不揃いさって測れるのか?
気候変動対策に社会の分断、私達はたくさんの問題を抱えているがとりあえずできることからやっていこう。今日は無印良品の不揃いバウムの不揃いさを測る。
だけど不揃いさって測れるのだろうか? そんな単位は聞いたことがない。
検索をする。あった。データのばらつき具合を「標準偏差」というらしい。偏差値の「偏差」か。どうやら統計(学)と呼ばれる領域に足を突っ込み始めている。
こうしたデータをとるにおいて30個データがあればまあ良いんじゃない? というのが定説※としてあるようだ。
※「サンプルサイズ30とすることで、上下限比1.66に95%の確率で収まる」=「同じ測定を100回行えば、95回程度の頻度(割合)で『一番下のデータを100%としたとき~166%までの間に収まる』測定結果が得られる」という言説をもとにしている
そして不揃いバウムを30個買いに行くことになる。統計学だったはずがやってることはバカの買い物である。
不揃いながら種類も数もめちゃくちゃある
不揃いバウムといえばバナナ味をコンビニで買い、おいしいし意外と食べごたえもあるな~♪となるものという認識だったが、無印に行くとめちゃめちゃある。
30個買うには何店か回るのかと思ったら1店で事足りた。種類も多い。その数20種近く。千本とかの不揃いバウムが棚にある。
これが田舎の殿様なら「祟りにあった先代がバウムに狂った」と言われてもおかしくないほどの狂気の充実っぷりである。
これだけあるのに一種類しか買えない
狂ったとか言っておいて申し訳ないが、これから毎日バウムを食べることになると思うとこの充実のラインナップは頼もしい。無印様、様である。
一種類ずつかごに入れていくと疑問がわく。アイシングがけは同じ形に入るのだろうか? 待てよ、味によって形はちがうのだろうか?
裏面を見てみるとバナナ味だけカロリー数が高い。よく見ると重量の表記がバナナ味は110gであり、他は80,86,85,81,90,89,81,93,98,78……全然ちがう。
これは種類を変えるとそもそも不揃いになって、「不揃いさ」を調べることができない。1種類を30個買うのか。より頭が悪そうになった。
どれか一種となるとこの後の30日間を考えると保守的になってしまい、バナナバウム地獄に突入するのであった。
一個457kcal。コンビニおにぎりでいうと2.5~3個分ある。のたれ死にそうになったらコンビニではおにぎりよりバナナバウムを買ったほうがいいが、30個となると体重に変化を及ぼしそうだ。
全然揃っているがなにを測るんだ?
「無印が不揃いを理由に安くしてくれるのであれば、そんなこと気にしない私達は得をする」そもそもそんな構図があって不揃いバウムはよく売れている、と私は考えている。
なぜ私達が不揃いバウムの不揃いさを気にしないのか。それは今まで言語化されて来なかったがそもそも「全然揃っている」ということではないか。
こうやって見るとたしかに一辺は直線でない気もする。しかし概ね同じサイズだし、形状もだいたい同じではないか。
少なくとも売り場で八百屋さんみたいに不揃いバウムを選んでる人を見たことがない。ここからは「無印、良く言って謙遜しすぎ説、悪く言うと不揃い詐欺説」に突入する。
不揃いバウムとはなにか
一体どう不揃いなのか。
「焼きムラや凸凹、変形など、おいしさに関係なくはじかれていたものも活かしました。食べきりやすいサイズです。」と無印側の説明としてパッケージにある。
この文言から想像される不揃いバウムとはこうではないか。
測るといえば重さだろう。ためしに重さを量ってみる。
もしかしてけっこう不揃いなのか?
最初に選んだ2つの重さを量ってみると111gと93.9g。けっこう違うぞ。このスケールは名もなき外国メーカー製なので絶対値は信用ならんところがあるが、差があるのは確かである。
とりあえず重さは測ろう。色は測りにくいので無視だ。あとは形か。
形を見るなら一体どこを測ればいいんだろうか。構造は一緒なので長さや角度だろうか。角度は0.1°単位で分度器を読み取る自信がない。長さだけ見れば十分じゃないか。
側面は台形である。形がいびつなら上辺と下辺の差とかの数字に出そうだ。全体の長さと、横幅を2種、あとは厚みでもありそうな部分を測ろう。
不揃いバウムはどれくらい不揃いなのか
お待ちかねのデータ分析の時間である。カニをいっぺんにむいておいて、ここから一気に口に流し込むのだ。
標準偏差とはなんだ?
さあ、30個のデータからこれがどれくらい不揃いなのかを見るためにばらつきの度合いである標準偏差を求める。
ただし「標準偏差は10です!」と言われても何の実感もわかない。「人間より不揃いです!」としたり、なにかと比べないといけないのではないか。比べるにはどうしたらいいのか?
生成AIであるchatGPTに聞くと相対標準偏差という数値を出して比べるそうだ。検索すると一般的に「変動係数」と言われているもののことだった。これを出そう。
不揃いバウムの変動係数と人間の変動係数を比べてどれくらい不揃いかを見極めるのだ。
データをそのままAIに入力し、まずは標準偏差を出してもらった。
生成AIですぐ答えが…出ない
出てきた答えの桁があやしい。追求すると「おっしゃる通り、標準偏差を計算する際に平方根を取り忘れておりました。お詫び申し上げます。」と。謝ったぞ。
生成AIは計算が苦手だと聞いてはいたが「忘れてた」ありなのか。
よく見ると30項目の足し算から間違っている。こんな小学校の先生みたいな気分にさせられるものなのか、AI。
不揃いバウムの重量の変動係数は6.45。ごらんください。劇的!ビフォアアフターなら匠の手でリフォームされた瞬間がこれです。苦労や費用を考えるとじわっと出てくる涙をこらえて。続いて長さや他の数字も出したものがこちら。
人間の身長体重の方が不揃いである
データを見ていこう。
不揃いバウムの重さのばらつき具合(変動係数)は6.45
人間の体重のばらつき具合は18.57
→人間の体重の方が不揃い
大型犬の体重のばらつき具合は37.84
→大型犬の方がより不揃い
不揃いバウムの長さのばらつき具合は1.61
人間の身長のばらつき具合は3.21
→人間の身長の方が不揃い
大型犬の体長のばらつき具合は15.50
→大型犬の方がより不揃い
よって不揃いバウムよりも人間の方が不揃いであることがわかるし、大型犬のほうがもっともっと不揃いであることがわかった。
ただ不揃いバウムの側面部分の台形を顔として考えると、人間の顔の幅の方が揃っていることもわかる。私達の顔幅は不揃いバウムより揃っている。誇っていいのかどうかもわからない。
また、不揃いバウムの不揃いさは人間の一日あたりの野菜の摂取量62.5や資産総額150.1に対しても全然不揃いではない。よく考えたらそりゃそうだ。ユニクロの社長みたいな不揃いバウムは見たことない。
結論、計測結果からしても不揃いバウムは不揃いとは言えないのではないか。少なくとも大型犬よりは。
じゃあなにが不揃いなの?
結局なにが不揃いだったのか、というのを検索する。かつて公式HPで説明されていた(※現在は製造映像)らしき記述が見つかった。
それによるとバウムクーヘンをカットする位置をぎりぎりまで攻めて食品ロスを減らしたことに起因するという。
大型犬の前で「不揃い」と名乗ってほしくない
不揃いバウムはやはりそれほど不揃いでもない(ただし、重さについては思ったよりも変動するので注意だ)。私達のほうが断然不揃いだった。
多様性が叫ばれる今、不揃いバウムのバラエティ性は喜ばしいことだが、もっと個体の不揃いさも高めていっていいのではないか。それこそさつまいもの一個売りのように、買う時に目が血走るほどに、個体差を出して不揃いでいっていいのではないか。
大型犬を見よ。セントバーナードもいればゴールデンレトリバーもいる。あんなにも不揃いだ。無印良品にはもっと大型犬と正面から向き合ってほしい。
目の前には大量の不揃いバウム。私は何がしたかったのだろうか。