山谷剛史さんが教えてくれた店
山谷剛史さんがイベントの中で紹介していた中で印象に残ったのが、大阪府堺市にある「セリアハウス」というお店だった。ブラジル料理の専門店で、個人経営のお店らしいのだが、山谷さんがスライドショーをしていた写真を見るに、家族連れでも入りやすそうな、敷居の高さを感じさせないお店に見えた。
それでいて、メニューにはなかなか日本では食べられないような本格的なブラジル料理が並んでいるらしい。ブラジル料理と言えばシュラスコがまず思い浮かび、あとはほぼわからない私にとっては、味付けからして想像できないものばかりに見えた。
そもそもそんなお店が堺市にあるというのも興味深い。関西圏でいうと、兵庫県神戸市東灘区の深江という街にブラジルをルーツに持つ方が多く住んでいて、ブラジルの食材などを販売しているお店で買い物をしたことがあった。堺市にもブラジルをルーツに持つ方が多く住んでいて、それでその方たち向けのレストランとしてスタートしたお店だったりするのかも。
と、色々なことが気になってきたので、食べに行ってみることにした。情報源である山谷さんにも、お店に行ってみて、できれば取材して記事にしたいことをお伝えし、快く了承していただいた。ありがとうございます。
公共交通機関を使ってセリアハウスへ行くには、南海電車の石津川駅で降りるといいようだ。その駅で降りるのは初めてのことだったが、大阪市内の新今宮駅から電車に乗って15分ほどで到着する距離だった。堺市の南西部で、大阪湾がすぐそこというエリアだ。
駅周辺は静かな雰囲気で、西側に少し歩くと大阪府道208号線の大きな通りがあり、その道路沿いには大型の飲食チェーン店の看板が見えた。交通量も多い。
静かな駅前の方に引き返すと、目的地である「セリアハウス」の建物が見えた。ブラジルの国旗が掲げられていて、外観にもブラジル感が漂っているような気がする(本場のブラジル感を知らない私だが)。
色々あって迷ってしまうメニュー
私がお店を訪ねたのはディナータイムの営業が始まる17時頃だったのだが、それでも明るさを感じる店内で、色鮮やかな鳥の置物が飾られていたりして、内装も凝っている。「今からブラジル料理を食べるぞ!」と楽しい気分になってくるような雰囲気である。
4人掛けのテーブル席に通してもらい、メニュー表を開く。ここからいくつか、メニュー表の写真を見ていただこうと思うのだが、
さっと見ただけでも知らない料理がたくさん並んでいて、各料理の写真もしっかりとあり、それがどんな料理であるかも簡潔に説明されていて、とても親切なのである。「ファミレスみたいだ!」と感じた私の気持ちが伝わるだろうか。ちなみに、もちろんこの店ではシュラスコも提供されているのだが、土日限定の「シュラスコバイキング」として出していて、後で聞いたところによるとそれが大人気だそう。
高鳴る鼓動を鎮めるために、まずは飲み物と前菜的な料理を注文することに。ドリンクメニューも豊富で、アルコール類の中にはメキシコやペルーのビールなどもある。この日は「テカテ」と「クリスタル」が品切れだったので、ペルーの都市・クスコで作られているという「クスケーニャ」というビールをいただくことにした。
ビールと一緒に運ばれてきたのはアフリカ原産の芋である「キャッサバ」を乾燥させて粉末にしたものと、ニンニクの風味がついた醤油。この粉末キャッサバはふりかけのように色々な料理にかけて食べるのだという。
そしてしばらくして、ブラジル風チキンサラダだという「サラダ・デ・フランゴ」と、
“大きな餃子の様な皮に肉やチーズを包んで揚げる国民的スナック料理”と説明のあった「パステル」が運ばれてきた。
ちなみに、パステルの中の具材は「牛肉・チーズ・パウミット・ピザ」から好きなものが選べるようになっており、ヤシの新芽だという「パウミット」を私は選んだ。
揚げたてでまだアツアツのパステルにかぶりついてみる。美味しい!なんだろう、この味。ピロシキっぽくもありつつ、ほのかに酸味を感じるような、未体験の味付けであることは間違いない。
また、サラダ・デ・フランゴにキャッサバ粉末をふりかけて食べてみるとこれがまた美味しくて、料理にすりゴマをかけるのに近い感じで、香ばしさがぐんと増すのである。「なんでも食べますよ!」と取材に同行してくれたライターの橋尾日登美さんも「パステルとビール、めちゃくちゃ合う!」と喜んでいる。
店の奥は食材や雑貨を売る売店になっていた
食事をしていると、入って来た数人のお客さんが客席をスルーして店の奥へ向かっていく。「そっちにも席があるのかな」と思って覗いてみると、店の奥は売店スペースになっていた。
「いやー面白い店だな」と楽しくなってきて、クスケーニャの黒ビールを注文した。
さらに2品、“野菜たっぷりの具沢山ビーフスープ”だという「ソポン・デ・カルネ」と、“北部の魚料理定番白身魚をココナッツミルクのソースで煮込んだ当店自慢の一品です”という「モケカ・デ・ペイシェ」を注文してみる。
「ソポン・デ・カルネ」は、ビーフの旨味がしっかりと出ていて、それでいてあっさりした味わいのスープ。大根や葉物野菜など具材もたくさん入っていて、お肉がほろほろして、ボリュームもたっぷりあってうれしい。
そして、「モケカ・デ・ペイシェ」がすごく美味しかった。ココナッツミルクの味わいがトマトなどから出ていると思われる酸味と絶妙にマッチして、白身魚はフォークの先で簡単に崩れてしまうほろほろ加減。辛さのないトマトカレーというか……とにかく「これはライスがあった方が絶対にいい」と思う味わいである。
メニューの中に、“少しのニンニクと玉ねぎを油で炒めて入れて炊き旨味を引き立てる当店独自のブラジルライス”だという「アホース」があったのでそれを注文。
スプーンで「モケカ・デ・ペイシェ」をすくい、ライスに乗せて食べると、涙が出そうに美味しいのだった。

