名古屋にて 2023年秋
2021年から2023年くらいにかけて、コンビニでもスーパーでもケーキ屋さんでも、どこへ行ってもマリトッツォが売られていた。
パンから真っ白なクリームがこんもりとはみ出したイタリアのお菓子、マリトッツォ。僕も何度か食べてどれも美味しかったのだが、結局いまでも「マリトッツォ」と一発でタイプすることができない。
空前のマリトッツォブームもひと段落した2023年11月、所用で名古屋に行く機会があった。名古屋といえば僕の故郷であり、他では見られない独自の食文化を醸成してきた土地でもある。
中でも名古屋でよく食べられているのはエビとあんこである。
愛知県民の血の色はエビの赤であり、目の色はあんこの黒なのである。
あんトッツォとの遭遇
そんな名古屋駅にはあんぱんやという名前のあんぱん屋さんがある。ストレートすぎる店名は自信の表れだろう。
僕は名古屋駅で新幹線に乗るまでに時間がないときなんかはここであんぱんを買うことが多いのだけれど、そのあんぱんやで今回たまたま見つけてしまったのだ。
あんトッツォである。こしあん。
マリトッツォが流行っていた頃、名古屋ではきっと中にあんこ入れてるだろうなと思っていたのだ。あんトッツォかエビトッツォか、どちらが先かなと。ただ僕が関東にいて見つけられなかっただけなのだろう。
それが今回、たまたま出会ってしまったのだ。
あんトッツォである。
説明するまでもないが、マリトッツォのマリの部分があんになっている。もともとのマリが何を意味するのか知らないし、そこを安易に(あんだけに)あんにしてしまっていいのかもわからないが、そんなの美味しさには無関係ないのだ。あんトッツォ、なにより語呂の座りが最高。
あんトッツォはサクッとしたブリオッシュ生地の間にあんことクリームがトッツォされていた。縦に長すぎるので、大口を開けても一息でかじることはできない。
食べてみて初めて気づいたのだが、あんトッツォにはあんことクリームの間にぎゅうひが挟まっていた。二つ前の写真に戻って見てほしい、真ん中でこんにちは!しているのがぎゅうひである。考えた人に好きですと告白したい。
あんこもクリームもぎゅうひも、言ってしまえば全部甘いのだけれど、それらを包むパン生地がサクッとしていて、さらに上に乗ったゴマが香ばしいので、完全にバランスがとれている。おかげで安心して美味しい。