異界への扉はあけっぱなし
数年前、品川駅に新幹線が停まるようになって、新幹線への乗り換え通路ができた。
壁だったところに突然通路が現れたのだ。通路の先には「博多」とか「広島」など、遠い地名が書いてある。品川駅に書いてある行き先と言えばどんなに遠くても小田原ぐらいだ。異界への扉がいきなりあいたような気分である。
社会から逸脱できるドアが野放しになっているのだ。
品川はオフィス街・乗り換え駅だからビジネス利用を見込んで新幹線の駅を作ったのだろうけど、逆に、仕事から逃げてどっか行ってしまう人もいるだろう。
例えば僕が午前中の会議に出ようとしたが、うっかり寝坊したとする。途中で会議に入っていくのは目立つし、できれば避けたいがここからF1にでも乗らない限り間に合いそうにない。F1なら間に合うとか子どもの頃と同じことをいまだに考える自分が嫌だ。
かんたんに新幹線に乗れてしまった。以前から思いつめていたことでも実行に移すと意外なほど簡単だった。大人は自由だ。大人になってよかった。
きょうは失踪します
このままどこか遠くに行って、夜までに帰ろう。このままほんとに出奔する覚悟はない。理由を考えたり住むところを探したり大変そうじゃん。
新幹線なら福岡日帰りも可能だ。山陽新幹線には降りたことがない駅がたくさんあってとても旅情を誘うのだが、
片道20,000円だ。フラフラって行って帰ってきて40,000円を出す勇気もない。
新幹線のなかで時間があるので、各方面に連絡するとしたらこのタイミングだろうか。
降りたことがない駅ということで掛川を選んだ。ここからバスに乗っていけば御前崎に行けるらしい。台風が来たときのニュースでよく聞くが行ったことのない場所だ。
あと、失踪と言えば海、というイメージで選んだ。若人あきらの影響だろうか。