特集 2024年1月23日

無印良品はカレーの店だしIKEAはジッパーバッグの店だという、店との関係性の築き方

ご存じのとおり、無印良品はひとの暮らしにかかわるものを網羅的に商う。

家を売り出したときは驚いた。あの「無印良品の家」の販売開始から早20年だそうだ。さすがにもう何をリリースしても驚かないぞという気概も消費者には醸成されている。

しかしどうだろう、それだけたくさんの商品を扱いながら、なんだか私は無印良品のことを「カレーとバウムクーヘンの店」としてとらえているところがあり、SNSなどでもそういうわざと雑に見る"じゃれかた"をする投稿を多く見かける。

同じような感覚はIKEAにもあり、あれは「ジッパーバックとぬいぐるみの店」だ。

〇〇ばっか売って、こんなん〇〇屋じゃん、という、店との関係性の築き方が、ある。

東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。Web制作をしたり小さなバーで主に生ビールを出したりしていたが、流れ流れてデイリーポータルZの編集部員に。趣味はEDMとFX。(動画インタビュー)

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> 個人サイト まばたきをする体 Twitter @eatmorecakes

ずっとずっと、カレーに本気

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めちゃくちゃでっかく「無印良品」と書いてあることでおなじみ、無印良品 渋谷西武へやってきた

無印良品のカレーラインナップの幅のすごみについてはご存じの方のほうが多かろう。

まだグリーンカレーがタイ料理店でしか食べられない珍しいものであった2000年ごろから、無印良品にはグリーンカレーと、イエローカレーと、レッドカレーのレトルトが並んだ。

そして「あのときのすごさ」を、無印良品は今なおすごい勢いで更新し続けている。

ずっとずっと、カレーに本気なのだ。

渋谷の店舗に行ってみると、バターチキンカレーが5段にも渡って大展開されている。初代バターチキンカレーが復刻され、強く推し出しているらしい。

そのほか近ごろSNSで話題になった北インドカレーのセットも山積み。その先にはカレー全種ではなくスープカレーだけの人気ランキングが掲示されている。

聞いたところ、各店舗によって取り揃え方は違うものの、現状57のレトルトカレーがラインナップされているとのこと。毎日食べて1か月以上違う味が食べられる。

意味は分かるが意味不明と言って差し支えない状況ではないか。

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それは何ですかというカレーがある 

前述したスープカレーの充実にも驚かされたが、あちこちの国の郷土のカレーに果敢に取り組んでいることも、店頭のさまから伝わる。

はしから名前を見て行くと、分かるものもあるが既視感があまりにもないものも多い。 

プラウンモイリー(海老のココナッツカレー)
ベイガンティルマサラ(なすとごまのカレー)
アルマタール(じゃがいもとグリーンピースのカレー)

まるで自分とは遠い名前がカタカナで表記されており、感想としては「勉強になる」という感じだ。

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未知ベースで、ゴザンブ(ココナッツと根菜のカレー)、ゲーンパー(森のカレー)を買ってきた。森のカレー……?
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こちらがゴザンブ。南インドのベジカレーを手本に作っており、具はレンコンと里芋。ココナッツミルクテイストで、タマリンドの酸味がある。まったりとしながら、まさか酸っぱい
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ゲーンパーはタイの東北地方のカレーだそう。ぶなしめじ、たけのこ、きくらげ、ヤングコーン等、具の方向性が、森。唐辛子のしっかりした辛さでテクスチャはさらさら。これも知らない味!

いっぽうで

ビーフカレー
牛ばら肉の大盛りカレー

と、なにも考えなくても脳が理解する安心できる名前もならぶ。

もはやカレーの店以上にカレーの店だ。

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カレーに加え、不揃いなバウムクーヘンが名物

カレーを名物としてたずさえる店が、デザートとしてバウムクーヘンを当てたら無敵ではないか……。

それが無印良品だ。

渋谷の店舗ではバウムクーヘンも元気いっぱい商われていた。ラインナップは現在36種。

よくぞ! という展開数だ。人はもっとぼんやり生きていいと思うのだけど、バウムクーヘンに本気を出すとここまで頑張れる。36種って、頑張りの上限いっぱいではないか。

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さつまいも味を買ってきました
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写真が朝の光で青くなりましたが、さつまいもフレーバーらしいさつまいもフレーバーの味

無印良品のバウムクーヘンがカルチャーとして良いのは、バウムクーヘンそのものの魅力に「不揃い」という概念をかけ合わせてヒットさせたところだ。

きれいに作ったのではない、不揃いだけれど味はおいしいのです、という、その態度に人気が出る。痛快だ。

不揃いのさまについてはライター大北くんがガチボコに調べているのでどうかご覧ください。

たまんねえなあと思うのは、不揃いバウムが不揃いでヒットしすぎた影響で、他のお菓子もこのバウムクーヘンの形にして売らざるを得なくなっているところだ。

ワッフル、パウンドケーキ、スコーンなどが棒状で不揃いバウムと同じサイズの袋に入って売られている。

不揃いからもう逃れられない、無印良品の負った業である。

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スコーンも不揃い仕様にされた
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ほろほろした、ちゃんとしたスコーンだ

以上から、無印良品はレトルトカレーと不揃いバウムクーヘンの店として私は認識する。

ちなみにひごろ愛用する無印良品の商品といえば「肩の負担を軽くする 撥水リュックサック」であり、これも一大ヒット商品だ。

「無印良品はレトルトカレーと不揃いバウムクーヘンの店」と頭の中で展開させておいて、その後ろに各々の愛用品を付加し、

「無印良品はカレーとバウムクーヘンとリュックサックの店」

などとするといっそう可笑しみも増すと思います。

⏩ ジッパーバッグの店としてのIKEAの自覚

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