おもちゃの墓
うちに、壊れた電車が山積みになっている。
ここ数年、小学校で授業をやらせてもらっていて(小学校でヘボコンの授業をする)そこで工作の材料として電車のおもちゃを使っているのだ。
この電車は安いわ入手性が良いわで、動くおもちゃを大量に仕入れたい立場としては非常に重宝している。ありがとう大創産業。
しかし値段相応に壊れやすいのも事実で、特に授業では子供が手荒に扱うこともあって、これがバンバン壊れていく。
そのたびに、回収して家に持ち帰っていた。
故障の原因さえわかれば、修理して再利用できるかもしれない。
いつか中を開けて、調べようと思っていたのだ。
今日、それをやってみようと思う。
不具合ベスト4の発表です
原因を調べる前に、故障の種類を仕分けていく。
あらためて動作確認してみると、不具合は大きく4つに分けられた。
1.カチカチいうパターン
それだけでなく、カチカチと何かを弾くような異音がする
モーターは動いている。この弾くような音は、動力を車輪に伝えるギアがなにか不具合を起こしているのだと思う。これが16台中1台あった。
2.空回りするパターン
動画で見てもらうと、モーターが空回りする「ウィーン」って音がしてるのわかります?
こちらもモーターは動いている。が、その動力が車輪まで全く届いていない感じ。これもギア周りかな?16台中2台あった。
3.全く動かないパターン
うんともすんとも言わない。モーターが動いてないということは、途中で断線しているとか、端子が折れているとか、とにかく電源経路の故障だろうか。16台中、ダントツ最多の12台。
4.金具ズレ
これは現象としては3.と同じ、つまり全く動かないのだけど、調べるまでもなく原因がわかってしまったケース。
調査するまでもなく一瞬で直ってしまった。16台中、1台。
以上4パターンの不具合があった。並べてみるとこうだ。
それぞれ、何が原因でこうなったのか、調べていきたいと思う。
1.カチカチいうパターン
まずはこのパターンから見ていく。とりあえず分解します。
3つのギアが入っていて、構造としてはこんな感じ。
動きが見やすいように透明のシャーシを作った。(裸のまま回すとギアが吹っ飛ぶので)
車輪が回る仕組みはわかった。では、なぜカチカチ音が発生して、動きも断続的に止まってしまうのだろう。
上のアニメーションだとスムーズに動いて見えるけど、実はこの時もカチカチ音がしている。
その原因はすぐ分かった。
ギアに亀裂が入ったことで変形し、噛み合うギアとひっかかり、カチカチと音が鳴ったり、時には詰まって止まったりしていたのだ。
カチカチいうパターンの故障原因
ギアに亀裂が入っている!
この調子で、別のパターンも調べていこう。
2.空回りするパターン
こちらも分解してみると、原因はすぐに分かった。
カチカチの方はギアが亀裂でわずかに変形していたのに比べて、こちらは歯が一つ丸ごと欠けてしまっている。
この状態で動かすと…
同じギア割れでも、その割れ方によって不具合のあらわれ方が異なるのだ。趣深い。趣深いが、おかげでおもちゃが動かなくなるので、要らん趣ではある。
空回りするパターンの故障原因
ギアの歯が欠けている!
3.全く動かないパターン
では、最多数派である、まったくうんともすんとも言わないパターンはどうだろう。そもそもモーターが動いていないので、前の2つとは根本的に違う気がする。
原因特定のためにどんどん要素を減らしていく。
正直、この原因究明にはてこずった。
しかし小一時間いろいろ試した末、いよいよ決定的瞬間が訪れた。
どうも何らかの理由で、モーターの軸が固着してしまっていたみたいだ。
潤滑用のグリスが固まってしまったとか…と想像したが、正確なところはわからない。
しかし、修理方法はわかった。分解して、手で回してやれば動くのだ。
これ開けるのすげえ面倒なんだけどな…!
全く動かないパターンの故障原因
モーターが固まっている!
なんでモーターが固まるの?
さて、すべての故障原因は分かった。
しかし最後に残った疑問がある。全く動かないパターンの原因は「モーターが固まる」であった。
なぜモーターが固まるのだろうか!?!?!
さっき仮説として「グリスが固まってしまったとか…」と書いたが、それはただの憶測である。
その後いろいろ調べたものの、結局、この理由を突き止めることはできなかった。
ただ、それが起きやすいモーターの特性がある、というところまでは迫ることができたのだ。
マブチモーターはそんなふうに固まったことがない。何か違いがあるはずだ。
2つのモーターの軸をそれぞれ手で回してみた。
手回ししたときだけでなく、弱った電池をつないでみたときも、マブチモーターは自力で動き始めるが、電車のモーターは手で回さないと動き始めないという現象が確認できた。
つまり電車のモーターはそもそも動きが重いために、ちょっとしたトラブルですぐに動かなくなってしまうのだろう。
ではなぜ動きが重いのかという点だが…。
パッと見、そんなに変わらないように見える。しかしよく調べると……
この強い磁石に、中のコイルの巻き芯が引き寄せられて、回転しにくくなっていたのだ。
ちなみになぜ100均の方は強い磁石を使用しているかというと、(ここからはまた僕の憶測だけれども)コスト削減の一環ではないかと思う。
よく見てみると、電車のモーターはマブチモーターに比べてコイルの巻き数が少ない。つまり電磁石の磁力が弱い。
モーターは電磁石と磁石がくっついたり離れたりする力で回っているので、電車のモーターは電磁石の磁力が弱いぶん、外側の磁石の磁力を強くして、モーターの回転力を確保しているのではないだろうか。
逆に言うと、100均モーターは永久磁石を強くすることで、コイルの巻き数を減らすことができ、コスト削減につなげている。
ただ、そのぶんモーターの動き始めが重くなり、故障の原因になっている。
これが僕の推理である。
わかったのはここまで
自分は専門知識があるわけではないので、この推理はあくまで憶測でしかない。(コイルの巻き数でそんなにコストの差が出るのか、本当に永久磁石の強さでコイルの磁力をカバーできるのか、など根拠にも憶測が多い)
しかし、ひとまず自分がたどり着けたのはここまでだ。
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