ちょっと聞いてよ 2023年9月3日

クリームチーズにはちみつをかけるとひびが入るのはなぜか

クリームチーズは、パンにぬって、はちみつをかけて食べるのがいちばん好きだ。

しめしめとふくんで口内全体にうまみをゆきわたらせて味わう、すると美味さから生全体が肯定されるほどいい気分になる。

ただ、そんな私のよっしゃの時間に、いつもひとつだけ、ちょっと気になることが起こるのだった。

はちみつをかけたクリームチーズが、ひび割れるのだ。

東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。Web制作をしたり小さなバーで主に生ビールを出したりしていたが、流れ流れてデイリーポータルZの編集部員に。趣味はEDMとFX。(動画インタビュー)

前の記事:ジャガイモでジャガイモを漬ける(デジタルリマスター)

> 個人サイト まばたきをする体 Twitter @eatmorecakes

クリームチーズがひびわれるとはどういうことか

あらためて、どういうことか写真でご覧いただこう。

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クリームチーズをパンにぬる
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上からはちみつをぬる
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クリームチーズにひび割れが入る!

クリームチーズひびわれ界隈の有名ページ

同じように「はて?」と思うひとはいるようで、検索するとYahoo!知恵袋の2015年の質問と回答がヒットする。

わたしと同じように疑問を感じた人のうち多くの人がこのページを開いているんじゃないか。界隈の有名ページといっていい。

これによると、クリームチーズにはちみつをかけたときにひび割れるのは浸透圧の差であるという。

はちみつは糖濃度が高く、チーズから水分を奪う、それによってひびが入るというのだ。

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浸透圧……!?

濃度の高いものが低い物から水分を奪うことについては、野菜を炒めているときに塩を振ることで一気に野菜から水分が出る体験から、体感として有る。

それと同じ……と考えていいんだろうか。

こういうときに相談できる理科の先生がいることは心強いことで、当サイト、デイリーポータルZにとってそれはライターであり現役の教諭である加藤まさゆきさんだ。

濃度の話だけど、圧で語るからややこしい

加藤さんにあらためて、クリームチーズにはちみつをかけるとひびが入るのは、野菜を炒めるときに塩をふると水分が出るのと同じですか? で、それこそが浸透圧、ということなんでしょうか、と、無知ゆえの雑さで聞いてみた。

いただいた答えがこちらだ(加藤さんありがとうございます!)。

浸透圧は、おっしゃる通り「その水溶液が、水を奪い取る力」=「その水溶液の濃度」ということです。

その奪い取る力を真水と比較して、奪い取られた後の生じる液面の高さの水圧の違いで定義するため、濃度の話なのに「浸透圧」とややこしい用語が使われてしまっているのですが、要は溶液の濃度のことです。

キャベツを炒めると加熱してしまっているので、塩揉みにするときの方がイメージが近いです。

漬物で最も浸透圧の定義を体現しているのは、「卵黄の味噌漬け」です。あの水分の奪われ方が浸透圧差そのものって感じです。

この深いなるほどよ。

卵黄の味噌漬けというむちゃくちゃ分かりやすい例がすっと出てくるのがさすがすぎる。

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ちなみに、クリームチーズのブロックにはちみつをかけても
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ひびは入らないのだけど……
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浸透圧の話を聞いて、チーズから吸い出した水分ではちみつがさらさらになることに気づいた!

はちみつ固有の現象ではないか調べる

さらに加藤さんからは「ハチミツとクリームチーズはどういうことなのか、わかりかねるところもありますが、濃い砂糖水や水飴、シロップなどにつけてもヒビができるのか気になるところですね!」と助言をいただいた。

なんと先生らしい助け舟だろう。私は奮えましたよ。

理科的に固すぎる私の頭では、クリームチーズ×はちみつの組み合わせを解体する発想がまったくわいてこなかった。

ここをバラす、クリームチーズに合わせる材料をはちみつではないものにすることで、ひびわれがはちみつ固有の働きなのか、浸透圧によるものなのかの真相を目撃できるというわけだ。

前述の知恵袋の賢明な回答者さん(あらためて、文章の質問だけで浸透圧ではとひらめくこのお方は本当にすごい)に盾つくつもりはないのだけど、実感して納得するためにもやってみよう。

いったん広告です

ジャムでも塩でもひびわれた!!!!

最初に試したのは黒みつ。

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家にあったからという単純な理由から呼び出された黒みつ
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かけたとたん、ひび割れはじめた……! やっぱり、はちみつだけじゃないんだ!

もう何年も、はちみつだけで見てきた現象が、簡単に別の食材で再現できてしまった。おおおお……。

ちなみに味は黒糖のミネラル分とチーズがあまり合わなかったことをお知らせします。

合う食材からいくと、ジャムはどうだろう。はちみつ同様、クリームチーズの上からジャムを塗って食べることはこれまでもあったが、ひびには気づかなかった。

……のだけど……ばっちりひびが入った!

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いやいや、がっつりひび、入ったわ!

これまではジャムの色味でチーズのひびわれに気づいていなかっただけのようだ。

ここで、塩もためしてみた。黄身の味噌漬けのように塩分もクリームチーズから水分をひっぱりだせるのか。

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いただきものの良いお塩を使いました
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ひび、入った……!

はちみつやジャムほどたっぷりかけられない分(しょっぱくなっちゃうと食べられないからね)難しいかと思ったが、しばらく待っているとじわじわとひび割れてきた。

クリームチーズがひび割れるのはやはり浸透圧が原因ということで間違いなさそうだ……!

ついでに パン×クリームチーズ×塩=ピザ味 と知る

知恵袋で得た知識に、これで実感の肉付けが得られた。

今や私は既知という大草原にしっかりとたち、そよぐ風をなびく草花とともに受けて日差しをまぶしがるような、さわやかな気分でいる。

そしてもうひとつ、行きがかり上、むちゃくちゃ大変な事実をつかんでしまった。

最後に試した、パンにクリームチーズを塗って塩を振ったもの、これが完全にピザの味だったのだ。

冷製クアトロフォルマッジ(4種のチーズだけがとろけてるピザ、ありますよね、あれです)のおもむきである。

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クアトロフォルマッジ、こういうやつ(こちらの記事より)
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そしてこちらが、まさかの冷製クアトロフォルマッジ

実際は1種のチーズなわけだけど、一般的なチーズパンよりもずっと、ピザ屋の趣がある。上からフレッシュに強い塩気を足したからだろうか。

そういえば、クアトロフォルマッジといえば、上からはちみつをかける食べ方もある。

最後にまた、はちみつに戻ってきた。

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