軽く振り返ってしまう。そのくらいたいした貧乏ぶりではないと思うが、こうして突きつけられると、あーそうかも、なんて思ってしまうのだ。
このテスト、信憑性のほどは定かではないが(なにしろ出所があいまいなので)、しかし説得力はあると思う。背景にある理屈がなんとなく見えるからだ。貧乏な人は、お金を大切に思うあまり、心の中でその存在が大きくなってしまう。それがそのまま絵の大きさに表れる。そういうことだろう。
ということは、である。お金でなくても大切なものは大きく描いてしまうのではないだろうか。たとえばチョコレートが好きな人はチロルチョコを大きく描くかもしれないし、たとえば酒好きな人は缶ビールを大きく描くに違いない。
前置きが長くなりましたが、今日はそんな記事です。
ライター陣で実験
まずは当サイトのライター陣に実験台になってもらうことにした。
描いてもらったものは2つ、まずは基本の500円玉。そしてもうひとつ、タバコの箱である。
メンバーの中には、タバコを吸う人、吸わない人、吸ってたけどもうやめた人と3種類のサンプルがそろっている。僕の予想ではタバコに縁遠い人ほど箱を小さく書くはずだが…。
ウェブマスター・林さん
実物 | 絵 | 差 | 石川コメント | |
500円玉 | 27mm | 26mm | -1mm | コインが横長!お金に対する歪んだ真理の表れか。 |
タバコの箱 | 幅55mm 高さ89mm |
幅49mm 高さ58mm |
縦横合計 -37mm |
タバコは吸わない。以前1mの箱を作っていたので、実物を過小評価してしまうのもやむなし、という気もする。 |
編集部・安藤さん
実物 | 絵 | 差 | 石川コメント | |
500円玉 | 27mm | 28mm | 1mm | あとから書き足した「円」も、分析すれば何か意味が生まれそう。 |
タバコの箱 | 幅55mm 高さ89mm |
幅49mm 高さ67mm |
縦横合計 -28mm |
吸わない。1本飛び出てる演出は憎いけが、うってかわってパッケージには愛着がない感じがする。 |
編集部・古賀さん
実物 | 絵 | 差 | 石川コメント | |
500円玉 | 27mm | 28mm | 1mm | 500のゼロ部分の縞まで再現。数字に対する執着の表れか。 |
タバコの箱 | 幅55mm 高さ89mm |
幅47mm 高さ62mm |
縦横合計 -35mm |
吸わない。側面に描かれた四角(バーコード?)の所在ない感じがいい。 |
月曜担当ライター・榎並さん
実物 | 絵 | 差 | 石川コメント | |
500円玉 | 27mm | 29mm | 2mm | yenを英語で書いてしまうほどのおしゃれさだが、実は一番でかい(貧乏) |
タバコの箱 | 幅55mm 高さ89mm |
幅48mm 高さ61mm |
縦横合計 -35mm |
吸う。絵のそっけなさは、日ごろからの距離の近さゆえか。 |
編集部・橋田さん
実物 | 絵 | 差 | 石川コメント | |
500円玉 | 27mm | 27mm | 0mm | なんとぴったり!唯一の正解者。 |
タバコの箱 | 幅55mm 高さ89mm |
幅44mm 高さ76mm |
縦横合計 -24mm |
元・喫煙者。「箱の大きさはわからないけどタバコの太さならわかる」と言って、中身から描き始めた(左の箱)。しかしべつやくさんに「タバコは3列だよ」と指摘されて書き直したのが右の図。 |
木曜担当ライター・べつやくさん
実物 | 絵 | 差 | 石川コメント | |
500円玉 | 27mm | 29mm | 2mm | 縁取りのディテールが細かい。細かい=貧乏、という説はないのだろうか。 |
タバコの箱 | 幅55mm 高さ89mm |
幅57mm 高さ80mm |
縦横合計 -7mm |
元・喫煙者。パッケージの柄までちゃんと覚えてるのはさすが。1回書き直したところが人を不安にさせる立体感に。 |
マネージャー・鶴久さん
実物 | 絵 | 差 | 石川コメント | |
500円玉 | 27mm | 24mm | -3mm | 大きいほうの丸を測っても、今回いちばん小さい。小さいほうにいたっては一円玉サイズ。富豪か。 |
タバコの箱 | 幅55mm 高さ89mm |
幅54mm 高さ75mm |
縦横合計 -15mm |
吸う。榎並さんに続いてそっけない絵で、タバコとの気の置けない関係を感じさせる。 |
集計した結果を見てみよう。まずは500円玉から。
金持ち | 24 mm | 鶴久 |
↑ | 25 mm | |
↑ | 26 mm | 林 |
実物大 | 27 mm | 橋田 |
↓ | 28 mm | 安藤、古賀 |
貧乏 | 29 mm | 榎並、石川 |
気まずいリアリティ
なんだろう、この微妙なリアリティ。マネージャーやウェブマスターが金持ちで、僕や榎並さんなど、比較的若い世代が貧乏である。おもしろいですねーあははー、で終わるお遊び実験のつもりだったが、変にありえそうなランキングができてしまい、これ以上は立ち入りづらい雰囲気である。
本当は年収や毎月のお小遣い金額を聞いてきっちり検証すべきなのだが、そんなことをしたらますます気まずさは加速するばかりだ。お金についてはこれ以上の追求は今回は控えさせてもらった。
そしてタバコの箱だ。タバコを吸う人、吸わない人、吸ってたけどやめた人の3グループにわけて平均を比較した。
禁煙も人生経験
小さい順に、吸わない人、吸う人、もうやめた人、の順になった。
タバコを吸わない人が小さく描くのはよくわかる。タバコに無関心だからだ。しかし最も大きく描いたのは、意外にも、タバコを吸う人ではなく、もうやめた人たちである。
思うに、タバコを現役で吸っている人たちにとって、タバコは身近すぎるのではないだろうか。一方、タバコをやめた人にとっては、タバコは遠い日の思い出である。距離を置いてみて、初めて大切なものに気づく。ということもあるだろう。絵の大きさの違いは、その辺の経験値である。禁煙だって人生経験だったのだ。
次のページでは、子供に大好きなものを描いてもらいます。