「声聞くときぞ秋は悲しき」どころじゃない
鹿の鳴き声、ものすごし。
キャーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
秋の雄鹿の鳴き声は女性の叫び声に似ているとよく言われるが、分かっていてもつい驚いてしまう。はじめて聞いたときは警察への通報すら考えたくらいである。
今回は深夜未明に家の近所を徘徊して野生動物を探してまわる。山林に入らず、人間が暮らす集落で探すのがキモである。
普段なにげなく歩いている道が夜になると動物のものになっているというのは、世の中のルールがなくなったみたいで夢があるじゃないか。
家のそばでいきなり動物を発見!
そういうわけで動物を探すために午前4時に起きた。何時でもよかったのだが、とりあえず勘で4時にした。
近所迷惑にならないよう静かに玄関のドアを開けると、外は妙に霧がかっていた。頭に取り付けたライトの明かりが霧の粒の一つ一つを照らして視界を遮る。
夜に目を慣らしながら歩いていると、出発から1分もしないうちに田んぼからガサゴソと音がしているのに気がついた。早速である。
急転直下、初っ端からクライマックス。いきなり体長1mほどの猪を見つけた。
豚のようにフゴフゴと鼻を鳴らしながら、根元から押し倒した作物を食べている。
おれは周囲十数メートルに猪が出没する家に住んでいるのか。見たかった景色ではあるし興奮もしたが、ちょっと引いた。
猪はちょっと目を離した隙に遠くまで逃げていて、さいごは傾斜60度以上はある坂を力強く登っていった。
気迫が怖かった。こいつと喧嘩することになっても絶対に勝てないだろう。猪までなら武器があればなんとか勝てるという持論があったが撤回する。
他にも探してみたが猪ほどの大物は見つからず。野良猫がいないのは意外だった。