悪魔の糞
好きでよく行く上野のスパイス屋さんがある。
正直半分以上が知らないスパイスなのだけれど、チャレンジで買って帰って使い方を調べるのが楽しかったりする。
前にお店の人から「それは辛い」とだけ聞いて買った「京の黄真珠」という唐辛子は、きんぴらごぼうに使ったらしばらく目が覚め続けるくらいに辛かった。
そんなスパイスワンダーランド、野澤屋さんで今回見つけたのがこちら
「悪魔の糞」という名前のスパイスである。音感的には伯方の塩と同じだ。正式にはHingというらしい。
名前を見ただけで一目ぼれして買ってしまった。説明によると強烈な臭いを放つ北アフリカ原産のスパイス、とのこと。「匂い」ではなく「臭い」と書いてあるところに夢を感じる。
ちょうどこの日、ライターの月餅さんと與座さんに会う約束があったので買っていって嗅いでもらった。
臭い
悪魔の糞、確かに臭い。
臭いにも種類があると思うのだけれど、糞みたいな臭さではなく、なんというのだろう、形容しづらいが、強いて言えば田舎のおじいちゃんちの納屋みたいなにおいがする。
どこかで嗅いだことがあるような、ちょっと懐かしくもある嫌なにおい。いつか嗅いだ日の記憶を脳のどこかが強烈に覚えていて、結果としておじいちゃんちの納屋を思い出させたのだろうか。
三人とも、どこかで嗅いだことがあるにおいである、という感想だった。理解を深めるためちょっとなめてもらった。
月餅「でも安藤さんこれ、ボトルにnot for direct consumption(直接食べるものではありません)って書いてありますよ」
安藤「do not consumption(食べるものではありません)でなければ大丈夫じゃないですかね」
スパイスとして売られているのだから毒ではないはずである。みんなでちょっとずつなめてみた。
悪魔の糞は玉ねぎが腐ったにおい
與座「すんごい不味いんだけど、やっぱりどこかで知ってる味がする」
月餅「ネギとか玉ねぎが腐った味?」
與座・安藤「そ・れ・だ」
月餅さんがうまいこと言い当ててくれた。そうだ、腐ったネギのにおい、そして腐ったネギの味だ。だからおじいちゃんちの納屋が思い浮かんだのである、納得。なめるとほろ苦く、ひたすらに臭い。味よりもにおいの方にインパクトがある。
これ入れたらおじいちゃんちの納屋みたいなカレーができるんではないのか。とにかく持って帰ってカレーを作ってみることにした。
カバンは洗濯したが今でもたまににおうことがある。まあいい、気を取り直して悪魔の糞をカレーの隠し味にしてみたい。