特集 2024年10月24日

感動しないモザイクアートを作りたい

成功

駅で、モザイクアートを使った広告をたまに見る。遠くから見ると人の顔だが、近寄って見ると小さなたくさんの写真からできているというものだ。

広告以外では、結婚式や卒業式で使われているイメージがある。全体では新郎新婦の写真だが、よく見ると2人の思い出の写真が集まってできている、という感じ。小さな日常の積み重ねが大きな結果に繋がっていることを表現しているのだ。感動する。

僕もやりたいなと思ったが、あれは大きな節目に作るのが相応しいのだろう。今の僕には節目などない。でもやりたい。

だから感動しないモザイクアートを作ろう。

1987年東京出身。会社員。ハンバーグやカレーやチキンライスなどが好物なので、舌が子供すぎやしないかと心配になるときがある。だがコーヒーはブラックでも飲める。動画インタビュー

前の記事:絞り袋から直接モンブランを食べたい


失敗した写真でご当地カレーを作る

そもそもこんな軽い思いつきでモザイクアートが作れるのか、確認しておかなければいけない。

調べるとモザイクアートを作ってくれるアプリがいくつか見つかった。今回はブーケというアプリを使ってみる。作り方は簡単だった。

  • まず全体の写真を決める
  • 次にピースとなる写真を決める

なんとこれだけでいい。あとはアプリがピースの写真をうまく当てがってくれる。ピースの数や、写真の色味の相性でモザイクアートの精度が変わってきそうだ。

とりあえずやってみよう。

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感動しないモザイクアートにしたいので、全体の写真はこれにした

以前、おみやげでもらったご当地カレーの箱。おいしかったが、モザイクアートにするものではない。

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そしてピースにするのは、今までの失敗した写真

ブレた写真や暗すぎた写真。

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指が入った写真
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シャッターを間違えて押した写真
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天井

ご当地カレーとは関係のない失敗した写真。105枚探して集めた。アプリで読み込んで作ってもらったモザイクアートがこちらである。

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ご当地カレーができた!

すごい、ちゃんと「シャインカレー」と読めるぞ。

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箱の左上。ペンギンやキリンを撮ろうとして失敗しているな
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箱中央、ご飯の部分。イルカショーで失敗した写真がたくさんある
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感動してしまう

100枚じゃ少ないかな、と思ったが細かく分割して同じ写真をたくさん使ってもらう設定によってそれらしくなった。

そして肝心の感動するかどうかだが、あろうことかほんの少し感動してしまった。

「今までの写真」というのがいけない。こんなところ行ったな、この時は失敗して慌てたな、とか思い出してしまうのだ。その思い出1つ1つが組み合わさって大きなものを作っている。作っているものがご当地カレーでも愛おしいのだ。いや、むしろちょっと変なものを作っている方が愛嬌があってグッとくるかもしれない。あ、ダメだな。どんどん感動してきた。泣きそうだ。

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ありがとう…

モザイクアートの、時間の経過を圧縮する特性を甘く見ていた。昔の写真を使うのはダメだ。当日だ、当日撮った写真だけにしよう。

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感動しない散歩

翌日、植物園に行ってみることにした。写真がたくさん撮れるし色のバリエーションがありそう。

撮った写真で感動しないモザイクアートを作ろう。目標はさっきの倍の200枚。ちょっとでも気になったら写真に残す。そして感動をしない。思い出してグッときそうな散歩にしない。

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行く途中にあった立ち食いそば屋さん。こういう写真が全部モザイクアートの材料になる
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かき揚げそば
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座りやすそうな岩

ノルマがあると写真を撮るハードルが下がって楽しい。感情の起伏がなくていい、というのも安心する。

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着いた
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いいところだな
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花が咲いていないので色の種類がないけど、歩いていて楽しい
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木で像が隠れる感じも良い
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外にテッポウユリ咲いていた

ここまでで50枚ちょっと。枚数が足りないので散歩を続ける。

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カレー売ってる自販機
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顔が怖い遊具
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河原の土手の下から見たマンション。CGみたいだった
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堀切菖蒲園という別の植物園に行ってみたり、
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駐車場で石を眺めたりもした

歩き続けて2時間半ぐらい。202枚の写真が撮れた。お、というものがあって気持ちが動いたりもしたが、散歩の範疇である。ちゃんと感動はしなかった。

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モザイクアートを作ろう

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帰ってきた。たくさん歩いて疲れた

この写真でやってみよう。アプリを起動してさっき撮った202枚の写真を選ぶ。

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お、できているな…!!
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目のところ。石や草花が見える。土手から見たマンションもある
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服のところ。草と、帰りに買ったタマネギがある

これは皆さんも同じ気持ちかと思う。全く感動しない。

全体の写真が自分の疲れた真顔、というのが効いている。モザイクアートに真顔の人はいない。そして部品の写真全部がさっきの散歩だ。サムネイルを眺めるのと同じ気持ちなのだ。

022.jpg
写真のサムネイル

そのサムネイルが、僕の真顔になっている。なぜ真顔なんだ。こっち見るなよ、と思う。見事に感動する要素がない。成功だ!

これは良い趣味だ。たくさん写真を撮る理由ができるし、できあがる瞬間はおもしろい。感動しなくていいのでハードルが低い。


地球はほんのちょっと感動する

散歩の写真を再び使って、地球の画像を作ってみた。

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「なんてことない散歩の時間も、全てこの地球の上で起こっているのですよ」というメッセージを勝手に感じてほんの少し感動してしまった。

やっぱり自分の真顔がいい。

ささやかなおまけ
記事に使わなかった写真

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