特集 2019年3月22日

京急大師線地下化工事のクレーン祭り

出番を待つクレーンたち。いよいよ祭りが始まる。

先日、2019年3月2日の夜から3日の朝にかけて、京急大師線の産業道路駅地下化切替工事が行われた。

……っていうふうに文章を始めると、工事のレポートのようですが、本記事はそういうものではありません。

いや、レポートではあるんだけど。

とにかく、ここで言いたいのは「クレーンたくさんあるとこうふんする!」っていうことです。こうふんした。

もっぱら工場とか団地とかジャンクションを愛でています。著書に「工場萌え」「団地の見究」「ジャンクション」など。(動画インタビュー

前の記事:上と下の階に分かれている地下鉄駅がなぜか好き

> 個人サイト 住宅都市整理公団

一晩でトンネルが出現

昨年「いまが見納め・京急大師線沿線散歩」と題して、神奈川県は川崎の京急大師線に沿って端から端まで歩いた様子を記事にした。

タイトルの通り、当時「いまが見納め」だったのは、本記事で紹介する地下化工事が行われる予定だったからだ。

で、地下化工事、行われました。

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3月2日の夕方の様子。

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翌日3日の午後の様子。

黒い線が大師線の全部。オレンジ色が地下化された部分。上の写真は、川崎側、トンネルの西側にある東門前駅の踏切から見た様子。

一晩でトンネルが出現。こうして見ると、土木工事ってすごいよねえ。

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3日の夕方には、すでに各地から人が集まってきていました。工事を見届ける方々だ。みんな熱心。

じつはこの工事が行われる場所は、ぼくの家の近所。工事当日の午後から、だんだん駅の周りに人が集まりだしている様子がおもしろかった。

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写真を撮っているみなさんの中には、工事関係者もまじっていて、それもおもしろかった。写真は、制服を見るにアクティオの方。ご苦労様です。
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アクティオさんは建設機械のレンタル・リースを行う会社。じつは先日そのオフィスと倉庫を見学させてもらった。最新鋭の自動化された倉庫がすごくかっこよかった。いずれ記事にしたい。
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クレーン祭りだ

詳しい工事の内容については、いろんな方がレポートしているのでそれをご覧いただきたい。

大雑把に言って「あらかじめ地下にトンネルが作ってあって、この工事は上にある既存の線路をどける作業であった」ってことです(大雑把にもほどがある)。

いやでも、これまでいろいろな大規模工事を見てきましたが、どれもつまるところやろうとしていることは単純で、でもその単純なことを安全に大規模に行うというのがすごくたいへんなわけです。

「穴を掘る」とか「物を立てる」といった、単純なことが、規模が大きくなるととたんに大ごとになる。ぼくはいつまでもこのことがすごく不思議で。頭では分かっているんだけど、なんか不思議。だから見に行きたくなるんだと思う。

で、今回はその「既存の線路をどける」が大ごとで、光景としてはその作業が「クレーン祭り」であった、ということです。

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クレーン祭り。
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線路持ち上げてます。

@piro0827 さんによる、すばらしいクレーン祭りタイムラプス動画。なんとなく水芸を彷彿とさせる。

こんなににょきクレーンが並んでいるのを見たのははじめてだった。クレーン祭りだ。

線路を持ち上げては脇に下ろす作業を行う各々のクレーンの動きを「水芸」に似てる、と思って、上のキャプションでそう書いたがたとえが分かりづらかっただろうか。扇子とかから水が噴き出すあの舞台芸ですよ。子どもの頃テレビでちょくちょく見たけど、いまもうほとんど見かけないですよね。

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ギャラリーでごった返す駅周辺

今回の記事の趣旨は上の動画をご覧いただければ終了と言ってもいいぐらいなのだが、もうちょっとこの夜のことを書こう。

さきほどもちらっと書いたように、今回の工事はぼくの近所で行われた。これまでいろいろな工事を見てきたが、それらはいずれも家から遠い場所だった。この手の工事はたいてい夜中に行われるので、毎回心細かった。工事があらかた終わり、さて帰ろうと思っても電車はなく、さてどうしよう、ということになる。

しかし今回は家から徒歩数分の場所だ。こんなに気楽なのははじめてだ。夕ご飯を食べ、お風呂に入り、ゆっくりと現場へ。いいのかこんなに気楽で。

「さてそろそろ行きますか」と、のんきに出かけたら現場は黒山の人だかり。向かったのは「産業道路を愛でる」という記事でも登場した産業道路駅。今回の工事の大きな目的は、この産業道路の踏切をなくすというもの。いわば今回のスポットライトである。

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工事関係者と見物人の両陣営が産業道路駅に。

 

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現場を見下ろす歩道橋の上・桟敷席も満員御礼。
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終電も終わり、いよいよ工事開始だ。
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どうぞ御安全に!
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鉄道の車輪がついてるこの作業車、かわいい。
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観賞場所を求めて

終電は終わっているが、おどろくほどたくさんの見物人がいた。みんなぼくみたいに近所なのだろうか。

さて、どこで工事を見よう。

地下駅になる産業道路駅をはさんで地下に潜る場所が両脇にあるわけだが、残念なことに間近から見ることができない。

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「あそこから見れそうだ」と思っていた場所はだいたい立ち入り禁止。
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もっともこれは事前にうっすら感じていたことではある。工事の告知看板に、充実した通行止めっぷりが明記されていたから。

まあ、安全のためには当然の措置だが、なんともはがゆい。

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それでも、間近にダイナミックな光景を見ることができる場所もある。ここはその代表格。
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ここは以前の記事でも盛り上がった場所で、既存の線路を持ち上げるための構造物だ。写真は昨年の様子。
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図中の「ジャッキアップ」を行うためのやぐらだ(川崎市・京浜急行電鉄株式会社「京浜急行大師線(東門前駅付近~小島新田駅付近)連続立体交差の工事について」より抜粋)
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そして今夜、いよいよジャッキアップというわけ。よく見ると「打上線」とあり、持ち上げる高さが示されている。「打上」っていい響き。
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「どこから見ようかなー」と歩き回っていたら、既存の架線をとりはずす作業(たぶん)が始まった。

上の写真の光景でびっくりしたのは、架線にハシゴ寄りかからせるんだ! ということ。素人目には、なんだかこわい。

というか、何本ものハシゴが空中に伸びるさまが、出初め式っぽい。いよいよ「祭り」めいてきた。

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公園に落ち着きました

なかなかよく見える場所が見当たらず、うろうろしたあげくようやく「ここにするか」となったのは、とある公園。

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公園なら遠くから全景を見ることもできるしね。
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あと、敷地の一角には作業する方々の休憩テントがあって、浮かぶシルエットが、なんかよかった。
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「公園ならトイレもあるし」とぼくにとっては好都合だったが、見ると工事関係者の使用を禁じる表示があって、たいへんだなあ、と思った。ご時世ですね。
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公園を横切って作業員の方々が現場へ。白木蓮の向こうにスタンバイしたクレーンたち

このとき、時間はすでに1時を回っている。公民館に飾られた写真サークルの作品みたいな写真を撮っていたら、やおらクレーンが動き始めた。「タイトル:春の訪れ」とか撮っている場合ではない。

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なんのためにそこに住んでるんですか!

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にょっきり動き出した! すごい! これぞ春の訪れ!

そしてこのあと1時間以上にわたってこのクレーンたちによる祭りが開催された。

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おお、持ち上げてる!
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あれは確かに……!
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トンネルの上にあった既存の線路だ!
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その線路はトラックに積まれ、
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順次運ばれていった。
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その繰り返し。
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たくさんの見物人たちが、めいめいいろいろなところで見ていたようですが、この公園はなかなか良い場所だったと思う。ただ、もうちょっと工事現場の足下が見えればなー。
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と思いながら公園の後ろを振り返ると、そこには絶好のポジションに建つマンションが。しかし、住民は誰も見ていない。なんのためにそこに住んでるの! 今日のためでしょ!
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公園の脇の道路がちょうど前述のやぐら。画面右には目前に工事の様子が見える絶好の場所に建つ家。でもやっぱり住民は見ていない。なんのためにそこに住んでるの! 事前にお友達になっておけばよかった。

先ほどの「打上線」まで既存線路がジャッキアップされていく様子。これも@piro0827さんによるタイムラプス動画。すばらしい。

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「もうちょっと近づければなー」と思っていたら、自転車が一台しれっと立ち入り禁止エリアに入っていった。「なぬ!」といきりたちつつ見たら、新聞配達だった。そうか、そういう手があったか。次回は事前に新聞配達員になっておこう。

 ぼくも大人になった

こんな感じで午前3時過ぎまで公園でクレーン祭りを見ていました。寒かった。

もうひとつ、工事で深く感じ入ったポイントをお伝えして終わりにしよう。

それは、線路周辺のさまざまな処理だ。

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たとえば、明け方までかかって踏み切り遮断機の撤去が行われてました。
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また、路面に描かれていた踏切マークもすぐに消されてた。
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これは以前の様子。こういうかわいい電車マークがあったのだ。ここでクルマが一時停止する光景は、もう見られない。
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「踏切注意」っていう看板も、
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終電が終わったらすぐさま「段差注意」に変えられてた。

 「クレーン祭り」などと派手な作業に目が行っていたが、こういう周辺の地味な作業も大事だよなー、と思った次第。

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あるいはこういう案内も。翌朝10時ごろまで運休だったので、代行バスが用意されていて、その案内に立つ人。寒い中、ほんとうにご苦労様です。
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ほんとうは始発が走り始める時間。代行バスが動き出した。

こういう派手じゃない部分にぐっとくるようになって、ぼくも大人になったよな、と思った。


観光地のそばに住んでる人ってこんな感じなのかな

いつも遠くまで見に行っていたような工事が、家のすぐ近くで行われる、というのがなんか新鮮だった。またやるといいのに、と思った。

観光地のそばに住んでる人ってこんな感じなのかな、と思って、よく考えたらうちは川崎大師のそばなのだった。じゅうぶん観光地だった。

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2週間以上経ったいまでも、ちょくちょく写真撮ってる人がいます。

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DPZでも何回か記事にしている、こちらもぼくの特殊な趣味。ジャンクション鑑賞。12年ぶりに写真集になりました! 詳しくは→こちら

自分でいうのもなんですが、いい出来映えです。みなさん、ぜひ。

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鉄道の地下化も「立体交差」なんですよねー。
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