まだあるのかよ、千葉のご当地グルメ
豆造。まったくなんなのかさっぱり予想もつかないガチの郷土料理でしたが、実際食べてみるとなかなかうまい。
千葉は、東京に近すぎるためなのかなんなのかわかりませんが、都内にアンテナショップが無いので、豆造を食べたいときは、いちいち市原市まで出向く必要があります。
せめて東京で気軽に買えるようになってほしいところです。
日本中のあらゆる物がケンミンショーで取り上げられ、なにかについて書くとすぐに「ケンミンショーでやってたやつだ」となる世界になってしまった21世紀。
なんと千葉の市原に、いまだにケンミンショーで取り上げられていない(と思われる)御当地グルメがありました。
「豆造(とうぞ)」です。
千葉県内にいくつか「房の駅」という道の駅みたいな店があるのですが、1年ぐらい前、そこで「御豆造」というものを売っているのを見つけました。
茶色い液体が詰まった袋です。タプタプしていて、かなり水っぽい見た目です。
全く味の想像が付きませんが「陸の塩辛」のキャッチフレーズが目を引きます。塩辛と名乗るほどなので、多分塩辛いのだと思われます。
まったく見たことも聞いたこともない食べ物が、さも「みなさんご存知」みたいな感じで売られていると、めちゃくちゃワクワクしてきます。この御豆造ですが、どうやら御豆造は商品名で、一般には豆造(とうぞ)と呼ばれている食べ物のようです。
こういう場合、ネットで検索したり、AIに聞いたりすれば何でも答えがわかるんでしょうが、せっかくなので家にある『聞き書き千葉の食事』(農文協)を調べてみます。
とうぞ
味噌を作るときに大豆の煮汁がたくさんできる。この煮汁を利用して「とうぞ」を作る。とうぞは豆の煮汁にこうじや大根の切り干し、納豆などを入れて塩をきかせて仕込んだ独特の食べ物で、長生郡西村(現・長南町)の土橋家をはじめ南総丘陵一帯の家々に昔から伝わっている。麦飯にかけて食べるが、一度味をしめるとなかなかうまくてあとをひくところがある。(後略)
『聞き書き千葉の食事』(農文協)
昔、味噌は各家庭で自家製で作るのが普通だったわけですが、その時に出る豆の煮汁。これを利用した自家製味噌の副産物のような位置づけのもののようです。
「麦飯にかけてたべる」「あとをひくところがある」など、かなり興味をそそることが書いてあるけれど、やっぱり味の想像はつきません。
購入したものを食べてみます。
香りは、煮大豆と納豆の独特なにおいがします。ふだん納豆を食べ慣れている人間にとっては「いい香り」です。
ひとくちだけ、そのままたべてみます。
強烈な豆の風味と、なかなかしっかりとした塩味があります。出汁っぽい旨みはないのですが、めちゃくちゃ大豆の風味がします。液体納豆⋯⋯そんな言葉が脳裏をよぎります。
なにはともあれ、ご飯にかけて食べてみます。
みなさんの言いたいこと、よくわかります。でも、思い出してみてください。カレー、コロッケ、唐揚げ、焼きそば、ソーセージ⋯⋯うまい食い物はみんな茶色いんです。そう考えると、むしろ美味そうですらあります。
ご飯と一緒に食べてみます。
強烈な豆の味と風味、そしてじんわりとした塩味が伝わってきます。さっぱりした水納豆(水納豆とは?)をご飯にかけて食べている。そんな感じがします。うまさがじんわりと伝わる。「野趣あふれる」というのはこういうときに使うんでしょうか。
ただ、最近の甘いとか辛いとか酸っぱいとかいうインパクトの強い味付けに比べると、地味な味わいであることは否めません。
海苔の佃煮レベルの粘度を期待すると、全然水っぽいので拍子抜けしてしまうかもしれません。海苔の佃煮ではなく、汁かけ飯に近い感じということを覚悟の上で食べれば、がっかりしなくてもいいかもしれません。
さて、豆造ですが、ごはんにかけて食べるのもいいんですが、それ以外にも色々食べ方があるかもしれません。
塩味が強めなので、冷奴に醤油代わりにかけて食べてみます。
大豆からできたものに大豆からできたものをかけて食べるという状況ですが、これがなかなかおいしい。
冷奴は、醤油だけで食べると最後はちょっと味気ない感じになったりしますが、豆造だと最後までおいしく食べられます。
今度は豆造にお湯を加えて、スープとして飲むという飲み方です。
これは、追加するお湯の量にもよりますが、あまりお湯で薄めすぎると大豆の煮汁を冷ましたものをそのまま飲んでいるような感じになるので、加減がちょっと難しいかもしれません。
今回は、アオサ、ネギなどを入れてすこし濃いめのスープにして飲んでみました。納豆汁の味噌の入ってないバージョンといった感じです。味噌汁飽きたなというときに、豆造のスープというのは、全然アリでしょう。
豆腐にかけるのもアリならば、ほうれん草のおひたしにかけて食べるのもアリなのでは?
ということでやってみます。
これも、よかったです。
醤油ほど旨みが強くないので、かなり柔らかい味ですが、豆の風味がほうれん草の風味を引き立てています。
調味料的なものだと考えれば、いろんなものにあえて食べる食べ方は、そんなにハズレがないかもしれません。
すっかり、豆造の魅力を知ってしまったので、この「御豆造」の製造元まで、買いに行ってみました。
小湊鉄道、馬立駅から歩いて20分ほど。市原市南岩崎にある「赤石味噌麹店」にやってきました。
工場横の直売所に入ってみます。
お店の方に、豆造について、話を聞いてみました。
西村:豆造は、道の駅で見かけて初めて知ったんですが、これは千葉の人はみんな知ってるんですか?
店の方:豆造を知っているのは、千葉でも市原や茂原あたりから南の人だけじゃないですかね。
西村:道の駅以外で販売されてますか?
店の方:「SENDO」(市原市のスーパー)とか、道の駅がメインですね。他のスーパーにはなかなかないと思います。
西村:豆造を製造販売されておられるのは御社だけですかね?
店の方:おそらくそうだと思います。地域の自治会みたいなところが、自家製で作ったものをバザーなどで販売されているのはあるかもしれませんが。
やはり、店で気軽に買える豆造は、こちらのメーカーのものしか無いようです。
最初にも述べた通り、かつて各家庭で味噌を作っていた頃は豆造も合わせて作って食べていたそうですが、味噌を家で作らなくなってくると豆造をわざわざ作る家庭もなくなり、一時は消えかけた食文化だったようです。
しかし、しばらく前に流行った塩麹ブームの余波で「糀を使った食品」ということで見直され、市原や茂原のグルメとして認知されるようになってきたといいます。
店の人によると、豆造は本来、味噌づくりの季節である冬場がシーズンだそうです。そのため、夏の2か月間は製造をお休みするそうですが、こちらの御豆造はボイルしてしばらく保存できるようになっているので、1年を通して販売されています。
豆造を買いに来る人には、食欲のない夏場こそ、ご飯にかけてさらっと食べられる豆造がいい。という人もいるそうです。
大豆の旨みや栄養がたっぷり入った煮汁を食べるので、確かに、夏場にこそ食べるというのもありかもしれません。
豆造。まったくなんなのかさっぱり予想もつかないガチの郷土料理でしたが、実際食べてみるとなかなかうまい。
千葉は、東京に近すぎるためなのかなんなのかわかりませんが、都内にアンテナショップが無いので、豆造を食べたいときは、いちいち市原市まで出向く必要があります。
せめて東京で気軽に買えるようになってほしいところです。
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