延岡市で食べる
宮崎県北部に位置する「延岡市」。もう少し北に行けば大分県に入る。旭化成の発祥の地でもあり、今も旭化成の工場が点在している。天孫ニニギノミコトの終焉地でもある。西南の役の和田越決戦場も延岡だ。
私は九州で生まれ育ったので当然延岡のことも知っていた。ただ久しく延岡を訪れていなかった。今回ここに来たのはチキン南蛮を食べるためだ。誰もが知る料理だ。日本全国、スーパーに行けばお惣菜コーナーでも売っているし、お弁当屋にもチキン南蛮弁当はある。
チキン南蛮が好きだ。お弁当にチキン南蛮があると必ず選んでいる気がする。そんなチキン南蛮が生まれたのが延岡なのだ。昭和30年代に延岡に「ロンドン」という洋食屋があり、その賄い料理がチキン南蛮のルーツだ。
この賄い料理にはタルタルソースはかかっていなかった。鶏の唐揚げの甘酢漬けという感じだ。昭和40年頃に「ロンドン」で修行していた後藤直さんがその賄い料理をベースに作り出したのがチキン南蛮である。今も延岡市にある「直ちゃん」で食べることができる。
直ちゃんのチキン南蛮
直ちゃんの開店時間に合わせてやってきたのだけれど、すでに行列ができていた。誰もがチキン南蛮が好きなのだ。私は今までにチキン南蛮を食べるために行列に並んだことはなかった。しかし、延岡市では異なる。並ぶのだ。
30分ほど並んで店内に入りチキン南蛮を注文した。我々がチキン南蛮と言われて思い浮かべるものとは少し異なるように思える。まずタルタルソースがかかっていない。私はこのタイプのチキン南蛮を佐賀のお弁当で食べたことがある。チキン南蛮の一つとしてあるのだ。
直ちゃんの特徴はパン粉を使っている点だ。これがポイントのように思える。チキン南蛮は甘酢が効いている。その甘酢を存分に吸収するのにパン粉は有効なのだ。タルタルソースがない分、甘酢の味を十分に感じることができる。
さっぱりいただける、と言えばいいだろうか。揚げ物ではあるが、甘酢のおかげで何枚でも食べられる気がする。つまり美味しいのだ。オリジナルの甘酢がとてもいい。これは行列をなす理由がわかる。並んでも食べたい一品だ。さすが発祥の地。