1日失踪したあとのフォローは自分でなんとかしてください
でも、こんなにスムーズに行って帰ってこられるのであれば通いの失踪もできるかもしれない。毎日、岩場に行って帰ってくるのだ。
そしてこの記事の撮影をするために失踪しようとしたが平日はスケジュールの調整がつかず、日曜日に会社に行くふりをして撮影した自分の小ささが恨めしい。
御前崎はきれいに整備されていた。遊歩道には街灯とコンクリ製の階段があり、所々にある展望台には浮かれた名前がついていた。浮かれた名前だけど石に彫るとすんなり受け入れられるような気がした。コネタか。
バスに乗ってまた掛川駅近くまで戻ってきてもまだ7時前だ。新幹線に乗って帰れば余裕である。
途中にファミレスがあった。人気店らしく混んでいる。順番待ちの名前を書くときに、林じゃなくて違う名前を書いたらよりいっそう失踪感が出るかもしれない。この街ではこの名前、とかそういうのだ。阿久悠の歌詞みたいである。
………結果から言うと、名前を自分で書こうとしたら店員さんに名前を聞かれてしまい、とっさに「林です」と答えてしまった。とっさに違う名前は出なかった。こういう思った通りにいかないも含めて失踪してみないと分からないことである。そういうことにしたい。
ファミレスを出ると外は真っ暗で田んぼからはカエルの声が大音量で聞こえた。街灯もない道を歩いていると真夜中のような気がしてくるが、駅に行けば新幹線がやってきて1時間30分でいつもの品川駅である。まだ22時30分だ。
いつも通り電車に乗って帰る。まさか昼間に岩場に腰掛けて海を見ていたとは思わないだろう。スーツだし。そう思うといい気分だ。失踪してよかった。
でも、こんなにスムーズに行って帰ってこられるのであれば通いの失踪もできるかもしれない。毎日、岩場に行って帰ってくるのだ。
そしてこの記事の撮影をするために失踪しようとしたが平日はスケジュールの調整がつかず、日曜日に会社に行くふりをして撮影した自分の小ささが恨めしい。
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