単に作りたかったから作りました
旅の途中、田園地帯でいくらでも見つけることのできた、りっぱな鯉のぼり。

いいものである。日本の、めでたき風景。たぶん何十年と変わらぬであろう、よき風習。あの家では、さぞ子供らはうれしかろう。誇らしかろう。
自分では鯉のぼりを所有したことはないが、要は「魚」の「のぼり・旗」だ。何とか作れそうである。
問題は、題材とそのプリント方法だ。
相手は深海魚。鮮明な写真を用意、なんてすぐできるもんじゃない。よって「写真をアイロンプリントで」というお手軽方法は、はい消えた。ならば本職の職人のごとく、布に自分で描くしかない。まあ、それも職人気分で楽しめそうではある。
そこで、冒頭に紹介した本だ。テレビで紹介されていて、以前から欲しかったのだが、この企画をやるにあたり即買いだ。


ついコーヒーなど入れて「よっこいしょ、さて・・・」と夜更けにじっくり見入ってしまいそうになる本だが、おっとこうしてはいられない。何を描くか選定しなくては。そして足りるだけの布を買ってこなくては。
今回「実物大」ということに重点を置きたいので、よって魚は限られてくる。載っているものは数センチから数十センチのものが多く、それだと大空を泳がすにはちょっと役不足である。ごめんな、フクロウナギにヌタウナギ。少なくとも全長1mは欲しいのだ。


もうご想像おつきのことと思うが、第一候補は「リュウグウノツカイ」だ。あの長~い銀色の。国際サンシャイン水族館に標本が飾ってあるが、本「深海魚」でも220cmと紹介してあった。長い。あれを「マゴイ」にしよう。

それは地味なのか派手なのか
他、4つの候補も決まって、さっそく下絵描きだ。ああ、こんな風にちゃんと「絵を描くぞ」と覚悟して始めるのは久しぶりなんじゃないか。もしかして高校の美術科目で、まったく要領のわかってない静物画を描いた、それ以来ではないか。手も震える。


忘れてはならないのは、鯉のぼりのように風に泳がすには「フクロ状」の構造にせねばならないということだ。よって、絵が表裏一枚ずつ必要なのだ。220cm塗り終わったー、と思ったらまた右からかい!かけることの5、イコールやってもやっても深海魚絵地獄。


最後の赤いのは、他の4つがあまりに地味な色合いなので、小さめの魚だが入れることにした「ダルマコンニャクウオ」だ。最後に見ていただくが、顔がいい。そして名前もいい。
魚の名前、特に深海魚の名前って、「そこかよ!」というセンスがあって実にいい。「コンニャクウオ」なんて、もうネーミングとかそんな問題じゃない、実にのんきな事態になっている。